八話 ずっと君を待っている
投稿遅くなりました。
では、楽しんで頂けたら、私とても嬉しいです。
亜紀はあいつが嫌い。
いつも亜紀に意地悪するから。
でも・・・もし亜紀に、お兄ちゃんが居たら、いちろう見たいな人なのかな?
ちょっと前に、夢を見たの。
あいつが消えちゃう夢・・・悲しい夢。
だって・・・いちろうの背中しか見えない。
いちろう・・駄目だよ・・・消えちゃ、やだよ・・・。
だから亜紀は確かめるの。
亜紀は毎日、一郎に会いに行く事にしたの。
一郎の部屋前に行き、背伸びをして呼び鈴を押す。
いちろうが出てこない。
鍵が開いていた。
恐る恐る扉を開ける・・・
部屋には・・・誰も居なかった。
亜紀は部屋に入る。
一郎の部屋に始めて入った。
寂しい部屋、テレビと机、座椅子と布団、後・・・少しの服。
いちろう・・・消えちゃったの?
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・
・
コンビニで買い物に行ってきた。
今日一日の食料は買い込んだ、これだけあれば、24時間は篭城出来るな。
さてと、帰ったら何するかな・・・と言ってもこれと言って趣味の無い俺がする事なんて、だらけるか寝るかのどっちかだ。
一応、テレビも有るんだけど、見るのは天気予報くらいだし、他に興味もない。
ただ・・・音が無いと寂しいから・・・テレビは調度いいんだ。
刀・・・手入れしに行こうかな・・・。
いや、まだ良いや・・出来るだけ、あのアパートに居よう。
何時、居られなくなるか・・・分からないから。
朝起きれば、洋一さんに逢えて。
秋子に馬鹿にされて。
亜紀に意地悪して。
それ位しか、俺にできる事は無いけど。
それが・・・俺のたった一つの幸せなんだ。
友達との殺し合いが無いと・・・俺は生きていけないけど・・・
あの家族だけが・・・俺の唯一の・・・幸せなんだ。
此処は・・・孤独しか感じられないけど、幸せを感じる事が出来るんだ。
・・・自分で何言ってるのか、訳分かんねぇ~や。
・・・でも・・許されるのなら・・・此処に・・・居たいな・・・ずっと。
一郎はアパートに着く。
・・・あれ、鍵かけ忘れたかな?
まあ、良いけど盗む物なんか、俺の部屋に何も無いし。
一郎はドアを開け、中に入る。
「い・・ち・ろう・・」
「うわ!? おま、何で居るんだ?」
「いちろう・・消えてない・・・の?」
その時の鈴木は冷静だった。
「警察に行こう、不法侵入だ」
亜紀は泣き出した
「うっ・・う、うっ・・いちろう・・馬鹿・・」
「お、おい・・泣くなよ・・・そして馬鹿とはなんだ、馬鹿とは」
なんだ・・何故泣いてるんだ?
ま、まさか・・・警察?
「警察は嘘だ、むしろ子供を部屋に連れ込んだって、俺が捕まる」
それでも亜紀は泣き止まない
「ばか~! いちろうのばか~! 死んじぇ~!!」
「な、なんだと、馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!!」
「そして俺は死なない!!」
「死んじゃ駄目~! いちろう死んじゃやだ~!!」
「え、あ・・それはありがとう・・・」
何なんだ?
「・・うっ・・ばか~!」
「こら、馬鹿も取り消せ!」
「ばか~!」
何で泣いてるんだ?
理由が分からん一体何が起こってる?
自慢じゃないが俺の部屋には子供に悪影響を及ぼす物なんて、1つも無いぞ。
・・あ・・・一つ有った・・・俺か?
「分かった・・俺が出てくから・・」
「行っちゃ駄目~!!」
俺じゃないのか・・・分かった秋子か!!
「秋子に怒られたのか、良し!! 俺が秋子を怒って来てやる、ちょっと待ってろ!!」
「駄目~!!!」
うがー!!!! 訳分からん、誰か助けてくれ!!!!
そうだ・・・秋子に電話だ
・
・
・
あいつ電話に出ろよ~!!
亜紀は既に泣くを通り越して、叫ぶに成っている。
「な、なあ何で泣いてんだよ?」
「言いたくない~!!!!!」
数十分後・・・亜紀は何とか落ち着いた。
「・・うっ・・うっ・・うっ・・・」
亜紀は壁にもたれ掛って、泣いている。
こう言う時、どうすれば良いんだ?
爺さん・・・俺が泣いていた時・・・どうしてたっけ?
