初夜の前に言いたいことがあるんですの
「あの」
「なにかな?」
「初夜の前に言いたいことがあるんですの」
「なんだろう?」
「わたくし、転生者でしたの」
「てんせいしゃ?」
「前世は、日本という国で、ここは乙女ゲームの世界」
「うん」
「わたくしは、ソティー様を邪魔する人物のはずだったのですわ」
「なるほど」
「でも、わたくしは貴方に一目惚れして。どうしても結婚をしたかったのです」
「ありがとう」
「うん……それで、それで……」
「それで?」
「フ、フラグをたくさん折りましたの!」
「ふらぐね」
「本来であれば、貴方が死にかける場面で、わたくしの我がままで向かわせませんでしたわ」
「ああ、あの大雨になった日かな」
「ええ、大雨で馬車が転倒して、ご両親は亡くなり、貴方は命の危機に陥るはずでしたの」
「でも、両親はまだ生きてる。きみのお陰だったのか」
「それに、その後の領地問題も」
「ああ、領民からの不満で一揆が起きそうだった時だね」
「ええ、あれで貴方の力が発揮されるはずでしたの」
「でも、両親もいたし、事前にきみが聞き回ってくれたお陰で、問題点がすぐに解消できた」
「…………」
「何も悪いことは起きていないね?」
「でも、ソティー様は、とてもお可愛らしい方でしたわ」
「まぁ、そうだね、殿下とか宰相の息子とかは、婚約破棄とかで大変そうだったけれど」
「その、よろしかったんですの、わたくしで」
「なんで?」
「わたくしは、その、ソティー様みたいに可愛くもなく、つり目だし、全然素直でもなんでもないですもの」
「うーん」
「だから、だからっ」
「ねぇ、ライラ、こちらを向いて」
「いやっ!だって今、ひどい顔をしていますもの」
「ではこうしよう」
「……?」
「ライラはずっと嘘をついていたの?」
「ち、ちが!うそなんて!」
「そうだね。では、僕のことは好き?」
「…………すき」
「愛してくれている?」
「あ、愛しております!」
「僕も、だから、もういいよね?」
「!!」
お読みいただきありがとうございます。
よくある転生もの。