ギャルゲーの世界編③
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(西日が差し込む放課後の教室)
降旗
「(それにしても珠希さん遅いな。
まあ彼女は曲がりなりにも美少女、いや美人だから構わないけどこれがアニアとかいう沙悟浄だったらとっくに帰ってるぞ…ん?)」
降旗
「やあ珠希さん」
珠希
「待たせてごめんなさい、色々とやることがあったの」
「転校してきたばかりだし用事もあるよね。全然待ってないから気にしないで」
「ああ、別に構わないよ。それでどこに行くの?」
降旗
「(だから何故選択肢がYESしかないんだ? これによってエンドが大きく左右されるのか? それとも好感度が上下するのか?
聞きたいこともあるしこっちでいいや)」
→ 「転校してきたばかりだし用事もあるよね。全然待ってないから気にしないで」
「ああ、別に構わないよ。それでどこに行くの?」
珠希
「そう言ってもらえると助かるな。それで今日はお洋服とか雑貨とか色々買いたいんだけど…」
降旗
「あの、そのことなんですけど…それはもうちょい先のイベントでは?」
珠希
「イベント?」
降旗
「ああそうか役に徹してるのか」
*一時停止*
降旗
「幾ら何でも早急すぎますよこれは。ギャルゲーではこれが普通なんですか?」
珠希
「普通なわけないだろ。さっさとことを片付けないと私が作り出したスーパーヒロイン様が出てくるから早急に珠希ルートを完結させようと思っただけだよ」
降旗
「スーパーヒロイン? もしかしてその子超可愛かったりするんですか?」
珠希
「この私がそんなものを作ると思ったか? 攻略難易度ウルトラCでしかもよく見るとブスが出てくるんだよ」
降旗
「それって最悪ですね。でもそれならただそいつと関わりを持たなければいいのでは?」
珠希
「ただのギャルゲーならな。
だが考えてもみろ、お前は一度好きになった人をころっと忘れられるか?」
降旗
「いやあ、流石にそれはできませんね。俺もまだ前の彼女引きずってますし」
珠希
「お前元カノいたのか…まあいい。
そういう甘っちょろいギャルゲーの世界に浸るキモオタ共に現実を見せるために作ったんだ。
人一倍嫉妬はするくせに攻略が面倒、それによく見ると不細工という女の現実をな。」
珠希
「だがオーダーのせいで物語は明後日の方向へ向かってしまったわけだ。
だからさっさと片付けてこの世界でヤってハッピーエンドとしようじゃないか」
降旗
「俺に相談しないでそんなことを…てかなんでヤらなきゃならないんですか。普通はキスで終わりでしょうに」
珠希
「なーに甘いことを、ギャルゲーのヒロインや主人公だって人間だ。性欲くらい溜まるんだぞ。あの後にはヤってるんだよ。
てか私が相手では不満か? やっぱり現役JKの方がいいのか?」
降旗
「そういうことじゃなくてですね……あまり言いたくないですけど酒の飲み過ぎなのか最近元気がないんですよ」
珠希
「おっと、それは悪いことを聞いたな」
降旗
「そういう反応が一番傷つくんですよ…ってそうじゃなくて、この展開は早すぎるんですよ!」
珠希
「この世には出会って5秒で合体する人間もいるんだからへーきだよ。さあゲームの世界に戻るぞ」
*再開*
降旗
「よ、洋服を買いたいのか。駅前に行けばあるとは思うけど俺はそういう店を知らないよ?」
珠希
「お洋服は異性の意見も大切なんだから着いてきてくれるだけでいいのよ。それじゃあ行こう」
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(駅前の小さな洋服店にて)
珠希
「どう、似合うかなこれ?」
降旗
「ああうん、似合うんじゃないかな(グラフィックが制服のままだから全く判断がつかねえ。これだからテキスト式は…)」
珠希
「じゃあこっちはどう?」
降旗
「(だからグラフィックは制服のままだろ! さっきとどこがどう違うんだよ!)うーん、個人的にはさっきの方がいいかな」
珠希
「そう? じゃああっちにしようかな」
鼻歌まじりで再び服を選び出す珠希。
結局降旗がチョイスしたものを買った。
珠希
「それじゃあ次は雑貨屋さんに…降旗君?」
降旗
「珠希さん、あれ見てください。うちの高校の女子生徒がチンピラに絡まれてる」
珠希
「本当だ…ん? まずい降旗! ここから逃げるぞ!」
降旗
「は? 一体どうしたんです?」
珠希
「あいつが件のスーパーヒロイン様だ! 早く逃げないと巻き込まれる!」
「助けに行く」
「助けに行く」
珠希
「ほらきた。こうなる前に片付けたかったのに」
降旗
「全く同じ答えが二つ、しかも選択肢を出されてる以上逃げれない……そうだ! この選択肢と選択肢の間を選べば答えは『空白』となるのでは」
珠希
「そんな某ハンター試験みたいな答えが許されるわけないだろ! さっさとそちらか選べよ!」
降旗
「くっそーどっち選んだって俺がボコボコにされるだけじゃないか」
→ 「助けに行く」
「助けに行く」
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(夕暮れの路地裏)
降旗
「(やっぱりボコボコにされた……身体中がズキズキする……)」
???
「あ、あの…先ほどはありがとうございました」
降旗
「べ、別に気にしなくてもいいよ。当然のことをしたまでだ」
???
「そういえば貴方の制服…もしかして同じ高校ですか?」
降旗
「ああそうだよ。俺は二年の降旗錦、君は?」
真紀
「私は三年二組の片瀬真紀です。この度はどうも」
(真紀、降旗に笑顔を向ける)
降旗
「(うわあ、よく見たら高校生のくせに厚化粧だな。顔はキャンパスじゃないんだから化粧道具でお絵かきするなよ)」
珠希
「さ、三年ということは私達の先輩ってことですね。私は彼と同クラスの定兼珠希といいます」
真紀
「はいよろしく。二人とも今日は本当にありがとね」
(何事もなかったかのように去っていく真紀)
降旗
「それにしても、高校生のくせになんですかあれは。あの人は芸術家か何かですか?」
珠希
「あれが現実の女だ。こうなった以上目を逸らさないでしっかりと向き合うことだな」