・・・・俺、爺さんの前で泣いた事・・・あったけ?
考えろ・・・考えろ・・・考えろ・・ ・ ・
暫し時が流れて・・・
鈴木は、突然立ち上がり台所に向かう。
俺は料理なんて出来ない。
ヤカンに水を入れて、火を灯す。
亜紀はボーっと鈴木を眺めている。
少しして音が鳴る
さっきコンビニから買ってきた袋から、俺のお気に入りの元祖を取り出す。
それに熱湯を注ぎ、蓋をして3分待つ。
その間に鈴木は何かを探す。
・・・確か・・ここら辺に・・・お、あった。
コーヒー等を飲むコップだ。
俺は何時もペットボトル、ラッパで飲むから使った事がない。
スポンジと洗剤で、綺麗に洗う。
3分たったので、蓋を開けコップにスープと麺を分ける。
あまり体に良くないらしいけど・・・少しくらい良いよな・・・俺は、これ食べ続けてるけど体に異常ないし・・・たぶん。
鈴木はそれを持って、亜紀の隣に座ると
「ほらよ・・・」
亜紀にコップを渡す。
亜紀は既に泣き止んでいた
「なに・・これ?」
「お前、ラーメンも知らないのか?」
「ラーメンはお店で食べるんだよ」
こいつ・・・まさか、インスタント食べた事・・無いのか?
「カップラーメンだ、お湯入れて3分で出来る」
今世紀最大の発明だ、俺がノーベルだったら賞を与えるね。
亜紀に割り箸を渡す
亜紀はコップに割り箸を入れると麺を啜る。
「こら、まずはスープからだ、だけど沢山飲むなよ、知らんけど体にあまり良くないらしい」
俺は、何時も残さず飲んでるけど・・・しめにご飯入れてる。
「・・・あまり美味しくない・・・」
な、俺の一番のお気に入りに・・酷い。
「店のラーメンと比べるな、これにはな開発者の血と汗と涙が入ってるんだぞ」
まったく最近の子供は・・・。
「そんなの入ってたら、病気になっちゃうよ」
「入ってない、例えだ・・・例え」
鈴木もラーメンを啜る。
「君が不味いって言った物を、俺は毎日食ってるんですけど・・・開発者にも俺にも失礼だろ、まったく」
亜紀はラーメンを食べながら
「いちろうも家で一緒にご飯食べようよ、おばあちゃんや、ママのご飯の方がもっと美味しいよ」
「へ~ 秋子も飯つくるのか・・・って、当たり前か」
「亜紀からママに頼んで上げようか?」
無理言うな、家に入る事すら・・・俺には出来ないんだよ。
「いや、良いよ・・・俺は、これで十分だ・・・」
そう言うと亜紀は茶化すような顔で
「いちろう照れてるの?」
「・・・違うよ・・・亜紀の家は・・・遠くから眺めている位が・・・俺には調度いいんだ・・」
「良く分かんないよ」
「分かんなくて良いんだよ」
「・・・」
亜紀は文句を言いながらも、スープを残して全部食べた。
「なあ・・亜紀・・」
「・・なに?」
「飽きたら・・家に・・帰れよ」
「・・・うん」
少しだけ話をして、亜紀を大家の家まで送っていく。
2人は玄関にたどり着く。
「いちろう・・・今日は・・・部屋に居る?」
「ああ、篭る・・」
「明日は?」
「さあ、多分居ると思うけど」
「ずっと・・・居る?」
「・・・そんな先の事は、分からんよ」
「・・・」
亜紀は俯いてしまう。
なるほど・・・この前の、夢の事か。
・・・何時も・・・ふざけた事しか言ってないから・・・嫌われてると思ってた。
やばい・・・泣きそう。
「なあ・・・亜紀・・」
亜紀は顔を上げる
「俺は・・・何処にも行かないよ・・・言っただろ・・此処しか帰る場所・・・俺には無いんだ」
「・・・本当?」
「・・ああ」
「約束だよ」
「・・約束だ」
「やぶっちゃ、メだよ」
「俺が嘘ついた事あるか?」
「いちろう、うそしか言わないもん」
・・・そうだっけ?
