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贖罪の蜜

 雨を感じられない人間もいるし、ただ濡れるだけの奴らもいる。

       ボブ・マーリー


















 第二牙【贖罪の蜜】














 「シャルルたちの様子はどうだ?」

 「相変わらずよ。ねえ、さっさとあいつらを追い出しましょう」

 「まあ待て。俺達のことを、もっと知らしめなければ意味がないんだ」

 シャルルたちを捕まえたギルイラたちは、椅子に座って紅茶を飲んでいた。

 「・・・ちょっとオーガ、もう少し音を立てないで食べてくれる?」

 メデューサが上半身を少し回して後ろを向き、テーブルを叩いて怒鳴った。

 その視線の先には、暗闇の中、蠢いているものがあった。

 ニット帽を被った男、オーガが、すでに死んでいる動物の腹を裂き、その中から臓器を取り出してガツガツと食べていた。

 気味の悪い光景だが、ギルイラもメデューサも慣れているのか、特に悲鳴をあげることはない。

 「それにしても、シャルルを捕まえられるなんて、幸先いいわね」

 「・・・・・・」

 「どうしたの、ギルイラ?」

 「・・・いや」

 ガタッと椅子から立ち上がると、ギルイラは階段を上って行ってしまった。

 階段を上った先には、幾つもの部屋があり、右奥のつき当たりにある、一段と古びた部屋に入って行く。

 ギィ、と重たい音を奏でながらドアを開けると、そこには誰かの肖像画に、ガラスで作られているシャンデリアが飾られている。

 埃の被った肖像画の裏を開ければ、そこには封の切ってある封筒があった。

 窓を開けると、久しぶりに開けたからか、少し力を必要とした。

 外の光が差し込まれると、床一面も埃まみれであることが分かる。

 窓の淵に腰を下ろすと、ギルイラは封筒を開けて中の手紙を読む。

 「・・・どうして俺達は迫害されなければいけないのですか」




 その頃、捕まっているシャルルたちは、そこから脱出しようと試みていた。

 とはいっても、主に動いているのはヴェアルとミシェルで、シャルルは何もしていないのだが。

 「ちょっと!どうしてシャルルはいっつもいっつもそうなのよ!私たちが一生懸命ああでもないこうでもないってやってるのに!」

 「お前等が勝手にやってるだけだ。なぜ俺が文句を言われなければならない」

 「ムキーーーー!!!!シャルルなんて、石のままにしておけば良かったのよーー!!あの時の私、なんて馬鹿なことを!!!」

 「はっ。俺を石のままにしておいたら、お前等間違いなくそのままジ・エンドだな。それに、俺は自分でなんとか出来たんだ。それをお前が勝手に」

 「また言った!聞いた!?ヴェアル!!シャルルってば私の親切を勝手にって・・!」

 「はいはい、ミシェル落ち着いて。シャルルもここから出る方法をだな」

 そのとき、シャルルがすうっと目を開けると、口を小さく動かしていた。

 それが何なのか、分からなかったが。

 しばらくすると、またシャルルは目を閉じて静かに寝てしまった。

 「どうして中にいると魔法が使えるのに、この檻には使えないのかな」

 ふと、ミシェルがヴェアルに聞いた。

 ヴェアルだって詳しいわけではなく、どちらかというと素人だ。

 だが、以前にも何度か、こういった状況に出くわしたことがある。

 「おそらく、檻自体に何か強い力がかかってるんだろう。檻を境にして、こっちとあっちの空間では、きっと魔法は使える。けど、境である檻には使えないんだよ」

 「そうなの?なんて檻!」

 納得したのか、ミシェルは箒をぽん、としまって壁に寄りかかって座った。

 唇を尖らせて、シャルルを睨みつけていたミシェルだが、急に寂しくなってきたようだ。

 「モルダンもハンヌも、私がいなくて大丈夫かなあ・・・。ご飯とかちゃんと食べてるかなぁ・・・。すごく心配」

 「ストラシスも心配だ・・・。俺がいなくて落ち込んでないかな。もしかして、寂しすぎて何処か遠くに行ってるなんてこと!」

 飼い主馬鹿が二人して、飼い主のことなんてこれっぽっちも心配していない彼らのことを想い、今日も寝不足になるのだ。

 飼い主が何処かに捕まってしまった状況においても、彼らはとても元気だった。

 『ご主人様たち、もしかして落ち込んでないかな。僕たちと会えなくて。泣いてるかもしれないよ』

 『ストラシス、わかりきってること言わないで頂戴。モルダンを見なさい。あんなに気持ちよさそうに寝てるわよ』

 「にゃー」

 モルダンは、いつもシャルルが寝ている棺桶の中に入って、ぬくぬくと身体を丸めながら寝ていた。

 その光景を見ていると、飼い主なのにシャルル以下の扱いをされているミシェルが、なんとなく可哀そうに感じる。

 どうしてシャルルなのかと言われれば、ミシェル以外はその理由が分かる。

 普段はジキルとハイドのことしか考えていないし、二人への愛情の注ぎ方といったら、異常とか言い様がないのだが、そのギャップが嬉しいようだ。

 なんだかんだと文句を言いながらも、面倒見が良く、何より、シャルルの腕の中は暖かくて気持ち良いのだ。

 『そういえば、ジキルとハイドは?』

 『何処かに行ったわ。きっと、前もってシャルル氏に何か言われていたのよ。さすがよね。私の御主人様とは違うわ』

