第32話 スキルリング
僕達はキラーウルフを追いかけて奥へと進んで行った。地図上では一本道で行き止まりとなっていた為、このまま追い込んで討伐しようと考えていた。しかし、突き当たりまで来たにもかかわらずキラーウルフの姿は見当たらなかった。
「どういう事?私たち一本道を進んできただけよね?なんでいないのよ!」
「だよね〜?逃げ場も隠れる場所もなかったのにさぁ〜」
「・・・みんなちょっと待って?」
今まで黙って付いて来ていたトニーが壁に進んでいき何かを調べ始めた。あ!トニーの体が半分壁に吸い込まれた!
「え?!ちょ!!トニー!大丈夫なの?!」
「うん。大丈夫だよ。この壁この部分だけダミーになってるみたい。ここから先に進めるよ。」
「すごい!トニー君なんでわかったの?」
「・・・普通に行き止まっただけだったら気にしないと思うけどキラーウルフが消える訳ないし、現実的に考えたら何かしらの仕掛けがあるかなって思ってさ。ほら、キラーウルフって知能が高いっていうし・・・。」
「なるほど・・・僕達だけじゃ気付かなかったかも・・・トニー君お手柄だよ!じゃあ早速キラーウルフを追いかけよう!ここから先は地図にない未知なる迷宮だから周囲に注意しながら進んで行こう!」
僕がそう言葉をかけるとみんな無言で頷き戦闘態勢をとりながらゆっくりと進んでいく。
10分ほど進むと2方向へと道が分かれていた。
「分かれ道か・・・何があるかわからないからまずは左からみんなで確認に行こう。」
「そうね・・・通常の道なら大丈夫だと思うけど隠し通路なんて何かあるとしか思えないものね?慎重に進みましょ!」
「え〜!せっかく2つの分かれ道なんだから二手に分かれて競争しようよ〜その方が効率いいじゃん!キラーウルフくらいよゆーだよ!」
「いや、もしキラーウルフが1匹じゃなくて複数いて襲って来たら?それにキラーウルフより上位の魔物が出てきたら?流石に対処しきれないだろ?だからここはまとまって行動しよう!」
「ぐぬぬ・・・わかったぁ・・・」
マイルは口を尖らせながらも頷いてくれた。安全第一だからね!
左の道を進んで5分ほど経った頃、奥に大きく開けた空洞が現れ、その中に多数の魔物の気配を感じた。
「この奥にいるみたいだ。こっちの道が正解かな?数もかなりいるね。」
「どうする?先制で私がトルネードファイアでもぶちかます?」
女の子がぶちかますなんて・・・。と思いつつ
「と、とりあえず目視できる所まで進もう。状況によってはトニーとアニーで範囲魔法をお願い。マイルは2人のフォローを。僕は場合によってはアニー達と範囲魔法を放つよ。じゃあ行こう!」
戦闘態勢をとりながらジリジリと奥へ進んでいく。
空洞の中は明るくなっており中の様子が見えてきた。僕達は両サイドの壁にピタリとつき中の様子を確認する。
「ちょ、これは、凄いわね・・・。」
アニーから思わず漏れた一言。空洞の中はキラーウルフとウェアウルフが数えきれないほど存在していた。そしてその後ろにはひときわ大きな狼型の魔物が見えた。
「あれは・・・まさか・・・キラーウルフより上位の魔物?」
「(皆さん、あれはキラーウルフの上位種キングウルフです。Bランクモンスターでキラーウルフを指揮する指揮官です。ウェアウルフが一般兵、キラーウルフが小隊長、キングウルフが軍団長だと思ってくださいキングウルフ単体ならばBランクですが、キラーウルフやウェアウルフを引き連れている時はAランク上位に匹敵すると言われ、群れを率いたキングウルフを見かけたら兎に角逃げろと言われています。)」
念話の指輪のお陰でシスの声はみんなに通じている。
「(みんなシスからの情報聞こえたよね。キラーウルフだけなら何とかなるけど、キングウルフまで居るとなるとちょっと辛いね。キングウルフが率いている群れを見つけたらとにかく逃げろと言われているらしいし。どうする?向こうはまだ向かってくる気配は無いけど・・・。)」
「戦うしか無いでしょ!?ここで逃げちゃったら行商人が襲われるかもしれないじゃん!」
マイルは鼻息荒く顔を近づけてまくし立ててくる。声大きいよ!顔近いし!せめて念話で叫びなさい念話で!
