第23話 VSワイルドボア
街の名前を間違えてしまいました・・・
フォース→フィフス
ダンジョン『クロノス』の50階層にある街[フィフス]。この街にある宿屋の裏で腕輪に向かって怒鳴っている女性がいる。
「ユウキ〜?ど〜ゆう事かしら〜?ハングリーベアが突然現れたらしいんだけど〜?言い訳によってはすぐにそっちに乗り込むわよ〜?うちのコビーが死にかけたんだからね〜!」
女性の横には筋骨隆々の男が頷きながら自分の腕輪に向かって怒鳴っている。どうやら腕輪には通信機能があるようだ。
「そうだ!どう言う事だ!15歳になってセカンドスキルがわかったら連絡するって言っておいただろう!?なのになんで連絡入れる前からハングリーベアなんぞと戦わせてるんだ!事と次第によっちゃあ乗り込むぞ!」
『い、いやちょっと待てって!俺も知らなかったんだよ!Aランクの魔物は確かにスタンピード防止策で、間引きの為に定期的に放ってはいるけど、今回は知らんのよ!多分前回の間引きの際の行き残りが冬眠かなんかしてたんだと思うから今はもう大丈夫だと・・・思う・・・。』
腕輪からユウキと呼ばれた青年の声が聞こえているが、最後の方は自信なさげに声が吃っている。
「ほぅ・・・そんな理由で済むと思っちゃうんだ〜へぇ〜・・・うちのコビーが死にそうになったって言うのに〜ユウキは知りませんでしたで済ますんだ〜へぇ〜」
『ま、待ったアニー!その・・・ごめんなさい!アニーの魔法なんて食らったらここ住めなくなっちゃうから!』
アニーと呼ばれた女性は怒りは収まらないままだがとりあえず隣の男に諌められ冷静にはなってきたようだ。
「それでユウキ?コビーのセカンドスキルが時空魔法だったんだ。お前と同じな!これと物真似を合わせればかなりの戦力が期待できるな!まぁパーティメンバーは必須になるがな・・・幸いにもコビーは友達とクロノブレイバーってパーティを組んだ。メンバーは剣士、赤魔道士、黄魔道士でバランスがいい。あと神官でもいれば良いんだがな。これでコビーの物真似スキルが生きるってもんだ。今はレベルと冒険者ランクを上げるって事になってるな。」
筋骨隆々の男は女性が冷静になったのを見て、今の現状の話へと切り替えた。
『ありがとうマッスル。俺もダンジョンコア通して見てたよ。そこでだ!今回のお詫びというわけでもないんだけど、これからレベル上げと冒険者ランクを上げたいコビー達にある贈り物をしておいた。それは・・・』
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町の中央にある広場でコビー、サニー
アントニオの3人は雑談しながら待っていた。
「みんな〜!お待たせ〜!」
マイルは余裕で歩きながらやってきた。
時間はまぁギリギリ間に合っている。
「じゃあみんな揃ったし行こうか!」
今日は昨日受けた森の調査に行く為に朝からみんなで集まっていた。
これから街を出ていつもの採取場所に行き、今日は更に奥に進み新種の魔物を探すのだ。
「しかしさぁ、今まで新種の魔物なんて出た事無かったのに今更なんでそんなのが現れたんだろうね?ハングリーベアが何か関係してるのかな〜?突然変異的なさぁ〜。」
マイルは歩きながら頭の後ろに両手を回しながら言った。
「わからないけどあまり強いのは勘弁だよね。ハングリーベア並みの魔物なんてまだ倒せる自身ないもん・・・」
サニーは思い出したのか顔が引きつっている。
「森の奥って広すぎるから未開の場所も多いみたいなんだよね。強い魔物程知能が高いって言うからもしかしたら発見された魔物も、昔からいるけど発見されていなかっただけかもね?ちょっと怖いけどどんな魔物がいるかは楽しみだよ!」
珍しくアントニオがやる気満々だった。恐怖よりも研究者としての好奇心の方が勝っているようだ。
