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引き籠もりニート自室ダンジョンで最強になる~俺だけ最強の装備やアイテムで世界最強に!?~  作者: 仮実谷 望


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第十六話 十日目の街、あるいは空手少女の正拳突き

ダンジョンが発生して、今日で十日。 当初のパニックは去り、テレビでは「ダンジョン予報」が流れ、街には自衛隊の検問が当たり前のように設置されている。世界は変わった。だが、化け物たちが牙を抜いたわけではない。


「――っ、はあぁッ!!」


鋭い気合と共に、白の道着を纏った少女――一ノいちのせ りんの正拳突きが、青白い皮膚を持つ『オーガ』の腹部にめり込んだ。


ボゴォッ! という肉体同士のぶつかり合いとは思えない鈍音が響く。 並の人間なら腕の骨が砕ける衝撃。だが、空手道場の娘として幼少期から拳を鍛え上げてきた彼女にとって、これは「対話」だった。


「グガッ……!?」


呻くオーガに対し、凛は止まらない。 しなやかな軸の回転から繰り出される回し蹴りが、怪物の側頭部を捉え、その巨体を路上のガードレールまで吹き飛ばした。


「……ふぅ。これで三匹目」


凛は荒い息を整えながら、額の汗を拭う。 彼女が守っているのは、避難所に向かう途中の小学生たちが固まっている裏路地だ。政府の対応は早い。だが、マンホールや路地裏から突発的に現れる「はぐれモンスター」のすべてをカバーできるわけではなかった。


「お姉ちゃん、すごい……!」 「……危ないから、早く行きなさい。自衛官の人がいる大通りまであと少しだよ」


子供たちを逃がしながら、凛は自分の拳を見つめた。 皮膚が裂け、血が滲んでいる。


(私の空手わざは通じる。……でも、これだけじゃ足りない)


十日前までの彼女なら、自分の力に絶対の自信を持っていただろう。 だが、今の世界には、どれだけ鍛えても届かない「理不尽な壁」がある。さっきのオーガも、急所を外せば彼女の命はなかった。


その時、彼女のポケットでスマホが震えた。 画面には、今や国民的インフラとなった『Damazon』のアプリ通知。


《おすすめの商品:【パッチ済み・衝撃増幅サポーター】……残り1個。正拳突きの威力を300%に引き上げます。――出品者:名無しの引きこもり》


「……これ、またあの人の……」


凛は迷わず購入ボタンをタップした。 一介の女子高生にとって安くない金額だが、背に腹は代えられない。数分後、上空から飛来した小型ドローンが、彼女の前に小さな箱を落としていった。


中に入っていたのは、一見すると何の変哲もない、ただの黒いリストバンド。 だが、それを手首に巻いた瞬間、凛の視界に謎の「ゲージ」が浮かび上がった。


「何これ……力が、溢れてくる……?」


ちょうどその時、路地裏の奥から、先ほどのオーガよりも二回りは大きい『ハイ・オーガ』が、コンクリートの壁を粉砕しながら姿を現した。


凛は再び構える。 今度は、怖れはなかった。 彼女が憧れるのは、かつてネットで見かけた「最強の引きこもり」の噂。


「道場を、この街を守る。……空手家をなめるな!」


凛の拳が、魔力的な輝きを放ち始める。 それは、蓮が自分の「平穏」のためにバラ撒いたガラクタが、一人の少女を「ヒーロー」へと変えた瞬間だった。


【一方、佐藤 蓮の自室】


「……あ、サポーター売れた。よしよし、これで今日の晩飯は豪華に寿司だな」 蓮はモニターを見ながら、のんきに回転寿司の注文サイトを開いていた。


「あんた……あんな強力なパッチアイテム、適当に売りすぎじゃない? そのうち街中にサイボーグ女子高生とか溢れ出すわよ」 アキラが横で、蓮の適当な出品リストを見て呆れ果てていた。


「いいんだよ。俺の部屋の近くで暴れられるのが一番迷惑なんだから。自警団的な奴らが勝手に強くなってくれる分には、俺の『引きこもりセキュリティ』が上がるってことだろ?」


「……相変わらず、合理的すぎて性格悪いわね」


アキラは苦笑しながらも、蓮が売ったアイテムが街の各所で「奇跡」を起こしているデータを収集し、政府の追跡を煙に巻き続けていた。

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