その3:白藤観察日記
私は浅葱。くーちゃん…げふげふ。金糸雀様の専属籠守だよ。
撫子に着替えを強奪されたから、彼女が戻るまで白藤の観察をしておこうと思う。
今の白藤は間違いなく面白い生き物だからね。
「そういえば、白藤」
「な、何かしら!」
「鳩羽様がこの前…「ふふふ。夜の白藤はとても可愛くてね。甘え下手なのは変わりないんだけど、彼女に求めさせるのも一興なんだよ」と」
「は、はとば…っ!?」
勿論これは嘘である。台詞も捏造だ。
白藤が精神的に不安定になった直後ぐらいの話を適当に盛ってみただけ。
当時の会話や最近の傾向から察するに、鳩羽様は結構オープンかつ、白藤のことを大事にしている。
白藤の精神が安定し始めたと言うことは、何らかの形で開き直ったか…はたまたその距離感が示すとおりに、鳩羽様が何かをしたか。
後者の可能性を信じて適当にふっかけてみたのだが…この反応からして間違いなく、ヤッてるなこいつら。
私はわかるんだ。露草がよく軍部の子を食ってたからね。
そういう空気は察することができるようになったんだ!
「まあ、ストレートに聞くんですけど…ヤッたんです?」
「あ、浅葱…それは…」
「合意であれば構わないと私は思いますが、そこんところどうなんです?」
「そ、それは…」
「恩寵を受けし者であろうとも、不合意の行為は咎められる事象ですからね。知ってしまった手前、事実確認を行わなければなりません」
「そ、それは…その…」
「規則にも書いてありました」
白藤は頭を抱え始める。
それもそうだ。規則のことをよくすっぽかしている私に規則のことを指摘されたのだ。
覚えさせるんじゃなかったと言わんばかりに唸る白藤を見上げつつ、私は目を閉じる。
…もしかして私、白藤からアホな子だと思われている?
規則も覚えられないようなポンだと思われている?
まあ、撫子と比べたらポンコツロード一直線だけど、流石に規則は覚えるよ。
軍部でもそうしてきたし、今だってくーちゃんと引き離されないように規則だけは守っている。
ちゃんと覚えているんだぞ、白藤。
…本当だぞ!?
「安心してください、私はその点理解があります。軍部でも多かったですしね」
「そ、そうなの…」
「なので包み隠さずぶつけていただければ」
「最悪な方に転がっていく…」
「はっ…もしかして無理矢理で…?これは至急月白殿に報告を入れなければなりません。白藤殿お辛かったでしょう。安心してください。鳩羽は死なない程度に殴るんで!」
「貴方の死なない程度って実質半殺しでしょ!?大丈夫よ合意よ!むしろ私から誘ってるわよ!」
「…さいですか。お熱いっすね」
「…無表情で言わないで」
「私、表情動かないって最初に言ったではありませんか」
「色々あって忘れていたわ。ごめんなさい」
「いいんですよ。私も悪いことをしました」
「…悪いこと?」
「鳩羽様の台詞、捏造だったんですけど…」
「ねつぞう」
「…もしかして、本当に言っていたんですか、あの人」
「浅葱」
「はい」
「…これが終わったら執務室!」
「げぇ!?」
当然と言えば当然だが、この一件で、白藤の怒りを買ってしまった私は白藤の乾燥が終わった後、執務室でお説教を受けることになった。
鳩羽様の温情で自室に帰ることが許されたのは、朝になってからだった。