「今回は本当だ」
「うん」
亜紀と別れる。
俺は・・・駄目な大人だな・・・最低だ・・・。
・・・もし・・・その時が来たら・・・亜紀にだけは・・・ちゃんと別れを告げよう。
うんと嫌われて・・・嫌な奴として・・・亜紀の記憶に残るんだ。
・・・出来ないかもしれない・・・だって俺は・・・嘘つきだから・・・
場面が変わる。
昼飯時。
秋子は、亜紀を見る
「亜紀お腹、空いてないの?」
「うん、いちろうにラーメン貰ったの」
・・・あの馬鹿・・お昼前に、亜紀に何食べさせてるんだか。
「ちゃんとスープ残したよ」
「え、ああーそう言うことか、そうだね良くないって言うね、カップラーメンのスープ」
「うん」
「ねえ、ママ」
「なに?」
「いちろうね、何時もカップラーメンしか食べてないんだって」
「・・・想像出来たけど、やっぱりね」
まあ、一郎が料理してる姿なんて、想像しただけで気持ち悪くなるけど。
「ママこんど、家にいちろう呼んで、一緒に食べようよ」
「ん~ たぶん一郎・・・嫌がると思うよ・・・」
「大丈夫だもん、いちろう・・・きっと一緒に食べるって言うよ」
いちろう・・・嫌がってたけど、嬉しそうだったから・・・。
「うん、分かった・・・今度、お母さんから言って見るね」
亜紀は嬉しそうに笑顔を見せた。
食後、亜紀は居ても立っても居られず、一郎にその事を伝えに行こうとした。
今日、いちろう部屋に居るって言ってた。
玄関で靴を履き、外に出る・・・。
其処には・・・・知らない男の人が立っていた。
だれ、この人?
なんか・・・怖い・・・。
「君が亜紀ちゃんかな?^^」
「・・・」
「そんなに怖がらないでよ^^」
「・・・や」
「ちょっと、手伝って欲しい事があるんだ^^」
「・・・いちろう・・」
「手荒な事はしないよ^^」
「・・・たすけて・・」
「ちょっと・・・誘拐するだけだから^^」
亜紀は眠りに落ちる。
「そうだな、要求は・・・一郎君・・・かな?^^」
「それさえ貰えれば、この子は帰すよ・・・」
「楽しみだな、一郎君どう出るかな?^^」
でも・・・今の君は要らない・・・僕たちが欲しいのは・・・・化け物になった君だ。
その為にも、一つやって貰う事があるんだ。
あの人と逢えば・・・君はきっと・・・人である事を捨てる事が出来る筈だ。
小林は静かに歩き始め・・・外に止めてあった車の後部座席に乗り込む。
車は当たり前のように、走り始める。
時刻は15時。
一郎は何時ものように眠っていた。
部屋に呼び鈴が鳴り響く。
起き上がり、ドアに向かうと扉を開く。
「なんだ、秋子か・・・なんか用か?」
「ねえ、亜紀来てない?」
「俺は、さっきまで寝ててお前に今起こされたんだよ」
「亜紀何処にも居ないのよ・・・」
「近所の友達の家じゃないのか?」
「それなら私に一言いうもん」
しょうがないな・・・。
「とりあえず、お前思い当たる場所探したり、友達の家に電話して聞いてみろ」
「俺はここいら周辺探して見るから・・・それでも見つからなかったら警察だ」
秋子は深刻そうな顔になる
「・・・・」
「まずは行動しろ・・・後悔するのはその後だ・・・」
一郎・・・あんた何でそんなに・・・冷静なのよ・・・。
「洋一さんにも連絡しておけ」
「うん・・・わかった」
秋子と別れ一郎は外着に着替える。
・・・・亜紀が・・・居なくなった・・・嫌な予感がする。
くそっ、気持ち悪い・・・速く探しに行かないと。
一郎は周辺を探して周る。
だが、探して見たけど、見当たらない・・・一度、秋子の所に戻ろう。
大家の家の前で、立ち止まる・・・。
今はこんな事している場合じゃない。
感情を無理やり押さえつけて、玄関を開ける。
「あきこー!」
少しして秋子が出てきた。
「なんか変わりはあったか?」
秋子は首を横に振る。
「おばさんは?」
「町内会の旅行」
「洋一さんに電話したか?」
「直ぐ帰るって・・・」
どうする・・・もう一度、探しに行くか・・・
「亜紀と最後に会ったのは何時だ?」
「お昼ご飯が終って、亜紀と宿題してたから・・・・13時30分過ぎかな・・・」
「なんか思い当たる会話とか無いか、行きそうな場所の手がかりとか?」
秋子は思い出そうとする。
「そういえば・・・・家で一緒に、あんたとご飯食べたいって言ってた・・・」
