第26話 ワイルドボアの群れ
コビー達は更に森の奥へと来ていた。
今回はより慎重に魔物に見つからない様進んでいた。
広場を出て1時間ほど進んだ頃、森の奥にモンスターの気配を感じた。
「マスター、この奥に魔物がいる様です。」
「みんな止まって!(シスわかるの?)」
「はい。マスターのスキル『知識欲』の中に『探索』というかスキルがありまして、今回はそれを使わせていだだきました。」
「(・・・なんで今まで教えてくれなかったの?それがあったらこの依頼すぐ終わったかもしれないじゃん!)」
「それはマスターの・・・すみません。禁止事項にあたる様です。言えるのはマスターが私頼りになってしまうのはいけないという事です。」
「(・・・よくよく考えるとシスもよくわからないスキルだよね?禁止事項ってのが気になるけど今はこの探索スキルはありがたいよ。)
みんな、今探索ってスキルを使ったんだけど、この先に魔物がいるみたい、しかも5匹。ウェアウルフの可能性もあるけど、もしワイルドボアだったら今の僕らだけじゃ危険だから、とりあえずみんなは僕のディメンションルームで待機していてくれないかな?僕が気配断絶スキルを使って様子を見てくるよ。もしやばい敵ならそのまま安全な所まで撤退してから皆んなに声を掛けるから」
「・・・5匹か。私は賛成。ってか探索とか気配断絶?とかどれだけスキル持ってるのよ!けど気配を悟られないのであればコビーに任せるがいいと思う。もちろん戦闘になる様ならすぐに加勢するから何かあったらすぐ呼んでね!」
「もしワイルドボアなら5匹はさすがにキツイかな〜。あたしもコビーに任せるよ。」
「・・・僕が言い出した事だから本当は一緒に行きたいけど、流石に足手纏いになるからコビーに任せるよ。けど無茶だけはしないで・・・」
3人が申し訳なさそうに言った後、コビーはディメンションルームの出入口を出す。
「じゃあ10分前後で戻るから中で待ってて!」
3人は頷き中に入っていく。それを見送った後、自身にエアブーストと気配断絶を使用し走り出した。
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コビーは木の上に登り遠見スキルを使用し反応のあった場所を覗き込んだ。
「「「「「ぷぎーぷぎー」」」」」
そこには5匹のワイルドボアが食事をしている所だった。無残に潰されたウェアウルフとウェアラットが数匹転がっている。
コビーは見つからない様に慎重に移動し、改めて近くで状況確認をした。
「(これは凄まじいな。こんなのが街に攻めて来たら街の防壁が粉々に砕かれちゃうな。)」
「そうですね。あの街の防壁ならばワイルドボアの体当たりで砕けると思います。」
そんな会話を頭の中でシスとしていると更に奥から1匹のワイルドボアが現れた。
「(!ど、どう言う事?またワイルドボア?トニーの言ってた事が当たってたって事!?)」
「確かに今出て来たワイルドボアは気配もなく突然現れましたね。生まれたばかりの魔物でしょう。となると先ほどの仮説は当たっていたかと思われます。」
「そうか・・・とりあえずギルドに戻ってこの事実を伝えて討伐隊を組んでもらった方がいいかもしれないね?流石にあの強さの魔物を僕らだけで対処するのは無理がある・・・。ただ、いつまで続くのかが問題だなぁ・・・。」
「それなんですがマスター。ワイルドボアはCランクとしては弱い方な割に経験値は豊富なんです。あと戦略次第ではマスター達だけでも処理出来るかと思います。あそこにいる6匹位なら余裕です。まず火に弱いのでファイアランスを1本に纏めて魔力をつぎ込んだものを生成して下さい。弱点は眉間なのでそれで止めがさせます。マイル様の使っていたウィンドスタッヴでも眉間に当たりさえすれば倒せるのかと。あとワイルドボアは直進しか出来ませんので、土魔法で穴を掘ってそこに誘導して落とすと一網打尽に出来ます。これらを踏まえてここでレベリングする事をお勧めします。」
「・・・え?」
コビーはうまく言葉が出てこなかった。
あれだけ苦労して1匹を倒して来たのにもかかわらずCランクでは弱い方という事。
弱点は眉間で火に弱いという事。
ファイアランスを1本に纏めて魔力を込めると言うアイデア。
穴を掘って突き落とすという単純な作戦。
このモンスターでレベリングするという考え。
どれをとってもコビー達の中には無かったものだ。
コビーの中には恐怖や焦りなどが先程まで渦巻いていたが今心の中にあるのは単純な『好奇心』。今聞いた提案の全て出来ない事ではない。純粋に試してみたいと考えていた。
「シス。一つ聞くが僕達であのワイルドボアの群れは殲滅できると思うかい?」
「90%勝てると考えます。」
コビーは興奮で全身が泡立つのを感じた。
「そうか・・・じゃあやってみようか!みんなに相談しに行こう!」
コビーはディメンションルームの出入口を作成し中へと入って行った。
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「コビー!どうだった??」
サニーはいち早くコビーに気付き、近寄って声をかけた。
