第27話 ワイルドボア狩り
「ぶっつけ本番だと流石に無理だろうから、とりあえずこの中で練習していこう。サニーとトニーはランスを1本にする事から始めて、出来る様になったらこの的に当てられる様に練習しよう!」
そう言いながらコビーはディメンションボックスから丸太を4本取り出し、丸を描く。
「マイルは僕と一緒にウィンドスタッヴを的に正確に当てられる様にしよう!成功率が上がったらワイルドボア討伐に行こう!」
「「「「おー」」」
コビー達はそれぞれに分かれて練習をする事にした。
「ファイアランス!」
サニーは両手を差し出し集中してファイアランスを唱える。いつもと違い掌の中にファイアランスをまとめる様に集中しイメージする。いつもの様に自分の頭上にではなく掌の中に5本のランスが現れた。これを凝縮する様に1本にしていく。
「ぐ・・・ぐぐぐ・・・ぷはぁ!」
サニーが息を吐くと同時にファイアランスは霧散した。
「これは難しいわね・・・。5本を1本にしようとすると反発する力がすごくて抑えられない・・・。込める魔力を減らせば良いのかしら?」
「それよりも最初から一つの塊としてイメージした方がやりやすいんじゃないかな?」
「そうね。5本なのが当たり前だったから1本としてイメージする事から始めてみましょうか?」
そう言うとサニーは大きな火の塊をイメージして魔法を唱える。
「ファイアランス!」
サニーの掌の中に楕円の火球が浮かび上がる。
「う〜ん・・・これじゃあファイアランスというよりファイアボールね・・・。もっと細長いイメージで・・・。」
「・・・そうだ。そうだよ!サニー!ファイアランスの5本をひと塊りにするんじゃなくて繋げるイメージの方が良いんじゃないかな?!長い槍の様なイメージでさ!」
「なるほど!やってみる!ファイアランス!」
5本出現したランスを一列に並べてみる。そして1本1本繋ぎ合わせ一つの長い槍の様にしていく。そしてその1本に強めの魔力を注ぎ込む。すると細長い槍が太くなり見るからに強度を増した。
「く・・・これはかなりの魔力を消耗するわね・・・あ・・・」
放つ前に消えてしまった。
「すごいよサニー!けど方向性はこれで良いと思う!これを放つ事が出来るようになったらコビーに相談してみよう!」
そこからサニーとアントニオは魔力回復薬を飲みながら、何十回と失敗を繰り返し、1本のランスを生成する事に成功した。
・
・
・
マイルとコビーはまず、止まっている的に正確に当てる事から始める。
丸太を縦に置き丸を描いた所に向けてスキルを使用する。
「ウィンドスタッヴ!」
マイルは丸太に向けて走り出しスキルを放つ。しかし狙いは中心より遥かに右を貫いていた。
「おっかしいなぁ・・・ちゃんと狙ってはいるんだけどね・・・どうもズレちゃうんだよね・・・なんでだろ?」
「剣先がブレてるのかもしれないね?今のは剣を縦にして突いていたけど横にしてみようか?ウィンドスタッヴ!」
今度はコビーが丸太に接近しスキルを放つ。今度は丸の上部を貫いた。
「う〜ん・・・今度は上か・・・。どうすれば良いんだろう?剣が平らだからどうしても風の抵抗を受けちゃうんだよね。」
「も〜!なんで剣は平らなんだ〜・・・丸い剣なんてあるわけないじゃ〜ん!あの速度でブレないわけないよ〜!それこそ槍でもないと・・・けどそれじゃあ剣士じゃなくなっちゃうね・・・。」
「槍かぁ・・・そういえば槍のスキルでも似た様なのあるよ。トルネードスピアっていう風をまとった技なんだけど、風が竜巻みたいに槍を覆ってて・・・。竜巻?ねぇマイル?剣で突く時に捻りを入れる事出来ないかな?そうする事でトルネードスピアみたいに風を少しだけ竜巻みたいにしたら風の抵抗を受けなくなるんじゃないかな?」
「おぉ!じゃあやってみよ〜!ウィンドスタッヴ〜!」
マイルは丸太に突っ込んで行きスキルを放つと当たる直前に手首を捻る。的を確認すると中央からは少しだけ右斜め上を突き刺していた。
「おぉ!これだよこれ!なんかスムーズだったよ!もう少し捻っほうが良いかもしれない!どんどん行ってみよう!」
マイルとコビーは交互に確認しながら練習していき10回を超えた所では2人とも的に正確に当てる事が出来る様になったていた。
「あとは動く的に当てることが出来るかだね。けどこればかりは実戦でしか出来ないかな?」
「良いじゃん良いじゃん!自信ついてきたよ!早く試したい〜!」
マイルは興奮してはしゃぎ回っている。
そんな時サニーとアントニオも戻ってきた。
「こっちは一応形にはなったわよ。見てもらって良い?」
そう言うとサニーはファイアランスを唱える。練習の成果もあり最初から1本の太長い槍の様なものを作成し、そのまま的に放つと丸太は粉々になり燃え上がった。
「これなら威力も申し分ないと思ってるんだけど、どうかな?」
サニーは少しドヤ顔をしながら答えを待っている。
「すごいよサニー!こんなに威力が上がるなんて!」
「これは驚きですね。サニー様ならば出来るとは思っていましたがここまでの物になるとは想像していませんでした。これなら間違いなく倒せます。」
「シスも太鼓判を押したよ。こっちもなんとか的に当たる様になったよ。後はお互い実戦あるのみだね。けど、無茶はしない事、危なくなったらディメンションルームに逃げ込む様にしよう。」
