第9話 初対決ウェアウルフ
ゴビーはじめての戦闘回。
と、言っても魔法は一発だけですが。
「とうちゃんかぁちゃん!俺街の外でモンスターと戦いたい!」
3人でテーブルを囲み食事を取った後コビーは力強く言った。
アニーは食器を片付けながら
「まだ早いかな〜?今12歳でしょ〜?あと3年我慢しなさい〜。そしたら冒険者登録できるでしょ〜?それからでも十分よ〜。」
「けど!俺もっと強くなりたいんだ!勇者みたいに強くなっていつか地上に出てみたい!だから・・・ひっ!」
アニーの綺麗な黒いストレートヘアがフワッと膨れ上がり、ゆっくりと振り向くその顔は笑顔だが目は笑っていない。殺気さえ放っている。
「地上に出る〜?勇者〜?強くなってどうするの〜?魔王にでも挑む〜?勇者でも勝てなかったのに〜?だいたい〜コビーは〜1人で何ができるの〜?あなたは物真似師って珍しい〜ジョブで〜自分自身がまだわかりきっていないのに〜一緒に行く人達を〜危険に晒す気〜?それから〜・・・」
そこから淡々と30分間アニーの説教?は続いた。
真っ白になったコビー。そんなコピーを見てアニーはため息をつきながら。
「戦うのは許可できないけど〜ベテラン冒険者の〜素材回収とか〜討伐依頼とかを〜荷物持ちとして〜同行して〜見学するだけなら〜いい経験にもなるから〜許可してあげる。」
「?!ほんとう?!・・・けど荷物持ちって12歳でも大丈夫なの?」
「年齢はともかく〜荷物持ちは〜戦うことはないし〜今のコビーでも大丈夫かな〜冒険者ギルドには〜私からお願いしておくから〜明日にでも顔だしておきなさ〜い。」
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「良かったのか?この辺りの魔物は弱いとはいえ集団で来れば荷物持ちでも戦う場面は来るんじゃないのか?それに荷物持ちって冒険者同様15歳からだろう?流石に危険じゃないのか?」
いつになく真剣な顔で語るマッスル。
「大丈夫よ。あなたは鑑定眼を持っていないからわからないかもしれないけど。あの子の強さって異常よ?レベル1なのに今の私の3分の1位の強さがあるわ。普通の人のレベル25位に匹敵するんじゃないかしら?今は戦いの雰囲気を経験して15歳になって冒険者になった時に、周りの同年代を引っ張って行けるくらいの経験を積ませてあげましょう。ほら、可愛い息子には旅をさせろって言うでしょ?ギルド長には私から良いパーティを紹介する様に言っておくわ。だから〜あなたも〜仕事仕事〜。」
アニーが真面目な顔つきで間延びしない口調で語る。
「わかった。あまりやり過ぎるなよ?プレッシャーかけ過ぎてあれ以上ギルド長の髪の毛が抜けたらかわいそうだからな・・・。」
「わかってるわよ〜ほどほどにしておくわ〜じゃあちょっと行ってくるわね〜」
そう言い残しアニーは冒険者ギルドへと向かった。
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翌日、マッスルの仕込みの手伝いを終えるとすぐに冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに到着し、カウンターに行き、出かける前に母にもらった手紙をお姉さんに渡すと、ものすごい勢いで奥へと行ってしまった。数分と待たない間に銀髪で少し髪の毛の薄くなった、がっしりとした身体つきの大男が息を切らしながらやってきた。
「きみがあの伝説の・・・いやアニーさんの息子のコビーくんかな?」
大汗をかきながら話しかけてくる。
「はい!母からベテランパーティの荷物持ちとしてならばと街の外に出る許可をもらえたので伺いました。大丈夫でしょうか・・・?」
「もちろんだよ!あのアニー様の頼みとあればダメでもなんとかします!」
「・・・様?。あ ありがとうございます。(いったいかぁさんは何をしたんだろう・・・)」
