全国大会準決勝 桜見VS名西寺
『全国大会で勝ち上がって来たチームは最初の32チームから僅か4チーム。頂点を争うトップクラスの実力者達で争われる準決勝の戦い! 決勝の椅子に座るのは東京の桜見中学か!? 地元開催で負けられない大阪の名西寺中学か!?』
試合の時が近づき、選手達が観客の声援に迎えられながら入場。
「ええなぁ、ええ感じで盛り上がっとるで今日ー」
名西寺の先頭を歩きながら背番号6のキャプテン、烈気は楽しそうな感じで周囲を見回す余裕があった。
慣れ親しんだ大阪の地だからか、全国大会の準決勝へ臨む彼に硬さは特に感じられない。
「(やっぱり……でっかいよなぁ)」
隣に並んで桜見の先頭を歩く竜斗は改めて、両チームの中でも一際背の高い烈気が大きく見えてしまう。
竜斗も小柄な方ではないが、それでも大会で最長身と言われる彼と並べば小さく見えている。
それ程の高さだった。
『いやぁ、番名君は相当高いですね。数年後には2mを超えるかもしれませんよ』
『現に彼は空中戦で全然競り負けたりしませんからね。中学の時点でこれですから、将来が楽しみな選手です』
「すまんなぁ兄ちゃん」
「?」
コイントスで両キャプテンが向き合った時、竜斗へ謝罪のような言葉を口にする烈気。
その表情は不敵に笑っている。
「俺、コイントスで外れた事ないねん」
烈気がそう言うと、直後にコイントスの結果が告げられて結果は烈気の予想通りだった。
「な?」
得意気に笑う烈気へ竜斗は、たまたまだろうという目を向けつつも握手を交わして自分の陣地へ向かう。
「何時も通り俺らが先手や」
「またかい烈気、此処でめっちゃ運使ってへんかぁ?」
「その強運を試合で発揮してくれやー」
「知らんわ。そういう運にさせた神様へ文句言えっちゅーねん」
烈気が円陣を組む名西寺のチームメイトへ伝えに来ると、彼らはそうだろうなという反応で、烈気がコイントスに勝った事を分かっていたらしい。
「どっちでも良いだろ。どうせ勝つのは俺達で決勝に行くんだからな」
「せやな、ほないこか!」
コイントスの結果がどうあれ、センハの勝利を狙う気持ちは変わらず烈気は円陣へ加わった。
「全国最強はぁ!!」
「「名西寺ぃ!!」」
掛け声を終えて更にチームの士気を高め、地元大阪代表として負けられない名西寺は高いモチベーションを保ちながら、開始の時を待つ。
「向こうにとってホームで俺らにとってはアウェーだ。けどホームが必ず勝つとは限らねぇし、桜見が決勝進むぞ」
「そうだねー。勝って「なにしてくれてんねん桜見ぃ!」「どつき回したるからなぁ!」ってブーイング浴びる覚悟で行こっか♪」
「……お前、何を見てそういうの出てきたんだよ?」
明るく笑いながら関西弁でのブーイングを輝羅は想像で言い、隣で肩を組む霧林は何を見たんだと気になってしまう。
「ま、とにかく今日も勝つっきゃないっしょ」
「……決勝行きたい……」
楽斗が纏める横で影二も小声で呟く。
「じゃ、今日も行っちゃおう竜斗ー♪」
「わかってるって、行くぞ!」
「桜見ファイ!!」
「「オー!!」」
与一に促されながら竜斗は何時もの掛け声で気合を入れ、皆がそれに合わせてからポジションへ散る。
黒と青のストライプユニフォームの桜見、GKは白。
黄色のユニフォームの名西寺、GKは緑。
桜見中学 フォーメーション 4ー5ー1
赤羽
9
室岡 鈴本 霧林
8 10 11
宮村 闇坂
5 14
新田 神明寺(与) 大橋 西村
2 6 3 4
神明寺(輝)
1
名西寺中学 フォーメーション 5ー3ー2
高清 太刀川
11 9
センハ
10
米田 橋本
8 5
上坂 市岡 番名 千林 友口
2 4 6 3 7
黒石
1
「ほな、立ち上がりガンガン行ったろうやー!」