 『僕たちの御主人様たちは、シャルル様がいるなら大丈夫だからね』

 そこに、バサバサと翼をはためかせながら、ジキルとハイドが帰ってきた。

 天井近くにある小窓から入ってくると、すぐにハンヌたちの方に飛んできた。

 『何処へ行っていたの?』

 『シャルル様に言われてお使いにいってた』

 『何処に捕まっているか分かったの?』

 『うん。けど、シャルル様が危ないから来るなって言ってた。そんなこと言われても、心配だから行きたくなっちゃうよね』

 その時、にゃー、という泣き声を共に、モルダンが身体をのびーとして起きてきた。

 足で顔を舐めながら、ぴょん、と棺桶を飛びだすと、ジキルとハイドのところにまで向かい、じーと見つめる。

 『何?モルダン』

 『お膝で寝たい』

 『それって、もしかしなくてもシャルル様の膝でってこと?帰ってくるまで我慢して?』

 『・・・嫌。今すぐ』

 『モルダン、我儘言わないの』

 『嫌』

 モルダンは、唯一空を飛べない。

 ゆっくりと歩き出すと、まずは第一関門がすぐそこにあった。

 ガリガリガリガリがりガリガリ・・・

 それは、シャルルの城の入り口でもある大きな扉だった。

 小さなモルダンでは開けることが出来ず、飛べないため、小窓からの脱出も不可能。

 「・・・にゃー」




 「・・・」

 急にゾクッと悪寒を感じて、シャルルは身震いをしながら目を覚ました。

 「どうしたシャルル」

 「・・・いや。視線を感じた気がしたが、気のせいらしい」

 「なんだそりゃ」

 ここに来てから、何日目の夜を迎えているのだろう、とはいっても、それほど日にちは経っていないが。

 地下なのか地上なのか、山の中なのか海の底なのか、それさえ分からない。

 だが、シャルルに言わせると、ここは塔の中にある牢屋らしい。

 「そういや、前にもあったよな。こういう危機的状況」

 「何のことだ」

 覚えていないのか、覚えていないフリをしているのか、シャルルは目を瞑ったまま。

 「小さい時さ、俺がどっかの売人に捕まって、シャルル助けに来てくれたじゃん」

 「覚えていない。たまたま通りかかっただけじゃないのか」

 「あんときは本当にピンチだったもんな。まあ、俺を買ったところでどうすんの、って話なんだけどな」

 ハハハ、と自嘲気味に話すヴェアル。

 小さい頃から、吸血鬼であるグラドム家には憧れを持っていた。

 産まれたときから血統として頭首になることが決まっていたし、力も文句なしで、絶対的な存在としてそこにいた。

 親から言われていたことは、二つ。

 「人間と仲良くするな」

 「グラドム家に関わるな」

 人間とは対立していたし、人間なんて自分勝手で、弱いくせに武力で戦おうとする、とても醜い生き物なのだと教えられてきた。

 グラドム家といえば、名門も名門。

 その一方で、彼らは人間との共存を考えていて、いつまでもいがみ合うことではないと、そう話していたのを聞いたことがある。

 当然のように、最初は誰もが反対していた。

 共存するメリットなんて無いとか、自分達に対する裏切り行為だとか。

 子供のヴェアルには、大人の会話なんてほとんど理解出来ていなかったが。

 「ねえ、何してるの?」

 シャルルのことを知らないある日、ヴェアルは一人の同じくらいの男の子に声をかけた。

 銀髪の癖っ毛で、両目は赤かった。

 黒い服に黒いマントを見て、吸血鬼だと分かるのに、そう時間はかからなかった。

 「・・・・・・」

 「あ!待ってよ!」

 ヴェアルのことを無視して、男の子は森の奥へと歩いて行ってしまった。

 懸命に男の子の後を追って行こうとしたヴェアルだが、いつの間にか見失っていた。

 その日から、ヴェアルは毎日その場所に行き、男の子に会おうとした。

 いつも何処かで見失ってしまっていたヴェアルだが、ある日、諦めて帰ろうとした矢先、沼があることに気付かず、足がはまってしまった。

 「!!!」

 そこには、見たこともない、気持ち悪い生物がいて、ヴェアルを沼に引きずり込もうとしていた。

 「たっ・・・たすけっ・・・!!ぶっ!」

 口元も鼻も沼に入ってしまうと、もう呼吸も出来なくなってしまい、腕を必死に伸ばしたところで、誰もいない。

 こんなところで死ぬ心算など全くなかった。

 狼男なんて、この世界ではあまりにも当たり前で、必要とされることがなかった。

 ただ、話相手が欲しかっただけ。

 意識を手放したヴェアルは、光をもう二度と見られないと覚悟した。

 「ごほっ・・・!ごほっ・・・?」

 心臓がドクンドクンと確かに動いていて、身体中泥だらけだが、自分は息をしているし、意識もはっきりしている。

 腕を動かしてみれば、自分の意思で動かすことが出来る。

 「?」

 あれ?と思っていると、声が聞こえた。

 「目が覚めたなら、さっさと起きてここから消えろ」

 身体を起こして声がした方を見ると、そこには自分が追いかけていた男の子がいた。

 思っていたよりも、というのは失礼かもしれないが、子供らしい少し高めの声だ。

 言ってることは可愛くないが。

 周りは大木で囲まれているが、綺麗な湖がそこにあって、手前は草原のようになっている。

 湖の近くに座り、片膝を曲げてそこに腕を乗せ、時折小石を湖に投げている男の子。

 「あの、君が助けてくれたの?」

