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第一話で出すのを忘れていました。主人公たちの名前です。

ヒーロー:岡野淳哉、ヒロイン:牧田紘乃



早速お気に入り登録や評価をして下さった皆様、ありがとうございました。お陰さまでランキングに入ることができました。

今後ともよろしくお願いします。



 牧田さんに恋をしたものの、俺は何もできなかった。というか認めたくなかったというのもある。

 自意識過剰と言われるかもしれないけど、俺はそこそこ目立って少なからずモテると思っている。その俺が、牧田さんみたいな大人しくて地味で真面目な子を好きになるなんて何かの間違いじゃないかと、往生際の悪い俺はこの気持ちを否定してしまうのだ。

 しかし、毎日教室でなんとなく牧田さんを目で追い、そのたびにはっとして視線を逸らすという不審な行動に悩むわけで。そんなこんなであっという間に牧田さんに話しかけることもできずに夏休みになってしまった。

 サッカー部の俺はそれなりに練習があるけど、牧田さんの所属する家庭科部は五回程の活動日しかなかった(全部活の活動日が一覧になったプリントが配られたから知っただけで、こそこそ調べたわけではない)。これが運動部だったらもっと学校で会えるチャンスがあったのに…。

 というわけで夏休みは無為に過ぎて行った。夏祭りにも行ってさりげなく探したけど、牧田さんを見つけることはできなかった。


 二学期になっても一人で悶々と悩む日々が続き、とうとう俺は仲のいい友達に牧田さんが好きだと言ってしまった。その時の反応といえば、「なんで?」だの「マジで?」といった感じで、こいつらにとっても意外な相手だったみたいだ。まあそうだよな、何しろ俺が一番驚いているんだから。でも誰かに言ったことで気持ちが楽になったのも確かだった。

 ただ、教室に戻った時に偶然にもあの時と同じように膝を怪我していた牧田さんを見て、ねちっこくからかわれてしまい、やっぱり言わなきゃ良かったと後悔した。



 さて、自分の気持ちを友達に言ったことで多少心が軽くなったからといって、俺が牧田さんに対して何か行動できたかといえば、そうではない。相変わらず教室でこっそりと牧田さんを盗み見るという、なんとも情けない毎日だった。

 だけど最近、気のせいかもしれないが、牧田さんと目が合うことが多い。俺の視線は相変わらずふらふらと牧田さんに吸い寄せられているのだが、結構な頻度で牧田さんの猫みたいな綺麗な目とぶつかるのだ。…これってもしかしてそういうこと?なんて期待してしまう。男なんて一回目が合うだけで「こいつ俺のこと好きなんじゃね?」とか考えてしまう馬鹿な生き物なのだ。それが何回も続いた俺の心境は察してもらえると思う。

 それでもやっぱり自分じゃ判断できないから、一番信用できる友人の橘に相談してみた。こいつは学年一のイケメンで、勉強だってスポーツだってできる、その上性格までイイという男の俺からも羨ましい限りのモテ男である。

 最近牧田さんとよく目が合うこと、やっぱり彼女が好きなのかもしれないということを話してみれば、橘はあっさりと言い切った。


「それってかなりアリなんじゃない?そんなに気になるならもう告っちゃえばいいのに。」


 まあ簡単に言ってくれる。でも俺自身も「実は牧田さんも俺のこと…」とかちょっと、いやかなり思ってたから、橘の言葉で背中を押してもらえた気がする。

 牧田さんに告白…頑張ってみようかな。


+:+:+:+:+:+



 結果から言おう。俺は牧田さんに告白することすらできなかった。

 しかし俺にも言い分はある。まずはそれを聞いて欲しい。


 あれは橘との会話から数日後。牧田さんにいつ言おういつ言おうと機会を窺っていた頃だった。登校中は誰に見られるかわかったもんじゃないし、教室内なんてもっての外、家に行ったり電話なんてもっとハードルが高い。それに牧田さんはケータイを持っていないみたいだからメールも無理。ここは古風にラブレターか?いや、それを渡すのを考えたらまたふりだしだ。あーどうしよう。


「おい淳哉、牧田さん一人で実験室に忘れものしたって取りに行ったぞ。チャンスチャンス!」


 マジで運が回ってきたと思った。よし、今ならいける!

 橘のにやっとした顔を尻目に、俺は教室を飛び出した。実験室までは廊下のつきあたりの階段を上ってすぐ。待ってて牧田さん!


 だけどその時―――


「――――――紘乃ちゃん。」


 誰か(確実に男)が牧田さんを呼ぶ声が聞こえた。

 名前で呼ぶだと?俺の牧田さん(予定)に軽々しく声掛けるなんて!俺だって名前で呼びたい。ぜひとも「紘乃」と呼び捨てさせてほし…って今はそんな妄想してる場合じゃなかった。

 こっそり階段を上がりながら聞き耳を立ててみると、相手の男は生徒会長の杉崎のようだ。「何してるの?」「実験室にペンケース忘れちゃって。」なんて会話をしている。そのうち内容は生徒会の話や今度のテストへと移り変わり、いい加減俺はイライラしてきた。

 折角のチャンスなのに!こうしている間にもどんどん時間は過ぎて、あと少しで昼休みも終わってしまいそうだ。でも次にいつこういう機会が巡って来るかも分からない。いっそのことここで牧田さんを呼べば杉崎が空気読んで教室に戻ってくれるかも、なんて考えていた時だった。牧田さんの口から信じられない言葉が飛び出したのは。


「将太くん」


 ああ、ちなみに将太っていうのは杉崎の名前だ。流れでわかったかもしれないけど。

 信じられなかった。他の学校ではどうだか知らないが、少なくともうちの中学で男女がお互いを名前呼びしているというのは、つまり「そういう関係」という暗黙の了解がある。ということはだ…牧田さんは杉崎と付き合っている?まさかそんな。きっと何かの間違いだ。

 恐る恐る階段を上がって廊下から二人の様子を見てみれば…少し顔を赤くして俯いた牧田さんの姿が。


 終わった。俺の恋終わった。


 きっと恥ずかしがり屋の牧田さんのことだから、付き合っているのは皆には内緒なんだ。同じ生徒会だもんな。一緒に仕事をしているうちに、好きになっちゃうことだってあるよな。


 なんだよ、俺の出番なんてないじゃん。一人で浮かれて馬鹿みてえ。



 

 そうして、浮かれていた過去の俺自身への八つ当たりのように、その日たまたま告白してきた隣のクラスの女子と付き合うことにした。


 

「――――――紘乃ちゃん」


 理科実験室の扉に手をかけたところで声をかけられた。振り向けば、そこにいたのは生徒会長の杉崎将太くん。そして、私の友達の薫ちゃんの彼氏でもある。

 生徒会室によく遊びに来ていた薫ちゃんに将太君がアプローチし続け、ようやく最近になって彼氏彼女となった二人なのだ。でもお互い恥ずかしいからという理由で、皆には付き合っていることは内緒。


 昼休みが終わるまでにはまだ時間があったので、将太君と話し込んでしまった。授業やテストの話、今度家庭科部で作るもの、そんな些細なことを話しているとふと考えてしまう。


 岡野君ともこんな風に話せたらいいのにな。


 その時唐突に将太君に聞かれた。


「紘乃ちゃん、好きな人できたでしょう?」


 小声だったけれど、この近い距離では破壊力満点の問いだった。

 なんでわかっちゃったんだろう。まだ薫ちゃんにも言ってないのに!



 

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