ヒトリノヨル
まただ、相手にもならない。どれだけ手加減しても………「余裕で勝てる…」俺は有武雄二、運だけいい人間だ。俺はあの時、俺を恨む人間に突き飛ばされ、そのままトラックに轢かれ、死んだ。そして、異世界に転生した。そこでも運を使い、俺は1年で世界最強の魔法使いになった。最初こそ、その二つ名に浸り、イキリ散らかしていた。俺は世界最強の魔法使い有武雄二だーとか言ってたな。でも、すぐ気づいた。強すぎても意味ないと、怖がって人間は近寄らないし、モンスターもいつも一撃。生きてるやつと話したのなんて、今から何ヶ月も前だ。最初はみんなも最強の魔法使いだーとかチヤホヤしてくれたが、その強さゆえ、恐れ、怖がり、近づかない。だから俺はいつも草原で寝たりしている。つまらない日々、だけど、最近面白いやつが出てきた。名前は秋沙幸村。なんにも恐れず、俺のとこにホイホイ来る……いい意味で馬鹿な女だ。いつもいつも俺が何してても「雄二さん雄二さん!」って構ってくる。そのたびに「はいはい、今度は何?」と適当に会話のキャッチボールをしていた。そして今日も……「雄二さん!」「わぁびっくりしたぁ!」「それにしてるんですか?」「モンスターが襲ってきたから退治してんの」「そうなんですか!凄いですね!」「そんな珍しいことじゃないけど…」「そうなんですか?」「そこら辺の主婦でもサラリーマンでもモンスター退治くらいしてらぁ」「そうなんですかぁ?」「そうなんですよ」「初めて知りました!」「知らなさすぎだな、お前。」「へへ〜ん!そうでしょそうでしょ!」「褒めてねぇけどな。てか、お前は?魔法使えないのか?」「そうなんですよぉ、魔法を使う事が出来なくて…」「マナは?無いのか?」(マナとは、この小説の中で、魔力のような役割を果たす。魔法を使うには欠かせない物だ)「そうなんですよ!なぜか私マナがなくて…」「今どきそんな奴いないぞ?マナが無い〜なんて。」「そんな物何ですか…」「モンスターが襲ってきたらすぐに逃げるか近くの魔法使いに行くんだぞ。なるべく、村の外に出ないように!わかったな!」「はぁ〜〜い」「何やその適当な返事」「気を付けて帰りますよ」「気を付けろよ〜」そんな会話しながら……明日もこんな会話が続くと思ったら…「胸焼けしそうだ……」そんな時……「……静かだ」今日はあいつが来ない。なぜだろう。昨日あいつが帰ったきり、顔も見てない。確かに話すことがない日も勿論合ったが、大体顔は合わせてた。……「不安だな。なぜか」もしかしたらモンスターにやられた?あの時帰ったのは夜もまあまあふけていたからあり得るはあり得る…でもあいつが住んでいる集落からは近かったはず…「…行ってみるに越したことは無いか…」俺はあいつの住んでいる集落、人はマナルーン集落と呼ぶ場所に来た。人もあまり寄り付かず、建物は綺麗とは言えないが、ここはマナの源となるマナルーンが豊富にある。魔法使いは一度はここにきてマナルーンを食し、魔法を覚える。だから生活水準はそこらの村と変わらない。「おお有武さん、お久しぶりです。なにか用でも?」集落長のお爺さんだ。「ちょっと聞きたいことがな」「ほぉ〜珍しい。答えられる範囲ならなんなりと」「この集落の人間で秋沙幸村って子がいるはずだが、その子はどうしたんだ?」「幸村ちゃんか…確かに今日は顔も見てないね…どうかしたのだろうか…いつもは元気に農業の手伝いをしてくれるのだが…」「その感じ、何も知らなさそうだな」「すまないねぇ…」「大丈夫だ。ありがとうな」「またおいでね」……集落長も知らないとなるか…どうしたんだあいつ。