DFラインから声を掛ける烈気に皆が応えていた。
これを聞けば皆が立ち上がりから名西寺が攻めて来ると思うだろう。
だが──キックオフとなれば動きは違っていた。
ピィ────
『名西寺のキックオフで試合開始! DFラインまで下げてゆっくりとした立ち上がりだ』
名西寺は積極的に攻めず、安全に後ろでパスを回していく。
「(口でああ言っといて、騙すのが結構好きそうだなぁ)」
相手の狙いは心を読んだので分かる。
与一は大柄なDFを見れば、意外に策士なんだなと印象を改めていた。
「(ロングパスで一気に来るかもしれねぇし、楽には蹴らせないように!)」
『キャプテンの赤羽が前線から寄せていく! 最終ラインで名西寺は落ち着いたパス回しだ!』
容易くロングパスを蹴られないよう、竜斗が積極的なプレスで詰めるも相手は慌てず確実にボールを繋ぐ。
「(この辺りでええやろ)」
烈気からすれば竜斗がプレスに来る事は想定済みで、ボールをキープすれば再び竜斗は迫って来た。
「ぐっ!?」
193cmの長い右腕が竜斗に伸びてきて、烈気に近づく事が出来ない。
恵まれた体格を活かしてのボールキープだ。
そこから左足で前へ軽く出すと烈気は自らボールを追って、勢いをつければ右足で強く蹴る。
『番名のロングパス! 左サイドを走る上坂へ一気に渡った!』
名西寺の両サイドバックが上がるまでの時間稼ぎを烈気達で行い、サイドからの攻撃を狙っていた。
右も囮の為に上がっている。
「西村、そのまま2番! 宮村10番!」
フィールド全体を見渡せる位置にいる輝羅は指示を送り、それぞれが指定された相手へ向かう。
『上坂と西村のマッチアップ! サイドライン際の攻防!』
突破を狙おうとする上坂に対して、西村は突破をさせないようにコースを塞ぐ。
争う最中でボールは零れ、中央へと転がって進むと素早くセンハが迫っていた。
「(このセカンドを取って繋げれば!)」
桜見ゴールは近く、取ればチャンスへと繋がる可能性は充分。
センハの左足がボールへ迫った時──。
「渡しませんっとー!」
「!」
それよりも先に与一が取って、センハが伸ばした左足は空振りに終わる。
「(此処は竜斗へ一気にやっちゃおうか!)」
与一は奪った位置から右足で強く前へ蹴り出し、先程の烈気がやったロングパスのお返しを思わせる。
低空飛行で竜斗の元へ向かい、烈気の横を通過。
その瞬間に長身の彼はニヤッと笑った。
「っし!」
与一からのパスを受けた竜斗は前を向いて進む。
ピィ────
「!」
だが、それ以上進む事は許さんとばかりに主審の笛が鳴り響くと、竜斗が線審の方を確認すれば旗は上がっていた。
『おっと、神明寺与一のロングパスをフリーで受けた赤羽でしたが、これはオフサイドを取られてしまう!』
『残ってたDF3人ともラインを上げてましたね。良い連係です』
「(んな簡単にロングパス通すかい。この試合は通行禁止や!)」
桜見が縦の長いパスが得意なのを知っており、烈気は与一に取られた瞬間、DF2人へ合図を出してラインを上げたのだ。
『(与一、ただのデカいDFじゃなさそうだよ)』
『(みたいだねー。これちょっと骨あるっぽいなぁ〜)』
テレパシーで双子は烈気が想像より大きな壁になるだろうと、確認し合う。
中学サッカー界随一のDFというのは伊達ではなさそうだ。
与一「何時もより大きな声援な感じするねー」
輝羅「大阪のお客さんはめっちゃ元気だなぁ〜」
神奈「何時もより大きく声を出さないと指示が聞こえないかもしれないから、そこ気をつけて」
与一「のど飴とかでケアしないとー」
輝羅「大声は結構エネルギー使うからねー。次回も桜見と名西寺!」
与一「いっちょ日韓対決と行きますかー♪」