 「もう二度とここには来るな」

 「ありがとう。良かった。死ぬかと思ったよ」

 「人の話を聞け。さっさと消えろと言ったんだ」

 「ねえ、ここの湖は安全?身体洗っても平気かな?」

 ヘラヘラと笑いながら、ヴェアルは湖に近づくと、来ていた洋服を脱いでばしゃばしゃと洗い始めた。

 会話が成立しないと分かると、男の子はふう、とため息をついて、それをただ見ていた。

 洋服を洗い終えると、ヴェアルは少しずつ湖の中に入っていき、身体を洗った。

 ここの湖はそれほど深くなく、水遊びが出来そうだ。

 水浴びを終えると、ヴェアルはいつも通りに狼男の姿になって、ブルブルと犬のように水を弾いて身体を乾かす。

 そしてまたすぐに人間の姿に戻ると、男の子の隣で平然と着替え始める。

 「俺、ヴェアル。君は?」

 「言う義務はない」

 「吸血鬼でしょ?ってことは、君はグラドム家なの?ああ、でも吸血鬼っていってもグラドム家だけじゃないか」

 「お前は本当に人の話を聞かない奴だな」

 一人でぶつぶつと何か言っているヴェアルに呆れ、男の子は帰ろうとした。

 「あ!待ってよ!」

 去って行きそうになった男の子のマントをギュッと掴むと、ヴェアルはにこっと笑った。

 「名前教えて!」

 「嫌だ」

 「なんで?」

 「知らん奴に教える義理はない」

 「ヴェアルって教えたよ?」

 「そういうことじゃなくてだな」

 そんなとき、遠くから声が聞こえてきた。

 「シャルル何処にいるんだ!」

 「ちっ」

 「シャルル?」

 バサッとマントを強く引っ張り、ヴェアルの腕からマントを解放させる。

 そして何も言わずにそのまま森の中へと消えてしまった。

 後に、あの男はグラドム家の跡取り、シャルル四世であることを知った。

 「あの時から、本当に変わらないよな、お前は」

 「お前もな。いつまでたってもお人好しだ」

 「そう考えると、俺達ってなんだかんだ、長い付き合いだよな?」

 「相変わらず話しを聞かんな」

 かみ合わない会話をしていると、そこにギルイラが現れた。

 「お付きがいなくていいのか」

 そう言ってみると、ギルイラはいきなり檻を強く掴んだ。

 シャルルを睨むようにしたあと、ぽいっとシャルルの方に何かを落とした。

 それは色褪せた手紙のようだ。

 「・・・・・・」

 その手紙を手にすることもなく、シャルルは見ていただけ。

 「シャルル、貴様の祖先が、俺の祖先に宛てた手紙だ。ここには、貴様等がどれだけ我々に悪行をしたかが記してある。これを読んで、せいぜい祖先を恨むことだな」

 それから少しシャルルを睨んだままだったギルイラだが、また去っていってしまった。

 手紙だけが残されたが、シャルルはそれを見ようともせず、ましてや手を触れようともしなかった。

 「シャルル、読まなくていいのか?」

 「なぜ俺が読まねばならん。そんな昔のことをほじくり返されても困る」

 「いや、そりゃそうかもしんないけどさ」

 「そんなに読みたいなら、お前が読めばいい」

 「え、いいの?」

 興味があったヴェアルは、床に落ちている手紙を手にすると、そーっと封を開けた。

 ところどころ文字が薄くなっているが、読めないことはなさそうだ。

 「えーっと」

 手紙の内容は、次のようなことだ。

 シャルルの祖先、それもずっとずっと前の、千年以上も前の祖先。

 彼には妻が数人いて、その中に一人が、なんと人間だった。

 周りにも反対されていたが、彼はどうしても彼女のことが忘れられず、彼女を妻とした。

 だが、人間がこちらの世界で生きて行くことなど出来ず、彼が人間として余生を過ごすことになった。

 すでに跡取りはいて、安泰だと思われた。

 しかし、人間は歳をとって老いていくのに対し、彼はほとんど歳を取らなかった。

 彼女は彼を追究し、彼が吸血鬼であることを知った。

 彼女は三〇になった頃病気になってしまい、その秘密を墓場まで持って行くことで、彼を守ろうとしたのだが、彼女が産んだのは、男児だった。

 彼は子を連れてこの世界に戻ってきた。

 そして正式な跡取りにしようとしたのだが、純粋な吸血鬼ではないその男児を、跡取りとして認めることは出来なかった。

 そんな彼は、過ちを起こしてしまう。

 それは、他の跡取りを殺すことだった。

 しかし、全員を殺す前にバレてしまい、彼は牢獄に送られたあと、処刑されてしまった。

 残された男児は、復讐に走った。

 だが、彼は詳しく知らなかったのだ。

 自分の父親を牢獄へと連れて行き、しまいには殺してしまった吸血鬼ではなく、モズマの一人を手にかけてしまったのだ。

 モズマは絶滅の危機にまで晒され、後少しのところで男児は捕まり、その場で処刑された。

 その殺されたモズマの中には、ギルイラの祖父祖母もいたらしく、それでギルイラはシャルルを恨んでいるのか。

 大体の内容を聞き終えると、まずヴェアルが言った。

 「逆恨みじゃん。シャルル全く関係ないし」

 確かに根源を作ったのはその男かもしれないが、だからといってシャルルを恨むのは間違っているのではないか。

 「まったくだ。その祖先も馬鹿なことをしたな。たかが人間一人の為に自分の人生を棒に振るとはな。人間とは浅はかなものだ。一時の感情に流される、愚かな生き物だというのに。それを分かっていながら人間と付き合うなんて、馬鹿げている」

