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三話 夜が来る









21時・・・


暗い部屋の中・・・中心に置かれた机の上、


一本の蝋燭を、黙って見つめている男がいた。







もうこんな事を1時間は続けていた。


始めの内は、目玉が動いていたのが時間が経過するに連れ、次第に動かなくなる・・・瞬きすら減ってくる。


やがて・・・その瞳の奥から鈍い光がほんの少しだけ増す・・





人格が変わった訳ではない・・・何時も、事が始まる前に行う儀式の様なものだ。


ただ・・スイッチを切り替えただけ。


日常から・・・何かへと・・




男は静かに座椅子から立ち上がると服を着替え始める・・・・別に変わった事ではない、部屋着から外着に成っただけだ。



男は着替えが終ると、そのまま何も持たずに部屋から出て行く。


アパートの敷地内に大家の家が在る。


男は、その家の窓から漏れる光を・・・暫く遠い目をして眺める・・・



再び・・・此処に・・・戻って来れる事を・・


・・・祈ろう・・・


この儀式も毎回やっている。



「・・・さて・・行くか・・・」


そう言うと男は静かに歩き始めた。















時刻は21時15分・・・


男は歩く・・何処かに向かって。


俺は知り合いが少ないが・・こう言う時・・知人に会うのを嫌う。



しかし・・






「・・・洋一さん・・・・」


「鈴木君じゃないか」


「今、帰りなんですか?」


「・・・ん・・ああ、今日は長引いちゃって・・・」


「そうですか・・何時もお疲れ様です・・」


「いや・・そんな事ないさ・・」


「それでは、俺・・少し用がありますんで・・では」


「・・あ、ああ・・そうか、じゃあ気を着けて・・・」






男は歩き始める・・



洋一は家に向かう事もなく、彼の後ろ姿を眺めていた・・


その時だった・・・彼の背中が、不意にあの人と重なる。


洋一は無意識に彼を呼び止めてしまう


「鈴木君!!」


男は振り向く・・


「・・・何か・・」


「い、いや・・用って、バイトか何かかい?」


「・・・まあ、そんな所です」


「・・そうか・・じゃあ、明日の朝は無理だね・・」


「・・すみません・・言うの忘れてました・・」


「いや・・良いんだ」


「それじゃあ、バイト頑張って・・」


「・・・ありがとう御座います・・では」


男は再び歩き出す。



洋一は・・・ただ・・彼の後姿を眺めていた・・














まいったな・・・まさか洋一さんに会うとは・・・


せっかく・・スイッチを切り替えたのに。


まあ良い・・・まだ時間はある・・・



男は歩く・・何処かに向かって。











時刻は22時半








男は、小さな三階建ての古ビル?の前に立っていた。


電車に揺られ徒歩で俺のアパートから大体、1時間15分・・・


此処は俺に提供された場所だ。


男は古ビルと、隣のビルの間に入る


其処には扉があり、男はポケットから鍵を取り出し、古ビルの中へ。







ビルの二階・・その一角は殺風景だが部屋に成っていた。


パイプベットと机・・・そして・・・やけに古い木製の箪笥


男は一直線に箪笥へと向かう


箪笥には鍵が付いている。


男は、再びポケットに手を入れ、その中から、やけに古い鍵を取り出す


箪笥の鍵を開けると、その中には、衣類が入っていた。


男は、それに着替える


全身黒・・・動き易い服装。


着替え終わると、服の入っていた、引き出しを全て取り出す


その奥には・・・隠された引き出しが在った。


彼は箪笥の奥に手を入れ、隠された引き出しを取り出す、


その中には・・・







一振りの刀が入っていた







古い箪笥・・・それは・・・刀箪笥だった。




男はそれを置くと箪笥の二段目を開ける・・


その中には箱があり、それを手に・・そのまま座る。


箱を開ける・・・中には刀の手入れ道具、一式。


男は刀を持つと、鞘を掴む


刃の方を上にしてゆっくりと鞘を抜く


刀身を専用の紙(ティッシュでも可)でよく拭き、刀油を落とす


刀身全体に打ち粉を打ち、新しい紙で粉を取る、それを数回繰り返す。


次に持つ所を止めてある、目釘を湿してから専用の道具でそれを抜く


目釘は2つ


手首?を叩き柄(持つ所)を外す


乾いた布で拭き、元に戻す。



















改めて・・刀身を・・・


男は・・・見詰める。


刀身は・・鈍く輝いている・・




その輝きが・・男の瞳に宿る


男の瞳は・・・鈍い輝きを増す。



刀身を鞘に帰し男は立ち上がる


男は部屋を出ると・・何も無い場所へ


其処の中央に立ち


腰を低くして刀を持つ。




鞘から抜きながらの抜刀、


刀を体の真ん中へ・・・


相手を想像し・・刃先をその目線に。



想像した幻影が、男に斬りかかる、男は其れを寸前で避け、すぐさま反撃


幻影はそれを受け、鍔迫り合いに・・男はそのまま押し切り、後方に下がった幻影の手首を狙い斬る


そこで一度、幻影を消す・・・



こんな感じか・・・。


再び想像


幻影は動かず・・・男は幻影の刀を払い、隙が出来た所を斬る・・



こんな簡単にいかん・・か。


男はこんな事を繰り返す


何度も何度も、













時刻は0時







男は刀を専用の皮で出来た入れ物に隠す。



・・・B地点・・・


此処から・・・徒歩じゃあ間に合わない・・


電車は止めた方が良いな。


携帯を手に・・タクシーを呼ぶ。


男は全身黒の少し目立つ服装の為、明るい上着を被る。





小さな古ビルから出る・・・鍵を閉め外で待つ・・・




周りの日常を眺めていた・・何処か・・・遠い目をして。






時刻は0時45分



タクシーから降りて暫く歩く


なんの変哲も無い、ただの住宅街。




丑の刻・・・本来なら、深夜1~3時頃を言うらしいが


この場合深夜1時までにB地点へ行け・・と言う意味がある。




そこには既に一台の車が止まっていた。


その中から1人の男が出てきた


「やあ、一郎君・・こんばんわ^^」


細目・・常に薄ら笑いを顔に浮かべている、見た目は25~30歳って所か・・


名前を小林と言う。


もっとも・・恐らく本名じゃない・・仮名だろう。




「いや~、一郎君は偉いね、何時もしっかり時間の前に来てくれる^^」


「でもね~、一時にならないと出発しないんだ、もうちょっと待っててね^^」



「好きにしろ・・俺は車に乗ってるぞ」


「寂しいな~、もうちょっとお話しようよ^^」


「勝手に1人で喋ってろ・・・」


「そんな~^^」



いけ好かない奴だが・・こいつが俺の担当の【導き手】だ。


こいつが俺を導いてくれる・・・



・・・・・闇に染まる日常へ・・・・・





時刻は・・・1時



車は走り出す・・・・誰かの居る場所へ・・向かって・・





おわり






ここまで読んで頂、ありがとうございます。


四話は今書き途中です、出来しだい投稿したいです。


では、今後とも、宜しくお願いします。

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