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第8話 少女の正体

「……あなたが、助けてくれたの?」

小さな声が、沈黙を切り裂くように響いた。

「う、うん。そんな感じ。」


助けたと言えばそうなんだけど、ほとんど僕は役に立たなかったからな……。


「まずは……ありがとうございます。そして……ごめんなさい」

「え、謝る必要なんて――」

「いえ。私のせいで……あなたに酷い目を合わせてしまって……それに……」


言葉の続きを絞り出す前に、彼女の声が震え、ぽろりと涙がこぼれた。


「……大丈夫。大丈夫だ」

僕はそっと手を伸ばし、彼女の肩に触れる。

その小さな肩は、思った以上にか細く、かすかに震えていた。


「君が無事なら、それでいい。だから……泣かなくていいんだ」


彼女は顔を伏せ、声を殺して涙を流す。

その涙が一滴、僕の手の甲に落ち、じんわりと温かさを広げていった。

やがて、すすり泣きが少しずつ収まり、彼女は静かに顔を上げた。

その瞳が、真っ直ぐに僕を射抜く。


「……本当は、言わなきゃいけないことがあるの」

「言わなきゃいけないこと?」


小さく頷き、彼女は深く息を吸い込む。

そして、ひとつひとつ確かめるように言葉を紡いだ。


「私は……天界から来たの。この世界で言う“天使”と呼ばれる存在」


その瞬間、空気が震えたように感じた。

淡い光がふわりと広がり、彼女の背へと集まっていく。

そして――眩い白が花開くように、純白の羽がゆっくりと姿を現した。


眩しい光に思わず瞬きを繰り返す。

けれど、その羽は幻なんかじゃなかった。

一本一本の羽毛が、白磁のように滑らかで、光を受けて淡く輝いている。

わずかに動くたび、柔らかな風が僕の頬を撫でた。


「......すごい......」

気づけば僕は息を呑んだまま呟いていた。

彼女は静かに羽をたたみ、少し照れくさそうに微笑んだ。

「……驚かせちゃったね」

「そりゃ……驚くよ。こんなこと、信じない方が無理だ。あっ自己紹介がまだだったね。僕の名前は湊。月城湊だ。」

「湊......いい名前。私の名はネア。よろしくね」

「ああ。よろしく。ネア......ん?」

微かに扉の方かや物音が聞こえて振り向いてみると、目を大きく開けてびっくりしている琴音がいた。


「あ......てへ」


この反応は盗み聞きしてたようだな。

一体いつから聞いていたのだろうか。




琴音が部屋に来てから、琴音とネアが軽い自己紹介をした後、ネアの健康診断のために琴音が連れて行こうとした時――


「湊と行きたい......」


そうポツリと呟き、僕の裾を掴んできた。その姿を見て琴音も承諾して僕も一緒に行くことになった。


健康診断の結果、彼女の体は数日間寝ていた割に体に異常は見当たらなかったらしい。一つ気になった点と言えば体の構造が"魔質"に近い物質で構成されていることだった。天使ということは機密情報になる可能性がある点から話さないよう琴音に口止めされた。



「いや〜びっくりしたね。まさか本当に天使だったとは。それに体の構造も違うなんて!」


琴音に連れて行ってもらったのは来客用の部屋。まっ今の僕の部屋だ。この部屋ならどんな話をしてもは人に聞かれることはないらしい。


「本当に?あの羽を見たなら天使だと信じるだろ」

「ま、そうなんだけどね。一応適応者の可能性もあったから。」

「あー確かに。その可能性はあったか。」


この世界の適応者の能力の種類は数えきれないほどある。火や水を出したり、姿を変えたり、空を飛んだり。そして適応者の数は大体世界人口の10分の1と言われている。だから羽が生えている適応者もいるんだろう。


「それにしても、本当に湊は適応者じゃないの?湊が倒した奴、身体強化の能力があったから普通の人は倒せないはずなんだけど」

「それについては前も言っただろう?あの時はいきなり力がみなぎったんだって」


僕があの事件で倒した人――

あの巨体な男は適応者だったらしい。それを倒した僕も適応者だと思われていたが、調べてみたら違うと戸籍に書いてあったようだ。


「今はどうなの?」

「うーん。特には。そういえば」


ふと、思い出したことがあってネアの方を振り向く。ネアはその視線に気づき、読んでいた本を置いて隣に座った。


「あの力を感じたのはネアがこっちに手を伸ばした時だったな」

「!!」


あの時は焦っていたからあまりなんとも思わなかったが確かネアが僕に手を伸ばした後から力が湧いたっけ。


「え!?ネアちゃんがしたの?」


琴音の大きな声を聞いてネアの肩がピクリと動く。そしてゆっくり口を開いた。


「うん。私の力だと思う。私もあまり詳しくないの。でも唯一知ってるのは人に渡しちゃいけないことぐらい。」

「あっ!だから体が急に痛くなったのか。でもよかったよ。あの力がなきゃ今頃死んでいたかもだし。ありがとう」

「う、うん」

「いや〜まさかそんな力があるなんて驚きだよ!」


とそこで琴音の方から着信音が聞こえてきた。彼女は僕たちに声をかけた後、部屋から出て行った。そしてしばらく経つと彼女が戻ってきて、僕たちに言った。


「たくさん働かせて本当ごめん!トップから2人を連れてきてって命令が入ったから、ついてきて欲しい」


彼女が申し訳なさそうに手を合わせてそう言った。

僕はネアと目を合わせた。彼女は困惑していたが僕の顔を見ると下を向いた。


「はい。分かりました」

「......うん」


こうして僕とネアはこの組織のトップに会うことになった。

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