智夜と十六夜 6
朝、待ち合わせ場所に智夜が来なかった。気になったけれど、遅刻する訳にもいかなかったから帰りに寄っていく事にした。
午前の授業が終わって、昼休みになって、京ちゃんが私を探しに来た。中学の頃からの友達なんだけど残念なことにクラスは分かれてしまった。
「ねえ、十六夜、ちょっと話があるんだけど」
「うん、わかった」
私はちょっとワクワクして京ちゃんについて廊下の端まで行った。一体何だろう。
「優ちゃんの事なんだけど」
「うん、どうかしたの?」
「昨日、智夜君の所まで行ったらしいよ」
「えー!」
声大きいよ、十六夜、と京ちゃんが顔をしかめた。
「なに、それ。一体何で優ちゃんが智夜の所に行ったの?」
「なんか、誕生日のプレゼントがお菓子ってあんまりだから、って言いにいったらしーよ」
と、京ちゃんが言いづらそうに言った。
「な・に・そ・れ」
私はかなり頭に来た。大きなお世話だっていうか、そんなに優ちゃんがわからず屋だとは思わなかった。
「それで、ね」
「いや、私それ聞き捨てならないから。優ちゃんにはそこら辺ちゃんと言うからね。京ちゃんが言ったって言わないけど」
「十六夜が知っているっていうだけで、バレバレでしょ」
京ちゃんがちょっと迷惑そうに言った。
「それで、智夜君何も言っていなかった?」
「昨日から会っていないの。でも、智夜そういう事は私に言わないかも。だから教えてくれて助かったよ。有り難うね、京ちゃん!」
「十六夜!」
まだいかないでよ、と京ちゃんが文句を言った。
「それで、えみちゃんが言うには、優ちゃんはどうも前から智夜君の事が気になっていたみたいなんだって。昨日も十六夜の為っていうよりも智夜君と話したかったらしいよ。”智夜君が普通に話してくれた”ってすごい喜んでいたらしいから」
私はあまりびっくりしてしまって返事ができなかった。
「・・・・だから、あまり優ちゃんにはきつく当たらない方がいいよ。それで、勿論、えみちゃんは、”絶対喋らない”っていう条件でその話、聞いたんだからね」
そう言って、念を押すと、京ちゃんは時間だからって教室に戻ろうとした。
「いや、ちょっと待ってよ、京ちゃん、私どうしよう」
「どうしようって、私もわかんないよ。でも、考えがまとまるまで待った方がいいと思うよ。とりあえず、優香ちゃんに怒鳴ったりはしない方がいいって」
「う、うん」
急に教室に戻るのが嫌になったけれど、私はしょうがなく教室に戻った。




