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第7話 謎の少女

「あーー、暇だな……」


来客用の白い部屋で天井を見上げながら、思わず声が漏れる。SEAに来てから二日が経ったが、僕はほとんど何もしていない。受けたのは身体検査と簡単な心理診断くらいで、それ以外はずっとここで待機だ。


施設内を自由に歩こうとしたこともあったが、琴音に見つかってこっぴどく怒られた。

“この施設は機密の塊だから、勝手に歩くのは絶対ダメ”らしい。まぁ、ここは政府の組織だし、仕方ない。


「……はぁ、なんか面白いこと起きないかな」


そうつぶやいた瞬間、部屋の扉がノックされた。


「失礼するね。湊。ちょっと手伝って欲しいことがあって。細かい事は歩きながら説明するね」


黒い隊服を着た琴音が少し困った顔をしてこっちを見る。どうせここにいても暇だし、返事は一つだ。


「はい。分かりました」


支給された服を着て、部屋から出て向かったのは最初に僕が目覚めた病棟のほうだった。

歩いてみると分かるが、ここはリハビリ施設も兼ねているようだ。

そしてそのまま通路を進んでいるいると、琴音が口を開いた。


「それで要件はね、例の少女の件なんだ。」


少女と言われて思い出すのは数日前に助けたあの白髪で金色の目をしたあの子だった。そして多分例の少女というのはこの子のことだろう。


「その少女がどうしたんですか?」

「それがね、あの子があの事件以来目が覚めなくてね。」

「......それを僕にどうにかして欲しいと?」

「話が早くて助かるよ。私もあまり詳しくは教えてもらってないけど、知り合いの君ならどうにかできるかもって上層部の人達がね。」

「知り合いって......」


知り合いと言われても僕と少女はあの場でしか会っていない。僕が行くより、あの子の家族とか友達とかを探して、頼むほうがいいのではないか。

そう思いながら琴音の後ろを付いて行くと、ある部屋に辿り着いた。その扉の前には1人の男性がいた。


「連れてきました」

「......わかった」


男はそう言って扉の前をどいて横に移動した。

そして琴音が軽くノックしてから、部屋のドアを開ける。中はほんのり明るく、空調の静かな音だけが響いた。


そしてそこには、あの少女がベッドに横たわっていた。

白髪は枕に広がり、金色の瞳は静かに閉じられたまま。顔色は悪くない。


「......」


あの事件で会った時は、夜遅くで暗かったし、泥や血で汚れていたからしっかり見えなかったが、今の彼女を見ると美しいという感情が湧いてきた。


「それで、どうにかなりそう?」

「......分からないですね。特に感じ...ん?」


そう思った時――

胸の奥、心臓のすぐ近くで、何かがふわりと揺れた。


暖かくて、柔らかくて、包まれるような不思議な感覚。

それは言葉ではうまく説明できない、しかし確かに覚えがある。


「湊?」


琴音の声が背後から聞こえたが、返事はしなかった。

代わりに、無意識のうちに一歩、彼女へと近づいていた。

そして、彼女の手をそっと握る。

白くて小さな手。冷たいけれど、どこか温もりを残したその手に、自分の体温と"何か"が流れ込むのを感じた。

――瞬間。



「......あ」

彼女の目がピクリと動き、ゆっくり目を開けていった。

僕は咄嗟に琴音の方に目を向けると彼女はそれに気づき、僕の隣へと移動した。


「......?」

少女の視線が彷徨うように動き、やがて僕の目と重なった。


「……っ!」


その瞬間、彼女の体がピクリと震える。瞳が大きく見開かれ、かすかに息を呑む音が聞こえた。


「ここは……どこ……? なんで……」


震える声が空気を震わせる。少女の表情に、困惑と不安が一気に広がっていく。薄く開いた唇からは、言葉にならない呼吸だけが漏れ、彼女はまるで何かから逃げるように身を引いた。


「だ、大丈夫……!」


僕は急いで声をかける。

彼女の体は震えていた。


「君は……もう大丈夫なんだ。ここは安全な場所だから。怖くない」


彼女は僕の顔をじっと見ていた。その目はどこか涙を溜めていて、けれど恐怖と警戒心が強く、すぐには信じきれない様子だった。


隣で立っていた琴音がしゃがんで少女と目線の高さを揃える。

そして優しい声で言った。


「あなたの体はもう傷ついてない。ちゃんと治療したわ。混乱するのも無理ないけど……今は安心して」


少女の肩が小さく震える。その不安定な心を包むように、僕はゆっくりと言葉を紡いだ。


「……目が覚めてくれて、本当によかった」


沈黙が数秒続いた。やがて、少女の表情がほんの少しだけ緩む。


琴音は少女の安心した姿を見てこの部屋を出て行った。報告をしに行くそうだ。それと彼女には一つ頼み事をしておいた。


「少しの間、この子と2人きりにされてくれないか」

「わかった。何かあったら言ってね」


彼女はそれだけ言って部屋から出て行った。そっちの方が安心させられると判断したのだろう。

そうして少女と2人きりとなった部屋で沈黙が流れる。

そしてその沈黙を破ったのは少女の方だった。

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