 「でもシャルルだって人間の世界愉しんでたよね?」

 「そんなことはない」

 以前、とある学校の生徒として人間の暮らしをしていたが、それはただの暇つぶし。

 人間とはどういうものか、共存していくにあたって必要な情報を得るためだった。

 知能は低下しており、金には目が眩み、人間関係は希薄である。

 「人間って言えばさ」

 「なんだ」

 「友也っていたじゃん。覚えてる?」

 「友也?誰だそれは」

 「嘘でしょ。え、嘘でしょ。だって結構シャルル気に入ってなかった?本当は覚えてる?恥ずかしいから覚えてないとか・・・」

 「何か言ったか」

 「ゴメンナサイ」

 調子に乗っていたら、シャルルが赤い目を見開いていたため、ヴェアルは急いで謝った。

 今頃何してるんだろうねー、なんてのんきに言っているヴェアルに、シャルルは何の反応もしなかった。

 「んー」

 そういえば忘れていたが、ここにはもう一人、ミシェルがいた。

 女の子のはずなのだが、何の恥じらいもなく寝ていて、しかも寝相が悪いときてる。

 壁に背中をつけて寝ていたはずなのだが、今は逆で、床に背中をくっつけて、片足は壁に向けてあげていて、もう片方は膝を曲げた状態になっている。

 ゴロゴロとそのまま移動していき、端から端まで行って頭をぶつけていた。

 「いったァ・・・」

 その衝撃でようやく目を覚ましたらしく、起きたら当たりをキョロキョロ見ていた。

 「シャルル!何すんのよ!」

 なぜか、シャルルが殴ってきたと思ったようだ。

 「何もしてない」

 「嘘!私の頭叩いたでしょ!しかも私の身体で遊んでたでしょ!」

 「話にならん」

 「じゃなきゃ、あっちで寝てたのに、こんなところまで転がってくるはずないじゃない!本当に最低な男ね!」

 「殺すか」

 「シャルル、落ち着こうか。ミシェルは自分の寝相を自覚しようか」

 今にでもシャルルに噛みつきそうになるミシェルを止めて、ヴェアルが一通り説明をすると、ミシェルはあんぐりと口を開けていた。

 シャルルに謝罪をしたところ、二度と自分の前で汚い寝顔と寝相を見せるな、と言われたらしい。

 「それじゃあ、モルダンもハンヌも嫌になるだろうな」

 なんて止めを刺され、ミシェルは大ダメージを受けた。

 ミシェルを励ましながら、ヴェアルはシャルルに聞く。

 「あいつらも、どうして俺達をすぐに追放しないんだ?」

 「・・・まずは自分達の存在を見せたいんだろ。まあ、無駄な努力になると思うがな」

 「?」

 シャルルの言っていることの根拠がわからないヴェアルだったが、とにかく今はじっとここで待つしか出来なかった。




 「ギルイラ」

 「どうした?オーガ」

 「俺、別にあいつらとやりあう心算なんてない」

 「・・・ああ」

 「けど、お前が戦えっていうなら、戦う。人間は嫌いだけど、みんながみんな嫌な奴じゃない」

 オーガは、気の弱い奴だ。

 本当は戦うことなんて望んでいないし、人間と共存することにだって、周りがそれで良いというならそれに乗るだろう。

 それでも戦うのは、ギルイラを信頼しているからだ。

 ただオーガに産まれてきただけで、周りからは人喰いだと恐れられ、疎外されてきた。

 「それでも、人間はダメだ。奴らは俺たちの住処を奪い、全てを自分達のものにしないと気が済まないんだ。とても欲深い、哀れな生物なんだ」

 ギルイラの言葉に、オーガはただ静かにコクン、と頷いた。

 「ねえ」

 その時、メデューサが部屋に入ってきた。

 「なんだ?」

 「シャルルの城に、確かあいつらのペットが残ってたわよね?」

 「ああ。それがどうした?」

