ここはどこ!?そして、お前だれ?
「旅は好きか?」のひと言で始まった異世界転生だったが⋯…この状況は一体…?
(いや、まずは思考を整理しよう)
俺の名は鐵 陽磨で自堕落な高校生活を送っていた16歳の筈なんだが…ある日、自転車通学をしている俺の通学ルートに見知らぬ女性が歩いていた。決して、俺は釣られてはいないんだが、その女性があまりにも美人で少しだけと後を追ってみた。
その後、路地裏でその女性は突然振り返ると俺を見つめてきた。
何食わぬ顔で俺は横を通り過ぎ…ようとしたが、刹那その女性の顔にノイズが走った気がして女性の真隣で止まった。
―否、止まってしまった―
俺が戦慄してる間に、女性はひと言「旅は好きか?」と妖しい笑みを浮かべて言った。
それを皮切りに俺は、なんとなくかっこいい魔法陣と光に包まれ―
今に至ると言うわけだな。
ふむ、うんうん。なんてバカっぷりなんだ。いくら思春期の高校生とはいえ、俺自信ちょーーひくわーーー
かんっっぜんに釣られてるわ
でも待てよ、あの女性は本当に女性で良かったのかな…?なにか違和感が……
と、そこで体を起こした俺は目の前に浮かぶ一つのパネルに気が付いた。
一見、この世界で使える俺の学生証、いわゆる証明書ぐらいだと思ったが…
拡大アーンドスクロールをしてみたら…30秒かけても底が見えない程、膨大な俺のステータスが表示されていた。
そして、俺はステータスを見るのを諦め、ステータスをスライドさせて視界の端へと追いやった。
そこで、やっとのこと辺りを見回した俺は状況整理をした。
まず、俺が目を覚ましたのがいかにも天然の草原の上で山の頂上らしい、背後には広大な森が広がっており、すぐにでもモンスターが出てきそうだ。そして、前方は少し進んだら崖になっていて、遠くの方に街と思しき建物群が見えた。
てな訳で、ここはひとまずあの街を目指すことにした…のだが、突如として森側の上空からこちらへ「お〜い」と声を掛けてくる未知のモンスターが飛んできた。
―彼は元々、人よりも才能を持って生まれてきた側ではあったが、宝の持ち腐れをして、怠惰に生活してきた人間である―
と、どこからかナレーション染みた言葉が聞こえた気もしなくはなかったが…
主人公の陽磨は頭はフル回転させ、先ほど流し読みをした際に覚えたスキル詠唱をいきなり短縮詠唱し、上級者でも10秒以上はかかる詠唱をものの数秒で終わらせ、唱えた。
「ウォーターヘル!!」
それは、上級者でも半年以上掛けて覚える上位スキルであった。
ふぅ、と一息吐いた俺はどっと来た疲れを堪え、水獄へと近づいた。距離はおよそ5メートルでなんとか、この世界で初の生物を捕らえた。
その生物はなんと説明したらいいのか、言葉に困る程、形状が変化し続けていた。
なんだこれ、最初見た時は小竜のように見えたのに、次々とウサギ、ユニコーン、猫へと姿を変えやがる。
と、そこで一人の同い年ぐらいの女子に姿形を留めた。
うわっめっちゃ可愛いと内心で呟いた俺は、目を覚ました様子の彼女にいくつか質問をすることにした。まず、
「君って、に――」
「あー!!」
と、急に大声を出した彼女に質問を遮られた俺だったが、一旦、話を聞く姿勢を作った。
これでも俺は紳士だからねと、密かに内心で呟き、耳を傾けた。
「ねぇねぇハルマ?なんでこんなことするの?」
と、彼女は目をうるうるさせながら俺に尋ねてきた。
だが、こちらとしてはこれは不可抗力である。完全にとばっちりだ!そもそも、俺は彼女もこの世界もよく知らない。それなのに、こいつは俺の名前を知っているということは、恐らくは俺の事情も知っているだろうに、なんだこの態度は?紳士の俺でも頭にクエスチョンマークが右へ左へと往行している有様だ。
よし、気持ちを切り替えよう。もしかしたら、俺の勘違い説もあり得る。なので、俺は続きを彼女に促した。
「私は、あなたに付き添う専属メイドです。要は、旅のお供です。」
と、彼女が言いきった途端…
いつの話か視界の端に追いやったステータス画面が目の前に戻ってきて、通知が来た。
そこには、「ミッションのお知らせ」と、書いてあった。
「ミッション?」と呟き、首を傾げた俺に自称専属メイドが進言してきた。
「それはですね、このテンプレ世界を旅する主様に必要な物資などを入手する足掛かりとして有効です。そして、ミッションの発生条件としては完全にランダムで、出会ったミッションには挑戦することをオススメします。また、ミッションには種類があり、梅、竹、松、メインといった物があります。他になにか質問はございますか?」
って早口で言われたが…彼女の第一声とは打って変わった態度はスルーし、ステータスの恐らくシステムメールと照合し、考えた。
「とりあえず、気になる四種類のミッションだが、メインは恐らく竹と同じくらいの難易度と発生条件だが比較的、会話などで発生しやすく、メインストーリー的なのに影響するってのと、松竹梅はそれぞれ難易度と発生条件が違って、松が高難度ってことであってるのか?」と尋ね、「はいっ!」と元気に頷く彼女を確認し、大体理解した俺は思考を止めた。
そこで、先刻に発生したメインミッションに目を通した。その内容を見て、俺は絶句した。
その内容とは、要約するとこの自称専属メイドを連れて、全世界共通のギルド証という物を街のギルドで発行してもらえ、といった内容だったが実はこのミッション、現状だと何気に難易度が高かった。
どうしてかと言うと、さっきこっそりと俺の持っていた鑑定スキルでこいつのステータスを見たが全てに置いて初期ステータスで一と表示されていた。おまけに、通称という欄に残念美少女と書かれていた。要は、足手纏い。
そして、聞こえてないふりをしていたテンプレ世界というワードだったが、これまた面倒な設定で今の俺のレベルだと、同じ世界に一週間しか滞在できないのだという。そして、今はもう日が暮れ始めて夕日が見えるころだ。街があまりにも遠い。目視でも六日はかかる距離に位置している。
うん、ひとまずこいつを解放して野宿しよう、うん。
―かくして陽磨のテンプレ世界旅がお先真っ暗で始まったのだった―




