その9:メタメタのメタっす!
私の名前は萌黄。翡翠様の専属籠守っす。
さて、なんか盛大なネタばらしをしている気がするっすけど、実はこの話…時間軸が固定されているっす。
四章終了後っす。こういうのは出してから言うべきっすよね。
でも、四章が終わった段階じゃないと、露草殿と花鶏様は一時帰還しないっす。
それに、朱鷺問題も解消されて鳥籠が一番穏やかなのは、四章と五章の間のみ。
最も、露草殿と山吹が対面したらその限りではないっすけど…。
まあ、それは置いておくっす。
「大体、そうなる空気は現在お出ししている方にも出しておいたっす。それに鳥籠の転換期は私達っすからね」
「…だから、そこまでの情報は好き放題にしていいと」
「そう言づてを預かっているっす。あの魔法使いも回りくどい真似をしてくれるっすよね。私達に声をかける暇があるのなら、自分の弟子に進めと蹴りを入れてきたらいいものを…」
「ふむ。何を言っているか儂はよく分からないのだが…萌黄」
「何っすか?」
「儂らはそこまでファンタジーではないのだが…」
真面目な顔で何を言い出すかと思いきや。とんでもないことを言い出してきたっすね。
「権能がある時点でファンタジーっすよ、翡翠様」
「権能ってファンタジーだったのか?」
「色鳥や世界観含めて何もかもファンタジーっすよ。むしろ何だと思っていたんすか?」
「何か日常に付随している何かかと…」
「んなどこぞの憑者神ご一行じゃないんすから…」
「萌黄は先程から何の話をしているんだ。なんなんだそいつらは」
「詳細は別作品にGOっす。賢者様とか恩返しとか!」
「両方気軽に進めにくい長さじゃないか。そんなものに説明を投げるな」
「あまり詳細に話しすぎると、偉い人に怒られるっす」
「誰だその偉い人というのは」
「…色鳥ってことで」
「おのれ色鳥っ…」
また罪なき色鳥に冤罪が降りかかったっす。
まあいいか。色鳥だし。
「まあ、確かに本編はそのファンタジー要素が強いから異世界ファンタジーにしているんだろうけど、この日常編のジャンルは恋愛にしているじゃないか…」
「それはその…恋愛要素が強いから、こっちにしているだけじゃないっすかね」
「儂と萌黄のいちゃらぶ生活を…大衆に見せろと?」
「そんなことをした記憶はないっすよ!?」
「でも、萌黄は常に儂と同じ布団で寝起きしてくれるし」
「寝てる間に呼吸が止まったことがあるからっすよ」
「ご飯だって、毎食「あ〜ん」してくれる」
「誤嚥が怖いからっすね」
「散歩だって、手を繋ぐどころか、腰に手を添えているぞ!」
「密着していないと、ふらつくからっすね」
「会話も近くで行ってくれる!」
「翡翠様の耳が遠いからっすね」
「じゃ、じゃあ今まで儂が過ごしていたのは、萌黄とのイチャラブ新婚風生活じゃなかったのか…?」
「わくわく介護生活の間違いっすね」
確かに、実態がなければ案外そう言い切れないのもわかるっすけど…。
あんた、私を買ったのを忘れたんすか?新婚生活なんて一番遠いところにいるって分かっていって…。
いや、これは分かっていない顔だ。
まあ、翡翠様が翡翠様になる前の話っすし。
昔のことだから忘れているのも仕方ないかもしれないっすけど…。
…なんだか、寂しいっすね。
十六歳の少女は権能を使い続けたことで、精神が八十歳。
見た目は若くとも物忘れは激しいし、身体は健常な筈なのに精神につられて弱くなっている。
それが翡翠様。かつて私を買った女の子っす。
「萌黄、実は嫌だったりするか?」
「嫌、というのは…」
「介護は嫌かと聞いている。嫌なら、籠守を」
「嫌なわけがないじゃないっすか。私は楽しいっすよ。翡翠様と過ごす毎日」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
穏やかに笑う彼女の隣に腰掛け、今日は何をしようかと話合う。
これは、そんな日常の一端を過ごす私達の物語。
まだまだ、続いて行くっす。