 「始末しておいた方が無難じゃない?」

 幾らただの動物とは言っても、奴らはシャルルたちのペットだ。

 他とは違うだろうと、メデューサは心配していたようだ。

 だが、ギルイラは特に気にせず、動物だとしても、例え知能が高いとしても、手出しは出来ないと言った。

 ギルイラに放っておけと言われると、メデューサも納得した。




 『モルダン、諦めなさいって。無事に帰ってきたら、好きなだけ膝で寝させてもらえばいいじゃない。御主人様嘆き悲しむと思うけど・・・』

 『嫌。今すぐ』

 『まったく。どうしてこんなにシャルル氏が大好きになっちゃったのかしら』

 『さすが僕たちの御主人様だね、人気者だ』

 『嬉しいような、寂しいような』

 シャルル人気が分かったところで、モルダンは今度は階段を上がって行く。

 どうやら、二階の窓から木へ飛び移り、そこから外に出ようと考えたようだ。

 しかし、それもみんなによって止められた。

 『モルダン、前にもそれをやって、怪我したの覚えてないの?』

 『危ないよ、止めた方がいいよ』

 『いじわる』

 『いじわるじゃないわ。モルダンに何かあったら、私は御主人様にどう説明したら良いのよ』

 『シャルルに会いたくて怪我したって言えばいい』

 『それが出来たら苦労しないのよ?』

 全く言う事を聞かないモルダンに手を焼いていたその時、重たい扉が少し開いた。

 誰かが来たのかと思っていると、そこから顔を覗かせたのは、みんなが知っている顔だった。

 『え?どういうこと?』

 「・・・にゃー」

 モルダンはその人影に向かって、慣れたように擦り寄って行った。

 だがすぐ、後ずさりをした。

 『モルダン?どうしたの?』

 「にゃあ・・・」

 その人影はモルダンに手を伸ばすが、モルダンは恐る恐る近づいていく。

 するとひょいっと身体を持ちあげられて、モルダンは抱っこされてしまった。

 最初は不機嫌だったモルダンだが、顎を摩られると、そのうちゴロゴロと喉を鳴らして喜んだ。

 一方、ジキルとハイドは少し距離を保ったままで、人影に近づこうとしない。

 だが、人影がモルダンを抱っこしたまま外へ出て行ってしまったため、ジキルとハイドも、ストラシスもハンヌも、後をついていかざるを得なかった。




 「それにしても、本当に貴様は阿呆なんだな。自分の飼っているのさえまともに懐けられないなんてな。あまりに可哀そうで見るに堪えない。だが人生というのは時に奇跡というものがあって、貴様にももしかしたら、万が一、懐くかもしれない。そもそも、俺のような格式高い男に懐くなど、余程の世間知らずか、それとも」

 「うるさあああああああああーーーーーーーーいいいいいっっっ!!!!シャルル、超偉そうなんだけど!いつものことだけど!あのねぇっ!!言わせてもらうけど、私は別にモルダンにもハンヌにも嫌われてるわけじゃないんだからねっっっ!!私より、ちょっとだけ、ちょーーーっとだけシャルルの方が好きなだけでしょ!?」

 「それが問題だな。何より、貴様がちゃんと見張っていないからあんなことになったんだろうが。それなのに反省もしないでのこのこと俺の城に来れる神経も信じられんな。喚くことでしか否定出来ないなら、元から貴様は好かれていないんだ。それを自覚したほうが良い」

 「きいいいいーーーっっ!!!なんてこと言うのよ!!!私だって本当はシャルルよりもずっとずっと好かれたいの!!だけどねぇっ、モルダンもハンヌも、特にモルダンは、なぜかシャルルの体温が好きなのよ!匂いが好きなのよ!おっさん臭いから近づいちゃダメって!!!低体温だから触っちゃダメって言ってるのに!!!!」