「とりあえずみんな、油断せずに行こう!森の奥はウェアラットもウェアウルフも群れで襲ってくるからバラバラにならない様に気をつけて!新種の魔物は情報によると2mくらいで動きが早いって話だったから、見つけ次第僕が鑑定するからすぐ教えて!後は各個人の判断に任せるから。」
「「「了解!」」」
コビー達はいつも採取している辺りまでたどり着いた。途中はウェアウルフが襲ってきたがマイルとコビーで瞬殺した。
ドロッブマアイテムはもちろんディメンションボックスの中だ。
「さて、ここからが問題だね。いつもならここで薬草採取して・・・しかしあまり気にして無かったけど、なんでここの薬草は採っても採っても次の日きたらまた生えてるんだろ?普通は採ったらまた半年は生えてこないって言うよね?この場所が特殊なのかな?」
薬草の群生地をみてコビーが疑問を浮かべていた。
「そうだね!ここも研究者として調べてみたいくらいだよ!実は僕も気になって土とか持って帰って調べたんだけど他の所と変わらないんだ!だから何らかの影響がこの場所にはあると思うんだけど流石にわからなくて、出来るなら夜通しみていたいくらいだよ!!」
アントニオも気付いていたらしくすでに調べていた様だ。しかし結局何もわかっていないと言う。
「そっか・・・。まぁ今回は別の依頼だしもっと奥に行ったら他にも群生地あるかもしれないし、とりあえず進んでみよう。念のため木に目印だけは付けながら進もう。」
コビー達はとりあえず目印を付けながら真っ直ぐと森の中を進む事にした。
森の中は主にウェアラットが襲いかかってくる。木の下から襲いかかってくる奴らをコビーとマイルが前衛で薙ぎ払い、木の上から飛びかかってくる奴らをアントニオとサニーが魔法で撃ち落とす。ウェアラットがドロップする牙と爪と皮を前衛のどちらかが回収しコビーのディメンションボックスへと収納していく。
そうこうしながら30分ほど進むと木々の合間からウェアラットが一斉に姿を見せた。
「うわぁ・・・これはこれは・・・いっぱいいますなぁ・・・」
マイルはうんざりといった顔をし、ボヤきながら剣を構えた。
すると、今までとは違いまるで逃げるかの様にコビー達の方へ一斉に走り出し、コビー達をすり抜けて行ってしまった。
「うわぁ!どんだけいるのよ!一気に出てきてゾワってしたじゃない!」
サニーは驚いたというより嫌悪感の方が大きかった様だ。
「もしかしたら新種の魔物かもしれない!慎重に行こう!」
コビーは全員の気を引き締め、先頭に立ちゆっくりと進んでいく。するとウェアラットを襲い食事をする1匹の魔物と遭遇した。
「うわぁ・・・グロッ!なんで魔物が魔物を倒すとドロップしないでそのまま餌になるんだろう?これもダンジョンの不思議ってやつかな?」
マイルは頭をひねりながら唸っている。
「とりあえず鑑定!・・・ワイルドボア?」
鑑定をかけてコビーが名前を呟いた瞬間、ワイルドボアがコビー達に気付き咆哮を上げる。
「ぷぎゅあぁぁぁ!!」
2m近い巨体に大きな牙が2本、短い4本足に平べったい鼻。イノシシ型の魔物ワイルドボアは咆哮と共に後ろ足を蹴り突進する準備をしているかに見えた。
「不味い!見つかった!みんな先頭準備!相手はワイルドボア!ランクはC!イノシシ型の魔物で突進して攻撃してくるから、なるべく距離をとって遠距離攻撃で攻撃!散開!」
コビーは早口でそこまで言うと瞬身でワイルドボアの後方へと移動し攻撃を開始する。
「エアスラッシュ!!」
コビーの放ったエアスラッシュがワイルドボアに命中し皮膚に傷をつけるが、気にする事なくマイル達に向かって突進して行った。
「みんな!そっちに行った!気をつけて!」
「「「了解!」」」
マイルは正面からサニーとアントニオは左右に分かれる。
「アースウォール!!」
アントニオが新たに覚えた魔法を唱えた瞬間。ワイルドボアの前に岩でできた壁が現れた。
ワイルドボアは勢いよくアースウォールに体当たりをしたがアースウォールを粉砕し更にマイルに襲いかかる。
