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その27:金糸雀様もかく語りき

「さて、素敵なものには素敵なもので返さないといけないわね」

「お願いするわ」


「まずはこれね」

「何この物騒な代物」

「あーちゃんが使っている銃と同じ物を取り寄せてみたの。弾はないわ」


「あ、あのオーダーメイドと噂の…!?工房教えて貰ったの?」

「ええ。おねだりしたらメンテナンス時に連れて行って貰えたわ」

「貴方だからできることね…流石ね、琥珀さん」

「これぐらい朝飯前よ。請求書がそろそろ回ってくるわ。あーちゃんの処理印は入手しているから、書類がきたら…」

「任せなさい。内々で処理をさせて貰うわ」


「流石ね、月白さん」

「これぐらい朝飯前よ。それにお互い出来る仕事をしているだけ。貴方が完璧な仕事をしてくれるなら、私もそれに報いるだけよ」

「…いい仲間を持ったわ」

「それはお互い様よ」


注ぎ終えたワイングラスで乾杯をした後、再びワインを頂く。

理性がまた、戻ってくれる。


「ふう…でも、これ結構重くって。私は扱えないのだけど、貴方はどう?」


月白は絹の手袋を着用し、恐る恐る銃を握り締める。

籠守で、銃を時々扱う立場にはあるが…ここまで重い代物は持ったことがない。


「重いわ…」

「そう…貴方が扱えるのなら、実弾さえ装填したら問題なく使えるから、貴方に譲ろうと思っていたのだけど…」

「隠し球として持つのにも不便な重さ…完全に飾る以外の目的はないわね…」

「それは残念ね。これは私が保管しておくわ。軽量化及び実弾装填不可のレプリカが完成したら、貴方に贈るわ」

「いいの?」

「ええ。朱鷺のことがあるから、レプリカの方がいいでしょう?」

「お気遣いありがとう」

「小さい子供がいるもの。当然の配慮だわ。しかし…これを持って、ぴょんぴょん跳ねながら戦えているあーちゃんってどんな訓練を…?」

「特殊な訓練を積んだとしか…露草は買収しておくわ。その辺の情報収集は任せなさい」

「ありがとう。頼りにしているわ」

「勿論。同じ人を追いかける仲だもの。これからもいい付き合いをしていきましょう」


「貴方って、浅葱だけじゃなく…浅葱の両親も大好きなのよね?」

「ええ。私はかつて茜様…貴方には浅葱のお母様と言った方がわかりやすいかしら。あの方に救われた過去があるから」

「でも、なぜ淡藤おじさま…浅葱のお父さんのことも一緒に?」

「おかしい?」

「ううん。ただ、筋金レベルで男性嫌いの貴方が、淡藤おじさまだけ認めているのは、変な気がして…」


「実はこのピアス。貴方が左耳にだけ身につけているピアスと同じデザインなのだけど…元々は茜様のものだったの」

「そうなんですか?」

「あの人が…茜様に「君さえ良ければ私へ贈ってもいい」と言ってくれたから、これは私の手元に残ったの。茜様との、思い出の品…」

「そうだったの…」


朱鷺が月白の子だと知り、かつて茜…浅葱の母が恩寵を受けし者だった時代に救われた過去がある。

筋金入りの男性嫌いになったきっかけ…全ては一連の流れ。

彼女の過去の詳細は、月白自身から話して貰った浅葱に軽く教えてもらってはいる。

同じ立場になれば、立ち直れないと断言できるような悲劇の話は…琥珀自身やめたい。

自分がするのも嫌だというのもあるが、何より月白自身の為に。


けれど、今の月白を構築したのはその過去なのだ。

茜や淡藤だけでなく、浅葱を大事に思うのも…その出来事がなければなかった事象なのだから。


「じゃあ、私から。昔、淡藤おじさまから聞いた話なのだけど…」

「淡藤さんから?」

「ええ。浅葱はとても茜おばさまに似ているんだ〜って話。せっかくだから聞かせて。私は、茜おばさまのことを知らないから」

「そうねぇ…確かにそっくりよ。ちょっと強引なところとか、我慢しがちなところとか…」


二人の夜の時間は熱を持ちつつも、静かに過ぎていく。

その語らいも、愛も…。


「…くーちゃんと月白殿、また私の話してる…。また何かやらかしたかな」


小部屋から聞き耳を立てている浅葱は知る由もないようだ。

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