 「俺は低体温じゃない。それに貴様より遥かに美しい香りを身に纏っている。これは自負してるから間違いない」

 「自負なら間違ってるかもしれないじゃない!なんでそんなに自分に自信があるのよ!自信過剰なんじゃないの!?ふん!シャルルなんか、豆腐の角で頭ぶつければいいのよ!」

 「何を言っている。馬鹿か貴様。豆腐の角で頭をぶつけても、何の支障もきたさない。いや、きたすな。この漆黒の服が汚れてしまうな」

 「もう嫌!シャルルとまともな会話が出来ない!どうすればいいの!冗談さえ通じないなんて、私心が折れそうよ!てか違うの!折れてるの!実際にポキッて心やっちゃってるのよ!」

 「意味不明だ。もう俺に話しかけるな」

 「ヴェアルーーーーー!!!!なんでこんな奴と私腐れ縁なんだろうね!!!さっさと切れてほしいなぁ!!!!」

 「勘違いするな。俺と貴様は腐れ縁なんてものはない」

 「じゃあ何よ!もしかして、シャルル・・!!私のこと、女として見てたのね!?だからあんな厭らしい目で見てたんだ!」

 「話にならん。貴様はただの下僕だというのに。胸糞悪いことを言うな」

 「二人とも、とりあえず黙ってくれる?俺、寝たいんだけど」

 充分に睡眠を取ったミシェルは、すっかり元気になっていた。

 シャルルはもともと夜行性だからなのか、もともと睡眠時間が少ないのか、ミシェルが五月蠅くて寝れないのか、起きていた。

 一方のヴェアルはまともに寝れなかったため、現在進行形の二人の言い合いによって、寝られずにいた。

 放っておいてくれれば、まだ寝られたのかもしれないが、ミシェルがヴェアルを味方につけようと、ずっとヴェアルの腕を掴んでいるのだ。

 「ジキルとハイドなんて、焼鳥にしちゃうから!あっかんべー!!!」

 「!おいミシェル!それだけは止めておけ!お前本当に殺されるぞ!!」

 「え?」

 ついつい勢いに任せて言ってしまったミシェルに、ヴェアルが慌てて口を塞いだ。

 二人揃ってシャルルの方を見てみると、シャルルからは只ならぬオーラが出ていて、窓も無いこの檻の中で、風が吹いた。

 このままでは二人とも危ないと判断すると、ヴェアルはあっさりミシェルを見捨てる。

 「ミシェル、謝れ。お前が謝れば丸く収まる」

 「えええええ!?そそ、そうなの!?だって、私悪くないもん!シャルルが先に喧嘩売ってきたんじゃない!!」

 「だとしてもだ!!このままじゃ、俺達シャルルにやられるぞ!」

 しぶっていたミシェルだが、シャルルの目つきが変わったため、ゆっくりとシャルルの前に正座になる。

 そして、深く土下座をする。

 「す、すみませんでした」

 「・・・・・・」

 「ごめんなさい」

 「・・・・・・」

 何を言っても、返事をしないシャルルに、ミシェルは思わず泣きそうになる。

 顔を上げずに、ひたすら謝る。

 「もう言わないから!ジキルとハイドを焼鳥になんてしないから!しない!絶対にしない!焼いたって美味しくなさそうだし!!絶対不味いし!!それに、見た目も悪そうだもんね!そうよね!シャルルは愛情持って食べられるとしても、私達は無理!頼まれても無理だから!焼鳥は好きよ?美味しいしヘルシーだからね!けど、やっぱりこう、蝙蝠ってなるとジャンルが違うっていうか、なんかえー?ってなるじゃない?美味しく無さそうだし。うんうん。幾らシャルルに頼まれても、土下座されても、やっぱり蝙蝠は無理かな!それに、シャルルはお肉っていっても、ステーキでしょ?牛が一番好きなんでしょ?なら、蝙蝠よりも牛でも買って、自分で育ててステーキにした方が新鮮で美味しかったんじゃない?ああ、でもどっちにしても私は食べないからね!だって一番は鶏が好きだから!豚はちょっと脂っこいからいらないかなー。それよりもね、最近シュークリームにはまってるの!外がサクッとしてて、中のクリームがとろっとほわっとしてて、そりゃあもう最高に美味しいんだから!けどねー、ちょっとお値段高めなのよねー。お財布事情が分かってないなーっていう値段なんだけど、でも美味しいからご褒美に時々買って食べちゃうの!内緒ね!ふふふふ!!!」