マイルとアントニオも気付き後を追って来ていた。
「ただいま。とりあえず報告したい事が山積みだから座って話そう。」
そういうと設置してあったテーブルと椅子の元へ行き腰をかけ、水筒から水を注ぐと一気に飲み干した。サニー達も後に続き各々の席へと着席する。
「それで?やっぱりワイルドボアだった?」
コビーは無言で頷いた。
アントニオは深く息を吐くとコビーに真剣な眼差しで話しかけた。
「・・・じゃあやっぱりワイルドボアが出現する様になったと思って間違い無いんだね。これはもう僕達の手には負えない。早急にギルドに戻って報告しよう!街全体で防衛に当たらないと街が崩壊してしまう!急いで戻ろう!」
「それなんだけど・・・僕達でワイルドボア討伐をしないかい?」
3人が目を見開いてコビーに視線を向けた。
「い、いやぁ無理でしょ?無理無理!だってあんなに苦労して倒したやつが5匹でしょ?!どう考えたって無理でしょ!」
マイルは立ち上がり手を前で振りながら答えた。
「・・・コビーはなんで討伐しようと思ったの?流石に無策で臨もうとは思ってないんでしょ?」
サニーは少し考えた後冷静に質問した。
「う〜ん。どこから話したものか・・・。」
「さぁマスター私の事をみんなに伝えるいい機会ですよ!躊躇わずに!さぁ!」
「(怖いよ!まぁそうだね。じゃないと根拠の説明が出来ないからね。)」
コビーが頭の中でシスと話し合い?をしている隙にアントニオが声を上げた。
「コビー?本気なの?1体にあんなに苦労したCランクの魔物だよ?」
「うん。わかってる。とりあえず話を聞いて?まず、僕のスキルの事なんだけど、まだ話していないスキルがひとつあるんだ。[解説者]って言って、頭の中で助言や補助をしてくれるスキルなんだ。僕はシスって呼んでるんだけど、このシスが僕の膨大な量のスキルの中からその時々有用なものを選んでくれるから戦い中でもスムーズにスキルを使えているんだ。ハングリーベアの時、あっさりと倒せた様に見えただろうけど、このシスが効果的なスキルを教えてくれたからこそ討伐できたんだよ。」
コビーは一気にここまで話すともう一度水筒に手を伸ばしコップに水を注ぐと一気に飲み干した。
「で、このシスなんだけど色々な知識を持っていて、いつも助言をくれる。今回はワイルドボアの弱点と効率的に倒す方法を教えてくれた。」
3人は一瞬驚く様な素振りを見せたが真剣に話を聞いている。
「まず弱点は眉間で火に弱い。これは後で有効な攻撃方法をみんなで練習してみよう。あと戦略も、まぁ・・・戦略って程じゃ無いんだけど、ワイルドボアは方向転換が出来ず真っ直ぐにしか進まないらしいんだ。その習性を利用して罠を仕掛ける。土魔法で大きめな穴を掘って、そこに誘い込んで落とす。その後は魔法を放つなりして倒せばいい」
「・・・この間の戦いの時、私の火魔法は効いていた気がしないけど、本当に火に弱いの?」
「マスター。あの時のサニー様の火魔法は効果ありました。その証拠に同レベルのガイアランスは傷もつけず砕け散ってしまいましたがファイアランスは皮を焦がしていました。あの時は単純に火力不足だっただけです。」
「あ〜・・・シスからなんだけどあの時のサニーの魔法は皮を焦がす事が出来たけどアントニオの土魔法は傷すら付かなかった。これは火魔法が効いている証拠だってさ。ただ今のままだと倒すまでにはいかないと思う。そこでさっき言った有効な攻撃方法の話になるんだけど。サニーはファイアランスを1本に纏めて放つ事は出来る?1本に魔力を込めて放つと単純に5本分の魔力が込められる訳だから威力も上がる。それを眉間に刺す事が出来れば、ワイルドボアは簡単に倒せるらしい。」
「・・・ファイアランスを1本に?やった事ない。当たり前の様に5本生成してた。後で試してみる。」
サニーは顎に手を当て考え込んでいる。
「はいはーい!って事はあたしは攻撃手段ないじゃん?攻撃通じなかったし、火魔法なんて使えないよ?誘導に回れば良いかな?」
「そうだね。けどマイルのウィンドスタッヴは有効だって。ただ眉間に当てなきゃならないから練習しなきゃだけどね。トニーは土魔法で穴を掘って欲しい。それとガイアランスも1本に出来るはずだからそれは試してみよう!」
「・・・まさか、そんな単純な事・・・。けど確かに・・・。」
アントニオはコビーの話を聞き自分の考えをまとめるべく考え込んでいる。
「最後にワイルドボアはCランクの中でも弱い方らしいけど、経験値が多く入るみたいだからレベルを上げるにはもってこいなんだって。そしてシスの計算だと90%の確率で僕たちが勝つと断言した。ここまで言われたらやるしかないと思わない?」
コビーはそう締めくくりみんなを見渡した。
「私はやるよ!火魔法に弱いなら私がやらなきゃだしね!それに新しい技術を試してみたい!」
「あたしもやるよ〜!誰かが囮役をやらなきゃだし、トニーとの連携は私の役割だから任せて!」
「もちろん僕もやるよ!言い出しっぺだしね!それに僕も新しい技術には興味があるから。」
クロノブレイバーの一大作戦が始まろうとしていた。




