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引き籠もりニート自室ダンジョンで最強になる~俺だけ最強の装備やアイテムで世界最強に!?~  作者: 仮実谷 望


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第五話 ニートの聖域(サンクチュアリ)防衛戦

「――蓮、入るわよ」


その声は、地下三階の主の咆哮よりも鋭く俺の鼓膜を貫いた。 心臓が跳ね上がる。慌ててクローゼットの扉を閉め、その上に脱ぎ散らかしていた「魔改造済みジャージ」を放り投げて隠した。


「ちょ、待って母さん! 今、着替え……」


「何言ってるの、お昼過ぎでしょう。いつまでもパジャマでいないの」


ガチャリ、と無慈悲にドアが開く。 入ってきたのは、お盆に乗せた昼食のうどんと、一束の「紙」を手にした母親だった。


「はい、これ。……あら、なんだかこの部屋、妙に空気が綺麗じゃない?」


(しまっ……『汚染浄化の魔石』を出しっぱなしにしてた!) 部屋の隅で、空気清浄機代わりに置いていた魔石が、目に見えるほどの清涼な風を吹き出している。


「あ、ああ、これね! ネットで買った……強力な脱臭剤だよ。ほら、ニート特有の加齢臭とか気にする年頃だしさ」 「そう……? それより、これ読みなさい。お隣の田中さんの息子さんが勤めてる工場の求人。蓮なら真面目だから、こういうコツコツした作業向いてると思うのよ」


母親が差し出してきたのは、手書きの付箋がびっしり貼られた求人票だった。 『月給18万円(手当込み)』『未経験歓迎』。 今の俺が地下二階で一分掃除すれば稼げる金額だが、それを言うわけにはいかない。


「……検討しとくよ」 「毎回そう言って。……ん? 蓮、その手に持ってるの何?」


母親の視線が、俺が隠し持っていた『管理者タブレット』に注がれる。画面には『Damazon』の文字と、現在の残高『3,400,000円』がデカデカと表示されていた。


「あ、これ!? これは……その、ゲーム! そう、超リアルな経営シミュレーションゲームなんだよ! この数字もゲーム内通貨! 課金してないから安心して!」 「ふーん……。最近のゲームは本物のお金みたいに見えるのねぇ」


母親がさらに部屋の奥へ歩み寄る。その先には、パッチで改造した『漆黒の木刀』が立てかけられていた。


「この木刀、こんなに黒かったかしら? なんだか少し……浮いてるように見えるんだけど」 「それは、漆! 自分で塗ったんだよ。趣味だよ、工芸だよ! ほら、母さん、うどん伸びちゃうから!」


俺は必死に母親の背中を押し、ドアの方へと誘導する。 だが、運悪くその時、クローゼットの奥から『ギギギィッ……』と、はぐれゴブリンの鳴き声が漏れ聞こえてきた。


母親がピタリと動きを止める。 「……蓮。今、何か変な鳴き声しなかった?」


「な、鳴き声? ああ、それ……俺の腹の虫! ほら、母さんのうどんが美味しそうだから、胃袋が限界突破しちゃってさ!」 「……あんた、本当におかしな子ね。変な動物でも飼ってるんじゃないでしょうね」


不審げな目を向けながらも、母親は「ちゃんと求人票、読みなさいよ」と言い残して部屋を出て行った。 パタン、とドアが閉まる音がした瞬間、俺はその場に崩れ落ちた。


「……地下三階のミノタウロスより、精神的ダメージがデカい……」


俺は震える手で『異世界コーラ』を飲み干し、MPを回復させた。 外の世界では人類の存亡をかけた戦いが起きているというのに、俺の戦場はあまりにも世俗的で、それでいて致命的だった。


「……早く『認識阻害パッチ』のポイントを貯めないと、いつか部屋を強制捜査されるぞこれ」


俺は決意を新たに、求人票をデスクの引き出し(一番奥)に放り込み、再びクローゼットの深淵へと向かった。 働きたくない。いや、正確には「普通の仕事」をしている時間は、今の俺には一秒も残されていなかった。

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