「・・・・」
今は感情を殺して冷静に成らないと・・・・
「俺もう一度、自分の部屋と、アパート見て来る」
「私も行く」
二人で自室に向かう。
・・・灯台もと暗し・・・であってくれ・・・
二人は部屋の前へ、鍵を開け中に入る。
俺は部屋の隅々を探したが見当たらない、もっともこんな狭い部屋に探す場所なんてそんなにない。
秋子は部屋に立ち、辺りを見渡してる。
「じろじろ見るな・・・恥ずかしい」
「・・・・あんた・・・恥ずかしいって・・・」
一郎の部屋には・・・何も無かった・・・。
テレビと布団、机と座椅子・・・クタクタの服が少し散らばってるだけ。
私なら、こんな場所に何年も居られない・・・漫画も雑誌も何も無い。
「こんな場所で・・・一郎生活してるの?」
「今はそんな事、言ってる場合じゃないだろ」
そんな事は分かってる・・・亜紀を探さないと。
その時だった、床に置いてあった携帯が振動する。
一郎はそれを拾い上げ携帯を開く。
其処には・・・・
『君は・・・何時まで・・・其処に居る積もりだい?』
暫く・・・動きが止まる・・・
遂に・・・その時が・・・来てしまった。
「・・・・・秋子・・・話がある・・・」
「・・・何よ・・・」
「・・・此処じゃ駄目だ・・・お前の家に行こう・・・」
「・・何で?」
問いに答える事もなく、一郎は勝手に歩き始める。
秋子は黙って後を追う・・・。
家に着いた・・・秋子は上がるように促すが、一郎は断る。
秋子が問う
「・・・話ってなに?」
「・・・亜紀は誘拐された・・・」
秋子の表情に怒りが宿る。
「・・・・また何時も見たいに、ふざけてるの・・・・今回は本気で怒るよ・・・」
だが一郎は、怯む事なく
「・・・警察には言わない方がいい・・・余計に話がややこしくなる」
「・・・・」
「相手の要求は・・・俺だ・・・俺が行けば・・亜紀は帰ってくると思う・・・」
「・・・・説明してよ・・・」
「・・・・」
「ちゃんと全部説明してよ!!!」
「・・・今回の事は全部、俺の責任だ・・全ての罪は俺に有る」
「そんなの説明じゃない!!! あんた何時もそう!! そうやって全部隠す!!!!」
「・・・・」
「あんた何者なの!!!」
「俺は・・・」
「なんでこうなったの!!」
「・・・一郎・・・裏で・・・何してるの・・・」
「私が気付いてないって思ってたの!!!」
「あんたの何年、幼馴染して来たと思ってるのよ!!!!」
「教えてよ・・・ちゃんと・・・教えてよ」
「・・・すまん・・・」
「謝らないで!!!」
「・・・あんた・・・そのまま行ったら・・・居なくなる積もりでしょ・・・」
「私・・・消えたら・・・許さないから・・・一郎のこと絶対に許さないから!!!」
「亜紀と・・・帰ってきたら絶対に全部説明して・・・」
「・・・俺は嘘つきだ・・・約束なんか出来ない・・・」
・・・バシン!!!
ビンタされた・・・心が痛い・・・・。
一郎は秋子に深く頭を下げる。
今までありがとう・・・
楽しかった・・・
ごめんなさい・・・
・・・・・さようなら・・・・・・
秋子は泣きながら。
「速く行っちゃえ・・・」
鈴木は玄関を閉める。
声が聞こえた
「一郎の馬鹿ー!!! ! ! 」
・・・俺の所為だ・・・全部・・・俺の・・・。
分かってたんだ・・・此処に居ては・・何時か巻き込むかも知れないって。
でも・・・俺は、自分の事しか考えてなくて・・・あの家族を巻き込んでしまった。
・・・亜紀を・・・亜紀だけは・・・何とか助けなくては。
・・・こんな命要らない・・・どんな罰を受けようと・・・亜紀だけは・・・・。
男は走り出す・・・。
まずはボロビルまで行かなくては。
駅に向かって走る。
もう直ぐで駅に着く、その時だった。
「一郎君!!!」
「亜紀はどうなったんだ!!!」
「・・・洋一さん・・・」
「・・・君は・・・何処に行くんだ・・・」
「亜紀は・・・必ず・・・連れ戻します・・・」
「・・・」
「今回の事は・・・全て俺に責任があります」
「俺が行けば・・・亜紀だけは・・・絶対に此処に・・・」
「・・・・亜紀は・・・今無事なんだな?」
「・・・奴らの要求は俺自身です・・・亜紀に手を出す事は無いと思います」
「・・・・」
