きゅう ありがとう、ごめんね。
18:00
満員電車の中に僕はゆられてた。
会社の後輩の女の子に誘われた花火大会、
普段から仕事でよく話しかけてくれる子だ。
「突然、誘ってごめんなさい」
「いや僕も花火大会とか久しぶりだし、楽しみだよ」
「そっかぁ、良かったです」
後輩の女の子は嬉しそうに微笑んだ。
「おっと」
満員電車でフラつきそうな後輩を支える。
後輩の肩をとっさに引き寄せた
「気をつけないとね」
後輩はちょっとうつむき気味でこくりと頷いた。
僕は彼女の気持ちを知っている。
「ごめんなさい、慣れない下駄なんて履いてしまって」
照れたように僕に笑顔を向けた後輩は可愛いかった
今日は鮮やかな朝顔の浴衣を着ていて
彼女の雰囲気にとても似合っていた
電車が花火大会のある駅に着く
「うーん、やっと着きましたね〜」
僕と後輩は伸びをして花火が見れる川沿いへ歩く
彼女は嬉しそうに微笑みながら歩く
今日で最後にしよう
「あ、着きましたよ」
彼女がそう言った瞬間に花火が打ち上がる
同時に僕の方に振り向いていた。
花火を背景にした彼女の笑顔がとても眩しかった。
僕はその笑顔に切なくなる
二人並んで次から次へと打ち上がる花火を見ていると
ふと、彼女は僕の袖を掴んでいた。
視線は花火を見たまま
涙を流していた。
彼女は僕の気持ちを知っている
彼女が会社で出会った
僕の唯一の理解者だったから。
君の気持ちに応える事が出来なくてごめん
ありがとう。
こんな僕を好きになってくれて
ありがとう。
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静かに穏かに夏の夜が過ぎていく
夏の匂いがする
ふと見上げた
君の横顔が
少し切なそうに見えた
ごめんね、君の気持ち知ってるのに好きになって
ありがとう。
この思いは夏と共に終わらせるから。
ありがとう…。