第24話 ディメンションルームの使い道
コビー達クロノブレイバーの面々はワイルドボアと戦った場所から更に奥へと足を進めていた。10分ほど進んだ所で、木々に囲まれた中に一筋の光が差し込み、神々しさに包まれた広い空間にたどり着いた。
「わぁ・・・綺麗・・・。なんか素敵なところね。」
サニーはその場所の神々しさに見惚れていた。
「じゃあここで少し休憩しよう。じゃあテーブルとか出すから手伝って。」
コビーはディメンションボックスの中からテーブル、椅子を4脚、大きめな水筒とコップを4つ、どんどん出しそれらをみんなで設置していく。
最後にみんなのリクエストに答えそれぞれの料理を出していく。もちろん料理はつくりたてのまま暖かいものだ。
「じゃあ食べようか。いただきます!」
「「「いただきます」」」
この挨拶は勇者ユウキが広めたとされており、今では食事の前にする挨拶として当たり前のように行われている。
「いやぁ!やっぱり外でもあったかいご飯食べられるって良いね〜!行商について行く時なんて携帯食だから硬いわ味はしょっぱいわ、スープなんて冷たいからね!これは快適すぎるよ!これならフォースへの10日間なんて苦にならないね!」
マイルは暖かい食事を頬張りながら幸せそうに語った。
フォースの街へはこの階層から50階層下の100階層に存在する。ここへの道のりは広さはそこまでないが、ダンジョンなだけありかなり入り組んでいる。今でこそ地図があるので道に迷う事はないがそれでも1階層降りるだけで何時間もかかってしまう。マイルが言っていた10日間と言うのは慣れている人で10日間という意味で慣れないコビー達だったら最低でも2週間はかかってしまうだろう。当たり前だが階層を降りる毎に違う種類の魔物が現れ、強さも上がって行く。フォースの街付近の階層ではCランクの魔物も多く存在する様になる。
「時空魔法って凄いわよね。そう言えばディメンションボックスはよく使ってるけど。ディメンションルームだっけ?生き物も入れるってやつ。あれって使用してないの?」
「あぁ、単純に使う機会って無くてさ。生き物も入れられるって言っても馬車に乗る事もないし、ペット飼ってるわけでもないし、使う機会が無いんだよね〜」
「なるほどね〜ねぇねぇ!ちょっと入ってみない?私達でも入れるんだよね?」
「空気もあるって言うし大丈夫だと思うよ?けど何も入れてないから真っ白な空間が広がってるだけだよ?僕も覗いた事はあるけど実際には入った事ないんだよね。」
「じゃあみんなで入ってみましょうよ?ちょっとどんな感じなのか見てみたい!」
サニーは興奮して机の上に手を乗せて身体を乗り出してきた。
そんなサニーに少し苦笑しながら立ち上がり、コビーは近くに家のドア位のサイズの黒い長方形を作り出した。
「これで中に入れるよ。」
「よ〜っし!一番乗り〜!」
マイルはそう言いながら黒い長方形の中へ入って行った。
「あー!マイルずるい!私も!」
サニーはマイルを追って入って行く。
「アントニオはどうする?待ってても良いけ・・・ど・・・」
コビーは振り向いて声をかけた瞬間、目を輝かせているアントニオを見て唖然とした。アントニオの目が今まで見た事ない程に輝いていたからだ。誰より研究者体質な男がこんな機会を逃すわけがない。笑みをこぼしながらもゆっくり確認しながら中に入って行った。
「・・・僕も行こう。」
コビーはアントニオが入って行くのを見届けた後、頭を掻きながら呟き、中に入って行く。
「わぁ・・・こんな風になってるんだぁ・・・確かに空気もあるし、地面もあるし、明るいし、なんか良いじゃん!」
マイルは真っ白な空間ではしゃぎまわっている。
「凄いわね・・・これどの位広いのかしら?確かに何もないわね?」
サニーは周りを見渡しながら呟いた。
「・・・あぁ・・・感動だよ・・・勇者しか持っていなかった時空魔法の中に入れるなんて・・・」
アントニオは目を輝かせながらキョロキョロと見回っている。
「へぇ、自分のスキルながらこんな風になってたんだ?これなら確かに馬車も入れられるね?どれくらい広いかは僕にもわからないや」
「マスターのディメンションルームはフォースの街が入る位のサイズはありますね。」
すかさずシスが答える。
「うへぇ・・・そんなに広いんだ?」
「なにブツブツ言ってるのよ?」
サニーはコビーの前でまたも首を傾げている。
「あ、いやこの中フィフスの街位の広さがあるみたいでさ。」
「はい?!そんなに広いの?!なんか迷子になりそう・・・」
「確かに奥まで行ったら僕も戻ってこれる自信ないね・・・」
