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Forever Dream

二月二十日、翔太君家族は引っ越し。

なんか、これから会えなくて寂しいけど翔太君家族が決めたことだから、私がどうこう出来るわけじゃないもんね。

「瑠璃花ちゃん、色々とありがとうね」

朝奈さんが笑顔で言うの。

「いえいえ…私だって翔太君に迷惑かけてたから…」

泣きたいのを我慢して言う。

「瑠璃花ちゃん!」

家の中から翔太君が何かを持っていそいそと出てくるの。

「はい、これ」

高級そうな袋を私に渡す。

「開けていいかな?」

「うん、いいよ」

中を開けてみると、ハ―ト型の指輪が入ってたの。

「うわぁ…綺麗…」

思わず声をあげてしまう。

目映いハ―トの指輪は、私の手の中でキラキラ光ってる。

「だろ? 朝奈が選んだんだ。なっ?」

「そうよ。瑠璃花ちゃんに喜んでもらえて、選んだ甲斐があったわ」

朝奈さん、嬉しそうに微笑み。

「どこに引っ越すんですか?」

「埼玉なんだ」

「すごく遠い…ですね…」

引っ越し先にチクンと胸が痛んだ。

埼玉か…。すぐに会える距離ではないよね…。

「私、荷物運んでくるね」

朝奈さんが私に気を利かせて、翔太君と二人きりにさせてくれる。

「また遊びに来いよ」

「うん…」

「バレンタインの時はゴメンな」

「ううん。翔太君に気持ちを伝えたかったから…。翔太君の事わかってたけど、気持ちが止められなくて…。私こそごめんなさい」

「なんで謝るんだよ? 瑠璃花ちゃんは謝らなくていいんだって…」

翔太君は笑顔で言ってくれる。

最後まで翔太君は優しいよね。そんなとこ好きだった。だけど、もう戻れないよね。先に翔太君は結婚してただけ。私に魅力がなかったんじゃなくて、縁がなかっただけなんだよね。

「翔太、行くよ!」

荷物を運び終えた朝奈さんが呼ぶ。

翔太君家族は先に車に乗っている。

「今行く! じゃあな!」

翔太君が行きかけようとした時、

「翔太君、待って!」

呼び止めたの。

「なんだよ?」

「手紙送っていい…?」

「いいよ。オレも送るな」

「それと、写真も…」

「わかった。しゃあな!」

そう言って、車に入って行く。

ブロロロ―。

車は走り出した。

「バイバイ…翔太君…」

じわっ。

小さくそう言ったら、ためてた涙が出てきた。そして、しゃがみこんで声をあげて泣いたの。







翔太君家族が引っ越して、三ヶ月が経った。学年が上がって、中三になった。もうすぐで修学旅行が始まる。

私の中に翔太君はいない。翔太君が引っ越したから、気持ちが消えたんだと思う。引っ越して一度手紙が来たよ。近況報告してくれたんだ。新しい家での生活は楽しいって書いてあった。


「瑠璃花、西村君かっこいい!」

真理がキャピキャビ騒いでる。

西村君っていうのは、中三になって同じクラスの男子。

勿論、私と真理も同じクラスになったんだ。

真理ってば西村君にお熱なの。西村君は真理にとって仲の良い男子だから、気軽に話せる友達なんだ。

「私ね、西村君に告白しようと思うんだ」

真理は顔を赤らめて言う。

そんな真理が可愛いなんて密かに思っちゃった。こんなこと言ったら真理に怒られるかな?

「大丈夫だよ。真理ならきっと上手くいくよ!」

「ありがとう。じゃっ、行ってくるね!」

「え? 今から行くの?」

「そうよ。善は急げって言うじゃない?」

真理は当たり前のように答える。

「そうだけと…何も休み時間に行かなくても放課後にでも…」

思わず止めに入っちゃう。

「今行かなきゃ、だよ。行ってくる」

真理は西村君の元に行ってしまう。

真理は迷いのない女なの。思ったら行動しちゃう。だから、ダダダッて行っちゃうんだ。ほら、もう西村君の前で告白しちゃってる。あ゛―っ、私もその性格欲しいよ〜!