しかし、流石に勢いの落ちたワイルドボアにマイルが攻撃を仕掛ける。
「じゃあ私も新技行っちゃうよ〜!ウィンドスタッヴ!!」
勢いの弱まったワイルドボアに向かいマイルが突進する。剣を前面に突き出し風を纏わせる。全体重を乗せた剣先をワイルドボアの眉間に向けて突き刺す。剣先は微妙に外れ鼻先を掠めるだけに終わってしまった。
「うわちゃ!外しちゃった!サニーよろしく!」
マイルはワイルドボアの横をすり抜けながらサニーに声をかける。
ワイルドボアは勢いが止まり今しがた傷をつけたマイルに向かい、咆哮を上げる。
「ぶぎゃぁぁぉ!!」
その瞬間マイルの身体が萎縮して動かなくなる。
「な・・・何これ・・・動きづらくなった?」
ワイルドボアはそれを確認したのかマイルへと突進すべく後ろ足を蹴り狙いを定め始めた。そして突進を始めたと同時に真横からサニーの魔法が突き刺さった。
「ファイアランス!!」
炎の槍が5本ワイルドボアに向かい飛来する。狙いを定めていたワイルドボアは避ける事叶わず直撃する。
「ぶぎゃぁぁ!!!」
辺りにワイルドボアの皮が焦げた匂いが充満するがまだ倒れない。狙いをサニーに変えて襲いかかろうとした所を瞬身を使い上方に現れたコビーが攻撃を仕掛ける。
「パワースラッシュ!!」
ワイルドボアの真上から全体重を乗せたコビーのパワースラッシュが首元に向かい振り下ろされ、剣が半分ほど食い込んだ所で、ゆっくりと横に倒れながらワイルドボアは黒い霧となって消え、肉と牙と皮が残されていた。
「マスターおめでとうございます。スキル「威圧」を獲得しました。」
「(は?何それ?威圧なんて誰も使ってないぞ?レベル上がって獲得したの?)」
「いえ。ワイルドボアが先ほど使ったスキルです。」
「は〜??!!ワイルドボアが使ったスキル?!!」
「なになに?どうしたの?!何かあった!?」
マイルがコビーの声に気づき駆け寄って来た。
「あ、いやごめんちょっと驚いちゃって。」
「?よくわかんないけど大丈夫?それよりドロップアイテム、肉と皮とあの立派な牙だったね!肉美味しいのかな!?」
マイルはドロッブアイテムの方が気になる様だ。
「(ちょっと待って?僕の物真似って魔物のスキルまで真似できるの?初耳なんだけど?しかも全く意識してないのに取れちゃうとか意味わかんないよ・・・。)」
「それに関しては私のおかげというやつです。マスター達が戦ってる間も魔物がスキルを使うかも知れないと思い、じっくりと観察しておりました。その結果というやつです。鑑定の際にマスターは気にしなかったみたいですがスキルが表示されてたのです。」
「(いや、気付いてはいたけどまさか覚えるなんて・・・)」
コビーは自分のスキルの異常さに改めて気付かされた。
「コビー?どうかした?このドロップアイテムしまってもらっていい?」
気付けばサニーが目の前で首を傾げていた。
「ごめんごめん。じゃあここに入れて。」
コビーは前にディメンションボックスの黒い箱を展開させる。そして入れと念じドロップアイテムを仕舞った。
「マイルごめん。ワイルドボアのスキルで威圧っていうのがあるの鑑定で見てたんだけど伝えられなかったよ。」
「あぁあの動きづらくなったやつ?まぁ確かにしんどかったけど怪我したわけじゃないし、あのタイミングじゃ余裕ないよ。気にしなくて良いよ?」
マイルは気にせずあっけらかんとしている。何事も気にしないタイプの様だ。
「これで一応任務完了にはなるのかな?どうしようか?まだお昼くらいだし森の奥までなんて来た事なかったから、みんなさえ良ければこのまま薬草探ししようと思うんだけどどうかな?」
「私は良いよ〜!他にも新種いるかも知れないし〜な〜んてね〜あはは〜。しかし、動いたからかお腹すいたよ・・・。」
マイルは苦笑いしながら言った。
「じゃあ見通しのいい場所探してお昼にしよう!」
コビー達は周りを気にしながら開けた場所を探して歩き始めた。




