表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/40

39 戦勝報告



 レイ達はエドワーズ侯爵の居城、バレンタイン城に集まっていた。

 魔貴族の一体の戦勝報告とさらなる魔貴族の妥当に向けての作戦会議のためだ。

 なぜかアンジェだけは登城したくないということでふもとの城下町にいる。


「ほうほう。敵は卑怯にもボルケノの火山を噴火させたり、ダンジョンを冒険者の吸血鬼だらけにする罠をはってきたのじゃな」

「ええ。そうですかね」

「だがレイ殿は四大精霊の一角サラマンダーを鎮め、さらには吸血鬼化した冒険者がダンジョンから溢れ出ないための時間を日の出まで稼ぎ、そしてついには……」

「そしてついには……って言うほどの大冒険かはわかりませんが」

「レイ殿はまさしく英雄リクの再来じゃ!」

「あの……英雄の再来は気恥ずかしいので……」


 エドワーズ侯爵はワイルドローズの報告に大興奮し、ついにはレイを魔王ヴァサーゴを倒した二千年前の英雄に例えた。

 レイは小さく縮こまる。


「ふふふ。レイが英雄かどうかはわかんないけど、ギルドからの報酬もどっさり、エストレ地方での冒険者パーティーのランクもSランクになったね」


「さすがリンス殿、いやさすがワイルドローズです」


 リンスが嬉しそうに言うとグレンが首をウンウンと高速で上下に動かした。


「その分、苦労したけどね。冒険者共が吸血鬼になって襲ってきたり、眠らされそうになったり」


 ルシアが気だるそうに言う。


「何はともあれ伝説の七魔貴族の一人、怠惰のノエラを斬った。さすがはレイ殿。聖剣の英雄じゃ」

「聖剣の状態異常耐性効果で何とか。それと英雄は気恥ずかしいので、できれば辞めていただきたく」

「吟遊詩人を呼べ! ワイルドローズとレイ殿の聖戦を詩に残すのだ!」

「や、やめて~」


 エドワーズ侯爵とレイのやり取りの間に入ったものがいた。


「僕の言った通りだろう?」


 バレンタイン城の会食の間がシンとなる。

 アドレア伯爵、またの名を魔貴族サキュラの発言だったからだ。


「黙れ」


 エドワード侯爵の衛士ガーランドが言った。

 ガーランドはサキュラとはまさにここで死闘を繰り広げている。


「怖い目で見ないでよ~。実際にノエラはアルカサのダンジョンに居ただろう。ねえレイ」

「あ、あぁ。まあ、そうだな」


 魔貴族のノエラがアルカサのダンジョンの未踏階に居たのはサキュラの情報からだ。


「今ここで俺が貴様を斬れば、七人の魔貴族のウチ二人を斬ったことになる。残り五人で人類の脅威が無くなるというわけだ」

「ちょ、ちょっと待って。僕は今、魔神結界のスキルが封印されてるんだよ?」

「だからこそだ。前回は魔神結界にやられたこと忘れていないぞ」


 ガーランドが剣を抜く。

 サキュラがレイの後ろに隠れた。


「レイさん、解放の指輪で魔神結界のスキルを解放して! あ、やっぱりやだ。もっとレイさんと対の指輪を付けていたい」

「サキュラ、俺の後ろに隠れるな。ガーランドもやめろ。サキュラはまだ情報を持っているかもしれないだろ?」

「ちっ」


 自分が斬られたくないと必死に止めると、ガーランドは舌打ちをして剣を鞘におさめた。


「しかし、こいつはもう魔貴族がどこにいるかは知らないって言ってるぞ」


 ガーランドの言うようにサキュラは残りの魔貴族がどこにいるかを知らないという。


「ごめんね。本当に居場所を知らないんだ」


 レイはティファに聞いてみた。

 彼女は以前、魔王の存在を感じることができるというようなことを言っていた。


『私にもわかりません。サキュラ……さんの言うとおりだとすると魔貴族の本体は地獄に封印されていて、今あるのは影とか。だから反応が小さく遠くにいるとわからないのかも』

「なるほどね……」

『それに気になることがあります。かつて魔貴族は罠を仕掛けるようなことはほとんどしてきませんでした。ノエラの戦い方が気になります。サキュラさんに思い当たることがないかを聞いてみてくれませんか?』

「わかった」


 レイは皆にティファからのテレパシーを共有した。

 特にサキュラにはノエラの罠について思い当たることがないかを聞く。


「なるほどね~。あのティファちゃんがそんな風に思うのかあ」


 サキュラが満足そうに笑う。

 ティファは言いたがらないがリクの英雄戦記のはるか以前にはサキュラと敵対しているハズだ。

 その頃、人間は魔貴族から奴隷のように扱われていたらしい。


「どういうことだ?」

「言うなら魔貴族は人間を研究しているのさ。人間から学んでいるんだ」


 レイが聞くとサキュラがあどけながらこたえた。


「魔貴族はその強さ故にからめ手を使う必要なんて無かったのさ。だから、その手の術を人間から学んだのさ」

「卑怯な罠は人間から学んだと?」

「彼らも必死なんだよ」

「ボルケノ火山を噴火させたり、冒険者を大量に吸血鬼化させることを必死とかばわれたらたまらないぜ。お前やっぱり他の魔貴族の場所知ってるんじゃないか?」

「知らないよ。でも場所を知らないことは多分、問題じゃない」

「なんでだよ? 困るだろ」

「ノエラのやり方を見ても多分向こうから仕掛けてくるよ。聖剣の英雄を狙ってね」


 レイは罠もつかってくる魔貴族達に来るなら来いとは思えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