詠唱?なにそれ、めんどくね?
早朝、目を覚ました俺は今、レイナが集めた木の実を使った料理を作っているところだ。
ちなみにレイナとは、俺から残念美少女という称号を付けられている自称メイドのことである。
さて、しっかりと睡眠を取って頭がクリアになったことだし、昨日のことを改めて、俺の自己紹介と共にしていこうじゃないか!
「と、いうわけで改めまして俺の名前は鐵 陽磨16歳テスト勉強なんてしたことがない。そして、彼女いない歴イコール年齢だっ!自分で言っててつれぇな。そしてそして、自己肯定感が高めかも知れないが俺は、他人よりも頭の回転力や記憶力などの才能があると自負してる!!ただし!俺はめんどくさがり屋である。そんでもって、細かい個人情報は血液型はA型で部活や習い事としては、小中でサッカー、高校でバドミントンをしていた。俺はどちらかと言えばオタクよりなんだが…卓球とパソコンには惹かれなかったな…まぁ自己紹介はこんなもんかな…?よしっ、改めてよろしく」
「続きまして、昨日の話を振り返ろうっ」と、声を大にして言っていたら隣から冷めた視線と共に(いつまでやるの?)という圧も感じなくはないが、ひとまず気にしない。
「昨日は色々あったが、順に追っていこうか。まぁ恋愛経験ゼロの俺が美人の女性に惹かれてしまのは仕方ない事として、その話は置いておこう。問題はレイナに言われた設定?のほうかな?ミッションの設定はとりあえずのところは発生しないことにはどうしようもないしな、これも置いておこう。で、現状既に発生してるこのメインミッションだが、どうしたもんかな…?普通に歩いたら、六日かかるのに、残念美少女を連れてる俺としては不安しかないんだよな。絶対、森に入ったらモンスター湧くだろうし…それで、この世界に関してだが、テンプレ世界ってことはそのままの意味で考えると、よく漫画やアニメ、小説などで起きるお決まり展開がある世界ってことか?それさ、まずくね?お決まり展開とかのテンプレって一般的にはもう先が分かっちゃってつまらんって言われがちだよな?要は、俺のすべきことはテンプレに慣れろってのとテンプレ通りに行動したら、ミッション達成に繋がるとかだから、頑張れ的な?でも、この世界に来てからテンプレ展開あったっけ?えっと…まずは異世界召喚的なのをして、ステータス画面があり、魔法やスキルの概念あり、ギルドあり、旅の仲間あり…?、他にあるか?全然ぱっとしないな。まぁ今後他の世界行ったら分かるか」
で、喋り疲れたからこっからは普通に考えようか…てか、俺の旅の目的なに…?テンプレ世界ではその世界ごとに目的は変わるだろうから、共通の目的が必要だな。
俺はそもそも旅が好きじゃない。できれば、部屋でゲームやらアニメを見てだらだら過ごしたい。このままテンプレ通りに事を進めるなら、元の生活に戻る手段を知っていそうなあの女性にもう一度会うしかないな。
「よしっ決めた!俺の目標は元の生活に戻るためにあの女性を見つけ出す!」
パチパチとレイナに拍手を貰ったものの、少し恥ずかしかったからとっさに俺は顔を背けた…
料理や食事を一通り済ませた俺はまだ重たい腰をあげ、最初に異世界召喚された位置である山の頂上へと歩みを進めた。大した距離じゃないので、すぐに辿り着いた。
「にしても、ここは良い景色だなぁ」と、感嘆の声を上げた俺は良い案を思いついた。せっかく、手に入れたスキルや魔法って使いたいじゃん?ってことで、早速いくつか試そう…いや、時間も無いしとりあえずいろんな魔法を重ね掛けすればこの崖を降るのも、なんなら街にもひとっ飛びかな…まぁやれば分かるか
「よしっ!レイナ、ちょっと飛ぶから我慢してくれよ?」
「と、ぶ…?」
そして、俺はレイナをお姫様抱っこしてステータス画面を開いた。
とりあえず、疾そうなのと飛べそうなものとかの飛行に必要なものを全部使えばいいか…
「えっと…とりあえず、詠唱か―汝、我ここにあらん、我がここに願う、風の精霊王よ…」
長い、あまりにも長過ぎる…ロマンを求めて短縮詠唱はしなかったが…長いなこれ、あぁめんどくせぇ全部省いちゃえぇぇ
「スピードエンチャント、ウインドプロテクション、エアロブラスト、ゲイルブラスト、エアリアルジャンプ、ウィンド・アビテーション、レヴィテーション……エトセトラ」
その瞬間、俺は人生で初めて空を飛んだ…が、疾すぎた…街の手前に数秒で辿り着いたから即座に魔法を解除して、舗装された街道へと降り立った。
とりあえず、思考加速を使ったから落ち着きを取り戻してきたようだ。
それで、レイナはと言うと、白の長髪を乱しながら、無事意識を失ったようだ。
まぁ思いの外、早く辿り着いちゃったことだし、木陰で野宿でもしようかな…今日も昨日と同様に結界を張って寝よう。
…気づいたら朝になっていた。
ハルマ様はまだ眠っている様子ですね。
昨日の私、レイナはハルマ様の魔法に驚愕し、頭が追いつかずとも、なんとか言葉を振り絞って脊髄反射で「飛行魔術なんてのはこの世界では魔族しか使えませんっ!!」って言ったけれど、その時には既に遥か上空を飛んでいて、風圧やらに私の虚しい叫びはかき消されてしまいました。
でも、昨日の魔法にはとても驚かされました。今でも猜疑心が払拭し切れていないのですが…
この世界での常識として、人間に飛行魔術は使えないし、魔法の並列構築も一般的には二つで上級者でも五つが限界のところを彼は、聞き取れた限りではなんと32個も同時に、なんなら付与魔術においては、重ね掛けすら出来ないとされているのに五つも重ねていた。
私自身もこの世界に来て、日も浅いですが、ハルマ様のように界渡りをする人に仕えることを本望とし、生業にしていますが、今まで見てきた数々の人達とは次元が違うわ。あぁこの人にこれからもついていけることが嬉しくて仕方ありません。
「今後とも、私をよろしくお願いします。ハルマ様」と、密かに呟いた。