少し休憩をした後、全員で外に出ると外はもう暗くなりかかっていた。そんな中ワイルドボアのいる場所へとゆっくりと進んで行く。
コビーは先頭に立ち探索スキルで敵の位置を確認しながら歩みを進めていく。すると前方に魔物の反応を10個確認した。前に見た時よりも多くなっている事に焦ったコビーは木の上へと登り遠見スキルで状況を確認した。
すると6匹だったはずのワイルドボアはなんと、10匹に増えていた。
それを確認したコビーはみんなのもとへともどった。
「やっぱり増えてるね。今10匹固まってるよ。僕が誘導してくるからトニーは穴を掘って置いてくれるかい?マイルはもし落ちない奴がいたらそいつをまず倒して。サニーはマイルのサポートお願い。じゃあみんなよろしく!」
「「「おー!」」」
クロノブレイバーのワイルドボア殲滅作戦がスタートされた。
・
・
・
コビーは群れに接近し、中心付近にファイアボールを打ち込む。するとその内7匹が一斉にコビーに群がる。コビーは自らにエアブーストをかけ、威圧を放ちながらアントニオが仕掛けた罠に誘い込むべく走り出した。
後ろを振り向き確認し、注意を引きながらも森の中を縫う様に進んで行く。
少し進むと木の上からマイルが合図を送っている。合図を確認したコビーは前方の穴を確認すると、穴を飛び越えワイルドボアに向き直り再びファイアボールで威嚇する。ワイルドボアはコビーに体当たりしようと向かってくるが次々に穴の中へと落ちていく。
「凄い凄い!上手くいったじゃん!後はこの中にサニーが魔法を放つんだね?」
「そうだね。サニー任せるよ。トニーはサニーのフォローをお願い。マイルは僕と一緒に追いかけてこなかった3匹を倒しに行こう!」
・
・
・
3匹のワイルドボアは食事に夢中で追いかけてこなかった様だ。その3匹に向かってファイアランスを放つと食事を邪魔されて怒ったのか声を上げて向かってくる。
「「「ぶもぉぉぉぉ!!」」」
「マイルはとりあえず1匹をお願い!僕は引き離しつつ残り2匹をやる!」
コビーはそう言うとマイルから離れつつ2匹のワイルドボアにファイアランスを放つ。すると2匹はコビーに体当たりをかまそうと走り出してくる。コビーは一定の距離を保ちながら距離をとった。
「よし!ウィンドスタッヴ!」
1体に向かって何度も練習を重ねたスキルを使用し突っ込んだ。ワイルドボアの眉間目掛けてコビーの剣が吸い込まれていく。当たるの瞬間に手首をひねり気流を操作する。そして吸い込まれる様にワイルドボアの眉間に剣が突き刺さり1匹を仕留める事に成功した。
「よし!これもやっぱり有効だね。一撃で倒せる。さぁもう1匹も仕留めちゃおう!」
そうしてコビーは残る1匹には瞬身で接近しウィンドスタッヴを使いとどめを刺した。
「マイルはだいじょうぶかな?」
マイルはワイルドボアと睨み合いをしていた。
「さぁあたしのスキルは通用するのかなぁ?じゃあいっくよ〜!エアブースト!からの〜ウィンドスタッヴ!」
コビー同様一瞬で間合いを詰めてスキルを発動した。当たる寸前で手首をひねり風の気流を操作して眉間を狙う。見事に眉間に剣が刺さりワイルドボアは霧散した。
「おぉ!本当に一撃だった!これなら余裕でまだまだいけるね!」
ワイルドボアが霧散するとともにコビーがやってきた。
「そっちも終わったみたいだね?とりあえずマイル達のところに戻ろうか?」
コビーはドロップ品を回収しながらマイルに聞いた。
「あとは落とし穴の処理をどうするかだね?とりあえずサニー達と合流して考えよう。」
コビーとマイルは落とし穴の所まで戻ってきた。
「サニーどうだい?」
「あ、コビー。いや、一度トルネードファイアで燃やしてみたんだけど全然ダメで、いま1本のファイアランスを試してみようと思ってた所よ。」
「そうなんだ?そしたら動く的に当てる練習だと思ってやってみようか?マイルはドロップアイテムの回収と周辺の警戒をお願い。僕もファイアランスを試してみたい。トニーも一緒にガイアランスで練習しよう。」
コビー、アントニオ、サニーの3人は穴の周りに立ち魔法を唱える。
「ファイアランス」
「ガイアランス」
「ファイアランス」
コビーだけは5本のランスが生成されたがマイルの指導のもと1本にする事に成功し、そこからは当たるまで魔力回復薬を飲みながら魔法を放ち続け、1時間ほど経った頃ようやく全てのワイルドボアを倒し終えた。すると穴の中央に親指大の魔石が3つ落ちているのを発見した。ドロップアイテムはマイルがその都度隙を見て回収した物をコビーがディメンションボックスに収納していった。
「ワイルドボアの魔石はドロップ率が悪いんだね。けど3つ出たのは良い方なのかな?」
コビーは腕を組みながら呟いた。
「はぁ・・・疲れた・・・。でも、ファイアランスの制御には慣れてきたわ!」
サニーは地面に座り込みながら言った。
「うん。とりあえず辺りもすっかり暗くなっちゃったしディメンションルームの中でテント張って休んでから帰ろう。報告しなきゃだからね。」
そう言うとコビーはディメンションルームの出入口を生成し、みんなで中に入っていった。それぞれのテントを張り暖かい食事を堪能した後それぞれのテントで眠りについた。