「君が裏で何をしているのか・・・今は聞かない・・・絶対に帰ってくるんだ」
「帰ってきたら君を殴る・・・だから絶対に帰ってくるんだ!!!」
一郎は答えない。
「・・・約束してくれ・・・」
一郎は自分の掌を見る。
洋一に自分の掌を見せる。
「本当は気付いていたんです・・・俺に・・逃げ場なんて・・・何処にも無いんです」
一郎は無表情で
「俺は、泣く事が出来るように成りました」
「笑うことが出来るように成りました」
「本当の幸せを・・・知る事が出来ました」
「洋一さん・・・貴方が居なかったら・・・俺は、ただ堕ちていくだけでした」
「貴方の存在に・・・俺は救われました・・・」
「・・・俺は・・・貴方に受けた恩を・・・仇で返してしまった」
「・・・・亜紀だけは・・・必ず・・・」
・・・俺の・・・命に代えても・・・
一郎は歩き出す。
洋一が道を塞ぐ・・・
「・・・君を・・・行かせる訳には・・・いかない」
「俺が行かないと・・・亜紀が・・・」
「他に何か・・方法が・・・」
「・・・・どいてください」
洋一は動かない。
「僕も君と行く・・・それが条件だ・・・」
一郎は動揺する
「洋一さん・・・あんたに何かあったら・・・誰が・・今後、秋子と亜紀を護るんですか」
「君はどうなるんだ!!!」
「君は僕達の前から消えるのか!!!!!」
「もう沢山だ・・・あんな想い・・・頼む・・・僕も行かせてくれ・・・」
「亜紀が誘拐されたのは・・・俺の所為なんだ」
「亜紀は僕の娘だ!!!」
「それに・・・君だけの所為じゃない・・・僕は・・君を日常に連れ戻そうとした」
「それが亜紀や、秋子を巻き込んでしまう可能性があると分かっていたんだ・・・」
「今回の責任は・・・僕にもあるんだ・・・」
一郎は目を閉じる・・・駄目だ、洋一さんを行かせる訳にはいかない。
「このまま・・俺と行けば・・・二度と戻って来れません」
「亜紀は巻き込まれた・・・俺が何とかすれば、此処に戻ってくる事が出来ます」
「でも・・・貴方が・・自ら望んで、この道に片足を踏み入れたら・・・」
「奴ら・・・組織は貴方を、絶対に離したりしません」
洋一は黙って話を聞く
「もし・・・無事に帰ってこれたとしても・・・組織は貴方を一生、逃がしたりしません」
「今・・・秋子は家に1人で居ます・・・秋子をお願いします」
「亜紀は・・・絶対に此処に帰します・・・貴方達、両親の居る場所に」
洋一は口を開く
「君は・・・消えるのか?」
「君は・・・僕の兄さんのように・・・居なくなるのか」
「亜紀は君の事を、兄の様に慕っているんだ!!」
「・・・僕の兄さんが、消える前の日・・・僕は兄さんに我侭を言って怪我をさせた・・・」
「君は残された者の気持ちを考えた事はあるのか?」
「僕は自分の所為で兄さんが消えたと思っている」
「亜紀は・・・自分が誘拐された所為で・・・君が消えた・・・そう考えるかもしれないんだぞ!!」
「約束だ・・・絶対に・・・帰ってくるんだ・・・」
「亜紀を頼む・・・僕は秋子と待っているから・・・」
一郎は・・・
「亜紀は必ず・・・2人の下に・・・」
そう言うと静かに歩き始める。
洋一は彼の後ろ姿を見ながら叫ぶ
「僕は待っているからな!!!!」
「毎朝、ずっと待っている!!!」
「あの場所で君をずっと待っているからな!!!!」
・・・ずっと・・・君を・・・待っている・・・
とある廃工場・・・。
男が1人、その場に立っていた。
歳は60前後、その瞳には狂気が宿っていた。
すでに何年も前に、人で在る事を捨てた男。
「・・・鈴木君・・・もう直ぐだ・・・もう直ぐ始まるんだ・・・」
「・・・我等の・・・一時が・・・」
その時・・・君は・・・人間のままで居られるか?
小僧・・・全てを捨てて・・・鬼となれ・・・
それがお前に、ただ一つ残された道・・・剣の道だ・・・・。
夜が来る・・・深い闇が街を包み込む・・・
今までにない・・・暗く・・・深い・・・・夜が来る・・・・
その時、彼の中で何かが・・・壊れる・・・
おわり
此処まで読んで頂、ありです。
次回は最終話になりますが、その前に外伝?を投稿しようと思います
秋子目線で、小3~この作品の一話までを短いですが書いて見ました。
もう出来てるので直ぐに投稿します。
それでは、そちらも宜しくです。