「真理どうだった?」

告白を終えて戻ってきた真理に早速聞く私。

「OKでした!」

真理はブイサインをしながら答えてくれる。

「おめでとう! 真理!」

私は手を叩いて自分の事のように喜ぶ。

「ありがとう。話変わるけど、瑠璃花の夢って何?」

真理ってば突然話が飛ぶからビックリしちゃう。

「夢はね…女優か歌手になりたいなって思ってるよ」

「すごい夢だね」

「真理は?」

「私は体育の先生」

「真理だってすごい夢持ってるんじゃない」

「お互い夢叶えようね!」

「そうだね!」

私達はクスクスを笑いあった。






そして、五年後の十九歳、高野瑠璃花は無事に女優デビューしました。

初のドラマは、主人公の友達役の大学生。それに、CMまで出ちゃって忙しい毎日を送ってる。

真理とは高校まで一緒で、真理は体育大学に進学した。たまに真理と連絡取ってるよ。それぞれ別々の道に進んだけど、お互い選んだ道で活躍していきたい。

「は―い、瑠璃花ちゃんこっち向いて―」

カシャッ。

カメラのシャッター音が撮影室に響く。

今は雑誌の撮影中。カメラマンさんが要求した表情をカメラの前で見せる。

芸能界に飛び込んで、楽しい事ばかりじゃないし辛いことも嫌な事もある。忙しくて睡眠時間が取れなくても、テレビの前では笑顔でいなくちゃいけない。だけど、ファンのみんなのために頑張りたいって今は思ってるよ。

「お疲れ様!」

スタッフの声が飛び交う。

私はスタッフのみんなにお疲れって声をかけると、楽屋に戻る。

「瑠璃花、ファンレタ―だよ」

マネジャーさんが段ボールに入ったファンレタ―を私に渡す。

「うわぁ…ファンレタ―なんて夢みたい」

あまりに嬉しくてファンレタ―の山の中に手を入れる。

そしたらね、見覚えのある名前を見つけたの。そう、あの翔太君からの手紙があったんだ。

翔太君が引っ越してして半年ぐらいしか手紙のやりとりしてなかったから、なんか嬉しいな。感激してしまうよ…。

早速、手紙を読み始めたの。

高野瑠璃花さんへ。

女優デビューおめでとう。久しぶりの手紙ですね。毎週、ドラマ見ています。昔、近所に住んでた中学生のあの瑠璃花ちゃんが、テレビに出てるなんて今でも信じられません。朝奈と絵里も元気にしてます。また埼玉に遊びに来て下さいね。そして、絵里の後に二人子供が生まれました。二人共、男の子です。家族写真入れておきますので見て下さい。それでは、大変な事もあるかと思いますが、体に気を付けて頑張って下さい。

青山翔太

そっかぁ…翔太君、今では三児のパパなんだ。元気そうで良かったよ。

そう思ったら涙が出てきちゃった。

五年前、長い片想いの相手は翔太君だったね。初恋だったの。翔太君には朝奈さんという奥さんがいて、絵里ちゃんという子供がいたんだ。バレンタインデ―に失恋して、朝奈さんを恨んだりもした。でも、私にはいい経験だったよ。

翔太君、手紙と写真ありがとう。この手紙と写真を励みにして、芸能界頑張るよ。

「瑠璃花、ドラマの収録始まるよ」

マネジャーさんが私に声をかける。

本当にいい経験させてくれてありがとう。もし、芸能界で好きな人が出来て、噂になっても翔太君の恋を思い出すね。

私は涙をぬぐって、

「ハイッ!」

元気よく返事して走り出す。


今から大きく羽ばたいていく。誰からにも愛される芸能人のために、大きく大きく羽ばたいていくの。永遠の大きな夢に走り出すの―――。


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