合同練習
「此処からあそこまでワンタッチで繋げよー!追う方も容赦無く行くんだぞー!」
東王の方ではフィールド全体を使って全員が素早くパスを回す。
そこに守備役の相手選手の妨害も追加され、容易に目標までは到達させないようにする。
東王の素早いショートパスは、こうした日々の練習で磨かれていた。
「ほぅー、こうして都内随一の連携が生まれる訳か」
「あれは桜見でも取り入れるかな」
軽くアップで皆と体動かしながら、東王の練習を横目で見る竜斗と大木田は今後の参考にしていく。
「いや、お前らは都大会決勝でエグいの決めてるだろ」
「プロも度肝を抜かれるスーパープレー!? っていうので動画とかでバズってるの知らねぇのか?」
大木田と更に真野も一緒になって、桜見の都大会で決めたゴールについて触れていく。
「本当……あんなのよくやるなお前!?」
「いや〜、周りのサポート様々だねー♪単独じゃ絶対出来なかったしー」
「どっちにしても凄すぎでしょ……古神さんにも相当驚かされましたけど」
レオード、松田の視線の先には陽気に笑う与一の姿。
彼が決勝ゴールを決めた事、そして輝羅と共に神明寺弥一の息子である事も知れ渡っていた。
「伝説と言われる小さな巨人の息子ってだけで、あのゴールは成り立たねぇし。お前が普段どんな練習してるのかじっくり見せてもらうぜ?」
「うわ〜、皆めっちゃ観察する気満々〜」
神明寺兄弟の練習内容を知りたがってるのは大木田に限らず、王坂や東王の皆も同じだろう。
「はい此処は右行くよー! ヤミー、そこボール来るから受け取ってー!」
「え、ぼ、僕……!?」
今度は桜見イレブンがフィールドで走り回り、与一の気まぐれな走りに皆がついて行きながらも、そこへ他の部員達のパスで飛んで来るボールも処理するという内容。
かろうじて来たパスに影二は反応すると、左足でトラップしてボールを右足で蹴り返す。
こういった事を他の部員達にも満遍なくやっていた。
「独特だなぁ桜見の練習。うちじゃやらないタイプだ」
「東王でもやった事は無いな……一人がランダムで全方向に緩走、急走を行うだけでなく走ってる選手へパスを送って処理するというのは」
桜見の行う練習に王坂、東王の両チームが熱心に見ている。
こういう独特な練習がスーパープレーを生み出したのかと。
「確かに実際の試合とかボールは流れて急に来るもんすからね。それも走りながら」
「つまりこれは滅茶苦茶に見えて、案外理にかなってるって事かな?」
型破りな練習を見た秋城、光流の2人は納得しながらも、桜見が与一の指示に振り回される姿を見続けた。
「というかGKのあいつも積極的に走ってんなぁ」
「突然来たボールも慌てず綺麗にトラップしてますし、あれマジで上手いですよ」
レオードと松田が注目したのは、桜見GKの輝羅が与一の走りに難なくついて行って、いきなりのパスにも完璧なトラップをして返す。
GKもフィールドプレーヤーと同等の技術が求められるとはいえ、それでも皆から見て輝羅のボール捌きを上手いと感じた。
「とりあえず、あれは……取り入れられるのかな?」
「……あれこれ取り入れれば良いというものじゃないが、1回持ち帰っておこう」
神明寺兄弟が行なっている特訓を自分達も真似するべきか、目の前の光景を見て剛源は光流に聞かれると、難しい表情を浮かべていた。
「ぷはぁっ! あっつ……!」
燦々と輝く夏の太陽。
今日は30度を越える猛暑となっており、動き回る選手にとって水分補給は絶対に欠かせない。
神奈を含めたマネージャー達が用意したスポーツドリンクを飲み、楽斗は体力を回復させる。
「確か関東大会は再交代認められるんだっけー?」