 「・・・・・・」

 謝る論点がズレていただけではなく、話も大幅にズレていくが、ミシェルはそれに気付かずに話し続ける。

 そんなミシェルの様子を見て、ヴェアルもシャルルもはあ、と大きなため息を吐く。

 「どうしてこうも女というのは話が長いんだ」

 「シャルルがそれ言うの?」

 「それにしても、そろそろこの檻の中も飽きてきたな」

 「飽きてきたなっていっても、出られないんだから仕方ないよ」

 ヴェアルが狼男の姿になって、何度か檻を壊そうと試みたが、壊せそうなのに、何らかの力によって全力が出しきれない。

 ミシェルの魔法も同じように。

 飲みものと、少しの食料は運ばれてきていたから、空腹も免れた。

 しかし、よく思い出してみると、食べていたのはヴェアルとミシェルだけで、シャルルは飲み物を少し口にしただけだ。

 「そういや、シャルル腹減ってないの?」

 「俺は別のもので水分も栄養もとれるからな」

 「・・・・・・えええええ!?まままままままさか、俺の血とか吸ってないよな!?」

 「お前の血なんて飲みたくもない」

 「良かったー」

 ホッと安心したところで、ミシェルの演説が中断した。

 そしてまたモルダンとハンヌのいない寂しさからか、部屋の隅に移動していじけてしまった。

 「あら、元気ないじゃない」

 「・・・・・・」

 そこに現れたのは、ギルイラたちだった。

 メデューサは目を開いているが、きっと檻の力によってシャルル達は石にはならない。

 メデューサに気付くと、ミシェルが一目散に駆け寄って睨みつけた。

 「あんたねぇ!!!ここから早く出しなさいよ!あんたなんて、私がけちょんけちょんにしてやるんだから!!」

 「ふふ。お子ちゃまねえ。あなたなんかにやられるはずないでしょ?」

 「なんですってぇぇぇぇぇぇえ!!!」

 ふと、メデューサがシャルルの方を見る。

 そして胡坐をかいて胸の前で腕組をし、目を瞑っているシャルルに近づく。

 ヒールを履いているため、カツカツ、と大人びた足音を立てながら。

 「シャルル、私はあなたのこと、気に入ってるのよ?強いし、素敵だし」

 「・・・・・・」

 「あんた、目ぇ腐ってんの?」

 「あなたが私達の側について、人間との共存を止めるというなら、この子たちは助けてあげてもいいわ。それから、あなたたちのペットちゃんもね」

 「・・・・・・」

 「ペットちゃんじゃないわよ!可愛い可愛い私のファミリーよ!」

 「それにしても、こうして間近でみると、本当に綺麗な顔してるのね。ギルイラも綺麗な顔してるけど、あなたも負けてないわ」

 「・・・・・・」

 「ねえ、だから本当にあんた目ぇ大丈夫?視力悪い?良い眼科教えてあげようか?」

 「ミシェル、こっちこい」

 会話になっていない二人の会話に入っているミシェルを呼ぶと、ヴェアルはその口に手を置いて塞いだ。

 ふんがふんがと唸っていたミシェルだが、しばらくすると静かになった。

 「シャルル、これからは俺たちと一緒に人間を倒そう。奴らを滅ぼして、俺達の世界を作るんだ」

 「・・・・・・前にも、そんなことを言っていた奴らがいた」

 メデューサとは一言も話さなかったシャルルが、ようやく口を開いた。

 だが、目は閉じたままで、ギルイラの方を見ようともしない。

 「ミラーたちか・・・。ふん。あんな奴らと一緒にいないでほしいな。奴らは何の計画もなくお前達に挑んだ大馬鹿者だ。理想だけを追い求めた、可哀そうな奴らだ」

 「そうか?俺からしてみれば、貴様等もミラーたちも同じようなもんだな。いや、ミラーたちの方がマシかもな」

 「・・・なんだと?」

 すうっと目を開けると、腕組を止めてシャルルは立ちあがった。

 ギルイラの前に立つと、シャルルはギルイラよりも背が高いことが良く分かる。

 太陽ではなく、月のように静かに輝く銀色の髪に、不気味なほどに美しく光、赤い両の目は、見ているだけで吸い込まれそうだ。

 「あら、やっぱり良い男ね」

 ペロッと舌を出して、自分の唇を舐めるメデューサの仕草はなんとも色っぽい。

 それに敵対心を持っているのはミシェルだけだが。

 「貴様らには欠けている何かを、あいつらは持っていた。それは例え、戦いに役に立たないものだとしてもな」

 「何を言っている?我々の誘いを断るというなら、すぐにでもお前等を追放してやるぞ」

 「追放したければすればいい。したところで、俺がお前より強いことに変わりはないし、俺はお前等のことなんてこれっぽっちも気にしてはいない。勝手にライバル視されて、迷惑なのは俺の方だ」