「そ、そうだね。アニーとトニーの範囲魔法で数を減らして、その後は後方からランスやボールで援護。あとマイルは範囲魔法が消えたら最初から全力で突っ込んで掻き回して。僕はマイルと一緒に突っ込みつつ様子を見ながらキングウルフに攻撃を仕掛け様と思う。あとの判断はみんなに任せるから。じゃあ行こう!」
キングウルフ軍との戦いだ!
ざっと見た感じキングウルフ1体、キラーウルフ15体、ウェアウルフ100体以上って感じかな?多分キラーウルフ1体にウェアウルフが10体前後一緒に行動するのだろう。まずはその真ん中を崩して分断するべく魔法を放ってもらう。
「トルネードファイア!!」
「ストーンストリーム!!」
アニーとトニーが同時に魔法を放った。
狙いは真ん中にいたキラーウルフ周辺。燃えた岩を伴った竜巻が周囲を飲み込んでいく。だんだんと勢いが弱まり視界がひらけていくと、黒焦げのウェアウルフの死体がいくつも転がり黒い霧となっていき、その中でもキングウルフは微動だにせずに牙をむき出しにしこちらを睨んでいた。
周囲にはキラーウルフが12体健在である。
今の魔法で倒せたのはキラーウルフ3体とウェアウルフ20体ほどだった。
どうやら倒れたキラーウルフはキングウルフをかばう様に覆いかぶさり魔法を防いだようだ。
魔法が消えかけたのと同時くらいに僕とマイルは飛び出して攻撃を仕掛ける。休む余裕は与えない。手前のウェアウルフやキラーウルフを無視してキングウルフに向かおうとした僕にキラーウルフ3体とウェアウルフ約20体が立ち塞がった。
「ちっ・・・ライトニングソード!」
僕は先頭のウェアウルフ5体程に向けてスキルを放つ。
「ゥゥゥォォォオオオン!」
キングウルフが低いうなり声をあげるとキラーウルフ達が3方向に分かれる。僕に向かって来ていたウェアウルフ達も立ち止まりキラーウルフの元へ戻っていった。
マイルの方をチラリと見ると同じ様に3グループに分かれたウルフ達と対面していた。
マイルはイラついていた。攻撃を仕掛けたら後ろに下がられ逆サイドから攻撃が来る。そちらを向くとまた攻撃が逆から来る。攻撃がしたいのに攻撃が出来ない。致命傷を負う事は無いが小さな切り傷が少しずつ増えていた。
「もう!!!チマチマチマチマと鬱陶しぃ!!真正面から向かってきなよ!切られなさいよぉぉぉ!」
・・・うん、そんな敵はいないと思う。
ただ、このままだとマイルじゃ無いが精神的に追い詰められてしまう。
せめて1グループづつなら何とかなるけど流石にこのまま連携を続けられると辛い。
「(シス何かキングウルフまでたどり着くいい方法ない?)」
「(そうですね。まずマイルさんとマスターでセンターを開ける様左右に誘導します。その後マスターは瞬身でアニーさんの前へ、アニーさんとトニーさんはファイアウォールとガイアウォールでキングまでの道を作ってください。出来る限りキング周辺のキラー隊も巻き込んで頂きたいです。あとはマスターの瞬身と斬瞬で一気に距離を詰めてキングを倒す。問題はキングの前のキラー達です。キラーは多分2体は動かないと思うので、率いているウェアがそれぞれ15体くらいですから全部で30体前後これらを全て一瞬で倒すか避けないとキングまでたどり着く前に魔法が消えてしまいます。後は長引けばマスターが居なくなった方のキラー隊がアニーさんとトニーさんに襲い掛かります。)」
「(わかった!大丈夫!私とトニー君で頑張ってコビーが攻撃終えるまで何とか持ちこたえてみせるよ!ね!トニー君?!)」
「(え?!・・・あ・・・うん・・・大丈夫・・・多分。)」
