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推理の世界編③

前回の反動で少し短いです。そしてどんでん返しです。

昼になっても相変わらず窓の外には曇天が広がっていた。ダイニングでは天才たちが何やら楽しそうに騒いでいるのだが降旗達にそんなことは関係ない。


「ぐおぉ…………飲み過ぎと睡眠不足で頭が痛い……降旗ぁ、水をくれ……」


「そりゃ日本酒をラッパ飲みしたらそうなりますよね。はいどうぞ、水です」


珠希は重度の二日酔いによりベッドの上で四苦八苦していた。

それにしても酒で一度過ちを犯しているというのに何故自制ができないのだろうかと降旗は首を傾げる。

ちなみに彼が珠希に渡した水は実は焼酎だったりするのだが全く気付かず一気に飲み干した。


「ふう、そろそろ私達も動くとするか」


「やっと捜査を始めるんですね? 俺たちの証言のせいで美咲さんが天才たちに疑われてたり大変らしいですよ」


「らしいですよって、お前が見てきたんじゃないのか?」


「いやー俺もついさっきまで寝てましたから」


「仕事しない助手とか史上最低のワトソンだな」


「大股開いてベッドに寝ている珠希さんには言われたくないですね。いいから俺たちも捜査をしに管理人室に行きましょう」


「いや、あっちは奴等天才共に任せておけばいいだろ」


珠希はそう言うと降旗に手を差し出した。

その意図をすぐに理解した彼は彼女の手を掴み一気に引き上げる。


「おっと、酔いが回っているかのような立ちくらみが………レディはもう少し丁寧に扱ってくれないかな」


「俺は紳士的な方なんですけれどもね。ところで現場に行かないでどこへ行くんですか?」


「どこにも行かないよ。私達はここで捜査を始めようじゃないか」


珠希はベッドの下をニヤニヤしながら漁り始めた。

自分の部屋でやられているわけでもないのに凄いドキドキするのは気のせいだろうか、そんなことを考えていると珠希は勢い良く何かを引っ張り出した。

彼女の手に握られていたのは至って普通の本であった。だがそれはこの世界で決して触れてはいけない禁断の書物。


「これこそがこの物語の『台本』だ」






『今畑任三郎vs桐下右京vs新中川コナンvs銀田一少年!局と次元を超えた豪華スペシャル!(以下略)』


この物語がテレビで放送されたらこんな感じのタイトルが付けられるらしい。

テレビ朝日のゴールデンタイムによくある謎のスペシャル番組みたいな名前だなというのが率直な感想だった。


「っていやいやいやいや!! 俺達の存在が微塵にも感じられないじゃないですか!! 銀田一はともかく新中川って意味が分からないんですけど!!」


「新中川は多分川の方の江戸川をもじったんだろう。あとは説明が面倒臭いしこの台本を読んでくれ」


「はあ………えっ、この事件って薄井親子の狂言だったんですか?」


「そうらしいな。死んだことになった薄井母ならアリバイを気にせずに中井を殺せるというのが今回の要らしい。十五年前になんやかんやあって、今も金をせびられてたらしい」


「やっぱり同情の余地がある犯人なんですね。それにしても出演者が豪華な割りに随分とこじんまりとした舞台ですね」


「そんなことないぞ。確かに第一夜の舞台はこのペンションだが第二夜はそれぞれの舞台で事件が起きて、それがこの事件の糸口になるらしいぞ」


「さらっと言いましたけどこれって二部構成だったんですか?」


「原作者が原作者だから特別待遇なんだよ。犯人も分かったことだしとっとと捕まえに行くぞ」


珠希はそう言うとさっさと鞄を持って部屋を出て行こうとする。降旗も慌ててついて行こうとして、そこで気づく。


「えっ、もう事件解決しちゃうんですか?」


「当たり前だろ。薄井母の居場所も十五年前の事件も全部分かったんだぞ」


「金田一とコナンとの絡みとかなくていいんですか?」


「そんなお約束的展開必要ないだろ。さっさと事件解決してさっさと飲もうぜ」


「いやちょっと待って下さい。俺達って一応探偵ですよね? 見かけだけでも捜査くらいしておかないと八百長疑われますよ」


「まあ落ち着け。とりあえずちゃんと台本を読んでみろ」


「はあ……えっ、俺達って途中でしかも中井に殺されるんですか?」


「らしいな。まあ題名に名前も入ってないし仕方が無いだろう」


「仕方が無いって、俺達殺されたら物語が終わっちゃうじゃないですか」


「だからその前に手を打とうと言っているんだ。時に降旗は『デウス・エクス・マキナ』という言葉を知っているか?」


「まあそこそこは。超デカいロボット的なラスボスですよね」


「それはアニメの世界の話だな。『デウス・エクス・マキナ』は古代ギリシャの舞台で使われてた技法のことだ」


「ああ普通の『機械仕掛けの神』ですか。物語の途中で突然神様が現れてなんやかんやで物語が終わるってやつですね」


「その通り。今回の作戦は私達が殺される前に神様を演じてしまおうというものだ」


突然の意味不明な作戦にパードゥン?と降旗は中学一年生男子が使う英単語ランキング一位に輝くであろう単語を駆使する。


「中坊かお前は。殺される前に犯人暴いてさっさと終わろうってことだよ」


「俺達が殺されるのは第二夜の最初ですよ?そんなことやったら尺が足りなくなるじゃないですか」


「お前は自分の命より番組の尺の方が大事なのか? それに33分は持たせたはずだぞ」


「だからちょっと前のネタを使うのはやめて下さい。それにこれは二夜連続ですから33分だけでは尺が持ちません」


「うるさいなーじゃあお前だけ死ぬか?別に私はお前が死んでも変わりを捕まえてくるだけだから構わないぞ?」


「へえ、そうですかそうですか」


今度は降旗がニヤニヤしながら自身の鞄を漁り何かを取り出した。

彼の手に握られていたのは至って普通のノートであった。だがそれは決して触れてはいけない禁断の書物。

どうやら珠希はそのノートに見覚えがあるらしく顔がどんどん赤くなっていく。


「5月21日 生まれて初めて逆ナンに成功した。どうやら年下のようだけど」


「分かった!! ちゃんと説明するからもうそれ以上はやめよう!!」


それは珠希の乙女心がつらつらと書かれている日記であった。

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