 「え、私困る」

 そんなミシェルの声なんて聞こえないフリして。

 ギルイラたちの顔を一通り見たあと、シャルルは鼻でふんっと笑った。

 「まだ分かってないようだな」

 「なに?」

 余裕そうなシャルルに苛ついていると、何か物音がした。

 「何かしら?」

 「メデューサ、見てきてくれ」

 ギルイラに言われ、メデューサは言われた通りに物音がした方へと歩いていく。

 しかし、そこには誰もいなかった。

 「?何だったのかしら」

 そう思っていると、ふと、足下に何か暖かいものがいることに気付いた。

 顔を下げてみると、そこには真っ黒な姿をした猫がいた。

 「猫・・・?」

 黒猫などどこにでもいるだろうが、どこかで見覚えのある猫だった。

 猫だけでここまで来たのだろうかと思っていると、続いて黒い烏が飛んできた。

 「なに?」

 フクロウ、そして蝙蝠も入ってきて、メデューサは自分の目を使って石にしてしまおうと考えた。

 だが、メデューサの目は、名を受け継ぐごとに弱ってきており、動物全てを石にする力は持っていなかった。

 「邪魔するぞ」

 「へ・・!?どういうこと!?」

 ダダダダ、とメデューサはギルイラのもとまで走って行くと、乱れた息を整える。

 「メデューサ、どうした?」

 「はあっ・・・!ギルイラ!シャルルよ!シャルルが・・・!」

 「?シャルルならここにいるだろ?」

 「何処にいると言うのだ?」

 こつこつ、と足音を鳴らしながらやってきた、黒に包まれた男。

 銀色の癖っ毛の髪に、赤い目。

 紛れもなく、檻の中にいるはずのシャルルの姿と瓜二つだった。

 「どういうことだ!?なら、この中にいるシャルルは・・・!?」

 檻の中にいるシャルルに目を向けると、ニヤリを笑った。

 「まさか・・・!お前はミラーか!」

 「馬鹿な奴らだ。ヴェアルとミシェルは捕まっても、俺が捕まるはずがないだろう」

 「ちっ!!!」

 その間に、ジキルとハイドが檻の鍵を開けて、三人を解放した。

 「ミラーを囮に使うとはな!」

 一方で、ミシェルは首を傾げていた。

 「あれ?ミラーって、言葉話さなかったよね?」

 「鍛錬によって俺達は進化出来るんだよ。だからじゃないか?」

 ミラーがどんな鍛錬や訓練をしたのか分からないが、とにかく、確かにミラーは話すことが出来ていた。

 そうなると、もう区別がつかないくらいに。

 ヴェアルたちも感心していると、今まで一緒にいたシャルルが口を開いた。

 「ミラー、もういいぞ。助かった」

 「な・・・!?」

 シャルルがそう言うと、もう一人のシャルルは背中を向けて歩き始めた。

 「どういうこと?シャルル」

 「貴様等は馬鹿か。見ての通りだ」

 「もう頭ん中ぐちゃぐちゃだけど」

 つまりは、捕まっていたシャルルは本物のシャルルで、助けに来たシャルルが偽物だったというわけだ。

 シャルルは捕まることを想定して、ジキルとハイドにこう伝えていた。

 自分がいなくなったら、ミラーたちに連絡を取る様にと。

 シャルルが口パクをしていたのは、ジキルとハイドに超音波で連絡を取っていたのだ。

 「待てミラー!お前もこいつらと一緒に永遠に追放してやる!!!」

 そう言って、背を向けたミラーを捕まえようとしたギルイラだったが、ミラーはすうっと姿を鳩に変えると、上の方にある窓から脱出した。

 「ミラー様、御無事で」

 「ああ、もう役目は終わった。帰るぞ。シレ―ヌ、ガウラ」

 「「はい」」




 「逃げられたか」

 「わーーーーん!!!モルダン!会いたかったよおおおおおおおおお!!!ハンヌーーーー!!!!無事だったのねーーー!!」

 「ストラシス、ちゃんとご飯食べてたか?」

 舌打ちをしているギルイラの後ろで、ミシェルとヴェアルは感動の再会をしていた。

 ジキルとハイドをチラッと見ると、シャルルは安心したようにギルイラへと視線を戻した。

 「ミラーたちと手を組んでたのか」

 「手を組む?違うな。奴は自ら協力すると言ったのだ」

 「そんなわけないだろ?あいつらだって、お前たちとは因縁があるはずだ」

 納得していないのか、ギルイラはシャルルを睨み続ける。

 「まあ、俺の人望、ということだ」

 「それは違うと思うけどね」

 メデューサもオーガも、こちらに身体を向けて殺気を放っている。

 「シャルル、悪いけど、この不気味な女は私の相手だからね」

 「勝手にしろ。興味ない」

 出来るだけ目を合わせないようにと、ミシェルは視線を逸らして近づく。

 「甘いわね」

 メデューサの髪の蛇が伸びて動きだすと、ミシェルの足元は崩れていき、気付くと外に出ていた。

 「決着つけましょう。お譲ちゃん」




 「てことは、俺はこいつなのかな?」

 「・・・・・・」

 ふう、と息を吐くと、ヴェアルはザワザワと身体を震わせて、狼男の姿へと変わる。

 ソレを見て驚くこともなく、オーガはただ悲しそうな顔をしたまま、ヴェアルに向かってくる。

 ドカン、と大きな音を立て、建物が崩れるのではないかというほど、オーガはヴェアルを巻き込んでこちらも外へと出て行った。

 「ミラー様、大丈夫でしょうか」

 「・・・シャルルには手を出すなと言われてる」

 ミラーはシャルルたちが戦いを始める塔を眺めて想う。

 「そうだろ、シャルル」



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