「(2人の護りはわたしがやるよ!2人の前まで下がって護りきる!)」
「(わかった。じゃあこっちは任せるよ。僕も何とかキングまでたどり着いてみせるよ!じゃあ行くよ!!)」
「「エアスラッシュ!!」」
僕とマイルで左右に分かれ剣士の遠距離スキル[エアスラッシュ]で敵の意識を自分達に向ける。後ろのキラー隊にも届く様にエアスラッシュを何回か放った。
シスの予想通りキラー隊2組は動かなかったが他の隊は僕とマイルに向かってくる。
「ファイアウォール!!」
「ガイアウォール!!」
2人の魔法が放たれると同時に2人の側に瞬身で戻る。魔法が生成されていきキングに向かおうとした刹那。
「「ウォン!!」」
左右に割れたキラーウルフ2体が吠えると配下のウェアウルフ達がキング達を守る様に魔法の前にとびだした。
魔法はウェアウルフ達を巻き込みキングまでの道を予定通り作ったが、道には魔法に巻き込まれなかったウェアウルフ達が20体存在していた。後ろのキラー隊2組に加え20体が僕の前に立ち塞がり、まっすぐこちらに向かって来た。
「く・・・どうする・・・そうだ!!」
僕は一瞬にして赤魔道士にジョブを切り替え魔法を唱えた。
「トルネードファイア!!」
通常地面より上に向かって捲き上るトルネードファイアを掌から前方に向けて放つ。その際に道に収まる様に意識して竜巻を細く細くして放った。ファイアランスが制御できるならばトルネードファイアもある程度制御できるのではと思いつきで試してみたが、狙い通りに細く凝縮されたトルネードファイアに道の上に存在したウェアウルフ達は避ける事叶わず巻き込まれていく。
ウェアウルフを巻き込んだ竜巻はキングへと向かって行くが、勢いが弱まっていたのかキング手前にいたキラー2体が身体を使いキングを守りキング自体は無傷だった。
しかし僕はその隙を見逃さない。瞬身でキングの背後へと周りスキルを放つ。
「斬瞬」
風の刃を纏った剣がキングウルフの首に横薙ぎに振るわれる。
僕の体力を半分持っていかれるこの斬瞬は今の僕の中での最大の攻撃スキルだ。これでダメならば逃げるしか無い。
そう思いながらキングの方に振り向くとキングの首から上がゆっくりと横にずれて地面へと落ちていき、サラサラと黒い霧へと姿を変えた。
「ふぅ・・・何とかなった。あ!そうだ残りのキラーとウェアを何とかしなきゃ!」
壁が消え道が無くなり、キングが倒れた事に気付いたキラー隊は統率が取れなくなり戸惑っている様に見えた。
「(アニー!トニー!それぞれボムで攻撃を!マイルは2人のそばで近づく敵を排除!僕も敵を倒しながらそっちに合流する!みんな気をつけて!)」
「「「(了解!)」」」
念話で指示を出し殲滅作戦を開始する。
30分後辺りにはウルフ達のドロップアイテムで埋め尽くされていた。
「うひ〜疲れたぁ・・・もう無理〜」
マイルは地面にパタリと倒れながら呟いた。
「私ももう魔力空だからもう無理・・・。しかしマイル〜別行動にしなくて良かったでしょ?ダンジョンで油断するなって事だね」
アニーも座り込みながらマイルにツッコミを入れている。
「とりあえずみんなもう一踏ん張りでドロップアイテムだけ回収しよう。そしたらルームで休んで回復してからもう1つのルートに向かってみよう。」
「「は〜い・・・」」
「・・・うん」
トニー君はマイルの横でうつ伏せに倒れていた。ピクリともしなかったから心配したが魔力切れらしいので安心した。
ドロップアイテムを回収して驚いたのはキングウルフの拳大の大きな魔石だ。魔石が出る事はレアなのだがこれ程の大きな魔石はフィフスの街では見る事がなかった。あ、ちなみに魔石の他にも骨と肉がドロップしていた。美味しい肉なら嬉しいな。
