智夜と十六夜 8
お姉ちゃんも仕事で疲れているんだけど、お風呂入ってご飯食べた後は、私の話を聞いてくれた。まず、智夜の怪我の事から。
「それ、担任の先生に相談できないの?」
「うーん、智夜が嫌がるんだよね。そういう事を外に出すと”父さんが多分キレる”って言っていた」
あと、智夜の先生は基本的に嫌な奴だ。智夜の財産相続の事を知っていて、平気で嫌みを言うらしい。
「智夜君がその気になってくれるといいんだけれど」と、お姉ちゃん。
「っていうか、ともかくひどいでしょ?」
「ひどい、ひどい」とお姉ちゃん。そう、私はそれが聞きたかったのだ。智夜はひたすら我慢の子なので、時々こっちの言い分が違っているのかと思ってしまう。
「それから、優ちゃんが智夜の事好きなんだって。それ言いに智夜の所に行ったのにさ、殴られてたでしょ?言えなくってさ」
「ちょっと待ってよ、十六夜。それどういう事?」
姉ちゃんが身をのりだしたので、私は最初っから説明した。
「ねえ、それ智夜君に言う気だったの?」
と、姉ちゃんが呆れたように言った。うーん、やっぱり?
「いや、絶対に言ったかどうかはわかんないけど・・・・・・」
でも、智夜の様子次第では、言ったかも?そう言って私は後ろめたくってお姉ちゃんから視線を逸らした。
「十六夜さ、それ言うのはダメでしょ?明らかに」
「だって、優ちゃんってばひどいじゃん。智夜がくれたお菓子に文句付けてさ、しかも、それをだしに智夜と話に行くなんて。それに優ちゃんだってお菓子食べたんだからね!」
私だって理由なしに言っているんじゃないんだから。
「十六夜の言いたい事もわかるけどね」
「あと、私、婚約者だし。それに皆その事知っているし」
「そーだけどね。優ちゃん、よっぽど智夜君の事、気になるんだね~」
姉ちゃんがあまり同情してくれなかったので、私はちょっとがっかりした。いや、かな~り。
「やっぱり、言っちゃダメ?」
「ダメだよ」
姉ちゃんはきっぱりと言った。
「私、智夜の婚約者なんですけど~」
私は炬燵の上の手の上に顎を乗せて、テンション低めの感じで主張してみた。
つきあいのいい姉ちゃんも、こたつの上に顎をのせてくれた。
「それは、わかっているんですけど~」
姉ちゃんは、私と視線を合わせた。
「でも、そこら辺の事がわからないって事はさ、十六夜、本当は智夜君の事、そんなに好きじゃないんじゃない?」
「・・・なんでそんな話になるのよー」
私は、怒る代わりに炬燵の上に突っ伏してしまった。やっぱり智夜の事で精神的にダメージを受けてたみたい。
うちの両親は、そういう事は全然無かったから。