「大丈夫です。マスターならどこにでも出入口を作れますから。迷子になる事はありません。」
「(あ、そうなの?)サニー、ここの出入口何処にでも出せるみたいだから迷子になっても僕と一緒なら大丈夫みたいだよ。」
コビーはシスの解説を聞き安心してサニーに教えてあげる。
「そうなの?じゃあこの中ではコビーに付いて回ってれば大丈夫ね!」
そういってサニーはコビーの裾をちんまりと握った。
「ねぇねぇ!これだけ広いならさぁ!色々出来そうじゃない?!例えば〜・・・わざわざ鍛錬場行かなくてもこの中で鍛錬するとか〜。う〜ん・・・あとは・・・家建てて隠れ家にするとか・・・なんか色々!!」
マイルは幼少に戻った様にワクワクしている。
「・・・だったら僕の研究所も作って欲しいなぁ・・・」
アントニオは呟く様に言った。
「良いね!今までディメンションボックスの生き物を収納する版みたいな使い方しか考えてなかったけどそういう使い方もあるのか・・・。問題は出入口を開けておくのに魔力を消耗し続けるから僕が居ないと出入が自由に出来ない事だね。」
「けど、中に家を建てて置いたら行商の依頼とか楽勝だね?だって商隊を中で待機してもらって私たちが到着したら出してあげれば良いんでしょ?らっくしょーじゃん?」
マイルは頭の後ろに手を回しながら笑顔で言った。
「けど、この時空魔法の事は基本的に他者には言わない方がいいと思う。考えても見てよ。今マイルが言った事、確かに凄いけどそんな事になればコビーは引っ張りだこになるし、それによって不利益を被る人がいるだろうし、そしたらイザコザの元になるじゃない?それにもし、こんな便利なスキル知られて他のパーティからコビーが引き抜かれたりしたら嫌だもん!」
「確かにそうかも。このスキルは凄すぎるよ。このディメンションルームがあれば要人を匿う事だって出来るし、もし魔物の大群に追われても自分達だけは助かる事ができる。そんな能力他の人が知ったらどんな手を使っても欲しいって思うと思う。」
アントニオはさっきとは打って変わって真剣な眼差しで話す。
「そうかぁ・・・依頼達成し放題だと思ったんだけどなぁ・・・そう簡単には行かないかぁ・・・」
マイルは口を尖らせて子供の様に呟いた。
「けどさ楽をしようって訳じゃないけどせっかくの便利なスキルな訳だし、快適な冒険者生活はしたいよね?だから今後、下の階層で冒険をする為にも、ここにそれぞれの小屋を建てない?幸いにも僕のスキルの中に建築のスキルもあるんだ。だから材料さえ揃えれば出来ると思うんだよね?もちろん皆んなに手伝って貰うけどね?どうかな?他にも何か欲しいものがあれば作るよ!」
コビーは快適な冒険者生活を行う為に必要な人材です。1パーティに一人コビーを!
「出来れば私はお風呂が欲しいかな?冒険中にお風呂に入れるとか最高じゃない?」
「う〜ん、木で風呂桶を作ってお湯はディメンションボックスに貯めておけばいつでも使えそうだね?じゃあそれも作ろう!他は?」
「あ、あの〜僕の研究所も作ってもらえないかな?薬草とかそこで調合できる様にしておけば何かの役にたつかもしれないし・・・。」
アントニオは申し訳なさそうに言った。
「そうだね!旅の途中でポーション切れたら補充して欲しいし、研究所は作っておこう。必要なものは揃えて置いてね。」
「私は特にないかなぁ?」
マイルは今のところ浮かばない様なので必要なものが出てきた時に言って貰う事となった。
「じゃあ明日の依頼は受けないで、これらの材料集めをしよう!」
「「「お〜!!」」」
話し合いが終了しコビーが出入口を作り元の場所へと戻る。すると何処からともなく悲鳴が聞こえた。
「うわぁ!誰か助けてくれー!!」
4人は反射的に声のする方へ走り出した。すると5分ほど走った所で木にもたれかかっている男を発見した。
「大丈夫ですか?どうしました?」
コビーは男の所へ駆けつけ話しかける。
その間他のメンバーは周りへの注意を怠らない。
「で、でかい魔物が突然突っ込んできたんだ!さっきまでここに居たんだが仲間を追ってあっちの方へ行っちまった!た、助けてやってくれ!」
男はコビーにしがみつきながらそう語った。
「わかりました!とりあえずこのポーションを飲んでください!回復したら一緒に向かいましょう!あ、僕はコビー、僕達はクロノブレイバーというEランクパーティです。」
コビーは手を差し伸べて男を起こすと、ポーションを手渡した。
「ありがてぇ・・・。俺の名前はヒョーロイ。Eランクパーティ〈ファイアーサークル〉剣士のヒョーロイだ。」
コビー達はヒョーロイが回復するのを確認すると共に魔物が向かった方へと駆け出した。