そしてドロップアイテムがキラーウルフが15体で魔石が4つ、肉が10個、牙が10個。
こちらの魔石は小指大の小さな魔石だった。
あと驚いたのはウェアウルフの数。なんと総勢207体!肉が158個、爪が58個、牙が89個、皮が63個とかなりの量だった。通常のパーティならば半数以上を放置していかなければならない量だが、僕のディメンションボックスはいくらでも入るし時間経過もないので構わずどんどん収納していった。まぁその前にこの規模の魔物に襲われたら普通は無事では済まないけどね・・・。
「みんなお疲れ様!じゃあディメンションルームで一休みしよう。せっかくだからキングの肉焼いて食べてみようよ。なのでそれぞれの部屋で休憩とったら焼肉パーティだ!」
僕はディメンションルームの入口を作成しみんなを中に入れてから入口を閉じた。
各々休憩を取り5時間後、焼いて食べたキングの肉は固すぎず柔らかすぎず、噛めば肉汁がタップリ出てきて最高の肉だったよ!まだまだあるから今後の食事が楽しみだ。
ダンジョンでは時間の感覚がわからない。とりあえず5時間の睡眠が取れ、食事を済ませた僕達はもう1つの通路に探索に行ってみる事にした。まさかまたキングが出てくるってことはないよね・・・。
一度分岐の場所へ戻り逆の道を進んでいく。10分ほど歩いた所、キング達がいたところほどでは無いが天井が高くなっている空洞にが現れた。
「何も無いわね?」
そう言いながらアニーは中に入っていった。すると・・・
ゴゴゴゴゴゴ
という音と共に置くの壁の一角が崩れ宝箱が現れた。
「あぁぁぁ!宝箱じゃん!」
マイルはそう叫んで宝箱に走り寄った。
「ちょっとマイル!罠があるかもしれないんだから不用意に近づかないの!もう!」
アニーはそう言いながらマイルの後を追って行き、僕はトニーと一緒に2人について行った。
「早く早く〜!」
「わかったからちょっと待って。(シス、罠を確認する方法とかあるかな?)」
「(罠探知というスキルが存在するのですが残念ながらマスターのスキルの中にはありません。ですが、パターンからするとこの出現の仕方は罠はないのではと思います。・・・多分。)」
「多分って・・・。まぁいいや。じゃあ安全のためにも僕が開けてみるからみんな下がってて。」
みんなは頷き入口まで下がっていった。
「じゃあ開けてみますか。」
僕は勢いよく蓋を開けた。
ボカンッ!!っという事もなく普通に開いた宝箱の中には1つの指輪と親指大の魔石が詰まった皮袋が入っていた。
「なになに!何が入ってたの!」
みんなが走り寄ってきた。
「これなんだけど皮袋の中は魔石だね。あとはこの指輪。なんだろう?」
「ねぇコビー?鑑定してみたら?」
「そうか。忘れてたよ。【鑑定】。」
スキルリング[鑑定]
装備する事で[鑑定]スキルを使用する事ができる。
「ん?鑑定のスキルリングだって。装備してると鑑定スキルが使える様になるみたいだね?」
「へぇ・・・普通ならすごい!って思うんだけどコビー鑑定使えるもんね?」
「けど、鑑定のスキルリングって物が存在するって事は他にも様々なスキルリングが存在するかもしれないって事だよね!それは研究のやり甲斐がある!それ僕に装備させてくれないかな?使用しながら色々研究してみたい!」
トニーの研究熱に火がついてしまった様だ・・・。こうなるとトニーは止まらない。スキルリングはトニーに渡す事に決めみんなで元の道を戻り下を目指す事にした。