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「あ〜・・・お前が荷物持ち兼見学者のコビーか?俺たちはAランクパーティの《カサンドラ》だ。俺はリーダーのボギーだ。本来は荷物持ちなんぞぁ雇わないんだが、今回はギルドマスターに頼まれてなぁ。近場で素材集めと言う名の狩りをしに行く。危ない場面はないと思うが、街の外では何があるか分からん。荷物持ちでも注意はしてくれ。」
いかにも冒険者という風貌の鎧姿の男がポリポリと頬を指でかきつつ声をかけてきた。
「はい!よろしくお願いします!」
カサンドラは4人パーティで主に商人の護衛でフォースの街に行っている事が多いという。
この街で討伐依頼や採取依頼などは普段は受けていないらしい。今回はギルドマスターの頼みと後輩の育成という事で受けてくれたそうだ。
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「ウィンドカッター!」
緑色の髪をバサバサと揺らしながら魔法を放ったのはカサンドラの砲撃役の緑魔導師アミィだ。
街を出て森に向かう途中で早速狼型の魔物ウェアウルフと遭遇した。
ウェアウルフに向かい、アミィの放った風の刃が襲いかかる。
バシュッ!という音と共に2体のウェアウルフに直撃する。ウェアウルフはその場で崩れる様に倒れ絶命し、黒い霧の様に消えていく。消えた後には牙が残されていた。
ウェアウルフは群れで行動する魔物だ。今は10体ほどが襲いかかってきていた。
剣士のボギーは自身に身体強化魔法をかけ、ウェアウルフの群れへと駆けていく。エアブーストでスピードの上がったボギーにウェアウルフは驚き散会するがボギーの攻撃の方が早く、ウェアウルフ5体を一気に切り裂く。その瞬間ウェアウルフの体が黒い霧の様になり霧散する。後に残ったのは牙とウェアウルフの肉だった。
ボギーの横をすり抜け3体のウェアウルフが後方へと襲いかかる。後方で待機していた銀髪の白魔道士の女性ソフィはその大きな胸を揺らしながら冷静に魔法を唱えた。
「エアブースト!プロテクション!頼んだわよダルトン!」
側にいた大柄の男ダルトンはソフィに強化してもらい敵を迎え撃つ。ダルトンは重戦士というジョブで大きな盾と大きなハンマーを持ち構える。ウェアウルフの攻撃を盾でそらしガラ空きの胴目掛けてハンマーを振り下ろす。ソフィによりスピードを強化された事もあり、ダルトンのハンマーにウェアウルフは反応できず、2体が黒い霧となっていった。
残り1対となり、ウェアウルフが逃亡しようとゴビーの方へと走っていく。
「しまった!1匹逃した!逃げろ!小僧!」
ダルトンの声が響き渡る。
「え?!うわぁ〜!!!」
ウェアウルフが牙をむき出しにしコビーに噛み付く。
が、ゴビーの耐久力は普通の人のレベルよりはるかに上だった為、かすり傷がついただけだった。
「あれ?痛くない?」
コビーは驚きながらもとっさにジョブを緑魔導師に変え、見よう見まねで魔法を唱えた。
「ウ・・・ウィンドカッター!」
逃げるウェアウルフに向かい風の刃が到達し、ウェアウルフの足へと傷をつける。
走る事の出来なくなったウェアウルフへボギーがとどめを刺し黒い霧となって消えていく。
「はぁ・・・焦りました・・・」
コビーがホッと一息をついていると凄い勢いでアミィが近づいてくる。
「な な なんで緑魔法が使えるの?!きみ緑魔導師なの?!聞いてないんだけど!私よりは威力落ちるけどかなりの魔力がこもってた!きちんと鍛錬積んでないとあの威力は出せないよ!」
焦るゴビーは「なんというか火事場のバカ力ってやつです」とごまかしていた。
何はともあれ突然だったがゴビーの初戦闘が終了したのであった。
次からはもっと戦いを多くしたいと思っています。頑張ります