じゅう 花束の老人
21:32
夜の空が優しい。
何年も僕は待ち続けた
何年も俺は待ち続けた
何年もワシは待ち続けた
「もう、待ちくたびれたよ」
花束を持った一人の老人が電車の中でつぶやいた。
涙がでそうな目は溢れる涙をこらえてるのがわかる
老人は花束を大事そうに抱えながら、電車から見える夜の景色を眺めていた。
いつもの駅で老人は降りた。
真っ暗の中で消え入りそうな老人の姿を何故か僕は
放っておけず、慌てて降りた。
老人はホームの椅子に座り、大事に抱えた花束に涙をこぼしていた。
花束は老人の涙を浴びながら、月明かりの中で光って見えた。
「僕は…知ってます」
「そうか…」
「この花束を渡しといてもらえないか」
老人は僕に両手で丁寧に花束を差し出す。
「それはあなたが自身で渡すものです」
「…ずっとワシは待ってたんだがな、一向に音沙汰がなくてね…」
僕の目から涙が出てきた。
「何で…何で…待ってるだけなんですか…」
「彼女はね、僕から会う事は出来なかったんだよ」
そういう約束だったことも知っていた。
だけど…
「僕はあなた達の間に生まれ幸せでした」
老人は優しく微笑んだ。
僕はその場でぼろぼろと泣き崩れた。
待ち続けた僕の夜はいつも優しかった。