「ああ、レギュラーだけじゃなく控えも含めての総力戦になるからな。何処で交代して休むかも考えないと……」
同じくドリンクを飲んで休む与一は、冷たいタオルを額に当てる竜斗へ改めて再交代について確認する。
レギュラーだけ優れていても、夏の大会に長時間出場し続ければ大きな負担となってしまう。
それを補う為のベンチメンバーが勝ち抜く鍵を握りそうだ。
「確かに相手以上に暑さが厄介で層の厚いチームが有利だな」
「その結果、去年の関東大会で石立中に持ってかれた事は今でも忘れん……!」
水分補給をしていた大木田、剛源も話に加わると剛源の方は昨年の事を思い出したのか、悔しそうな顔を見せていた。
「関東最強と戦ったんだー?」
興味深そうに輝羅が話しかけると、剛源は頷いた後に話を続ける。
「2年だった社にしてやられてな……あいつの急所を突くようなスルーパスは相当厄介だった」
「!」
剛源が名前を言った時にピクッと与一、輝羅が揃って反応。
「ドリブルも凄かったよね。スピードあって巧くて、シュートも両足で撃てて正確と」
「守備でも高い能力を見せるし、10年に1人の天才ゲームメーカーってのは伊達じゃない。あれは高校でも上を行きそうだ」
昨年出ていた光流も加わって剛源は社の事を語り続け、相当な万能選手で優秀だと聞かされる。
「へぇ〜、彼ってそんな高評価受けてるんだねー」
「本当に人は見かけに寄らないなぁ〜」
与一と輝羅からすれば妹を狙う悪い虫に過ぎないせいか、共に笑顔を見せるが目は笑っていなかった。
「何か知らんけど神明寺兄弟、やる気を感じるな! 打倒石立って所か!?」
双子から感じるオーラが石立を絶対に倒すという気迫と思ったか、大木田は2人が燃えてるなと感じ取る。
ある意味正解ではあるが。
「おいおい、石立にばかり目を向けてると他にやられるぞ。桜見の初戦の相手を見たけど、茨城の島岡中学は関東大会の常連で強いからな?」
石立に意識が向き過ぎだと注意するように、剛源は桜見が1回戦で当たる対戦チームの事を教えた。
「東王も戦ったのー?」
「ああ、向こうは粘り強い守備が売りで俺達も1点を取るのに苦労した。終盤で1点取って1ー0で逃げ切りだ」
東京No.1と言われる東王の攻撃を受け続け、僅か1点に抑えた堅守は侮れない。
双子は剛源から島岡中学が堅い守備を長所としていると教えてもらう。
「どうした? さっきから何か考え込んでるように見えるぞ」
「ああ、いや──」
竜斗は大木田が何かを考えてると思い、本人へ直接どうしたのか問い掛ける。
「折角これだけのメンバーが集まった事だし。どうせならチームをバラバラにして、混合チームでの練習試合とかやってみるのは面白そうだなと思ってな」
「混合チームか……」
それを聞いて竜斗は他校と組んで練習するのも向上に繋がるかもしれない、大木田の案に対して悪くないと感じた。
「良いな、それやってみるの良いんじゃないか?」
折角集まったので一度やってみるのも良いだろう。
竜斗が賛成すれば、大木田は一気に表情を明るくさせる。
「よし! それなら午後に桜見VS東王、王坂の連合チームでやるか! おおーい!」
「え……」
完全に予想と違ってしまったか、竜斗は一瞬固まってしまうと大木田の方は思い立ってすぐに剛源達の元へと走る。
「(混合チームって、東王と王坂で組むのかよ!?)」
思わず内心で竜斗は叫んでいて、その心の叫びは与一と輝羅が聞いていた。
与一「東王と王坂が組むってどうなるのかなぁ?」
輝羅「強くなるのか、それとも弱くなるのか知らないけどねー」
与一「というか結局うちの為の強化練習になっちゃったじゃん♪」
輝羅「そんな訳で次回は桜見が東王、王坂の混合チームとサッカーやるよー!」




