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智夜と十六夜  作者: 千夏
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智夜と十六夜 53

 僕は三田さんに連絡をとって、財産の事で会って欲しいと頼んだ。それから、進路担当の先生が時間をとれたので、就職の事について話を聞いた。説明をどうしようかと悩んだんだけれども、”家庭の事情で進学が厳しいので”と言ったらそれ以上深くは聞かれなかった。就職状況につて手短に説明してくれて、最後に”頑張ってね”と言ってくれた。忙しかったからかもしれないけれど、皮肉や精神論無しの簡潔な説明にほっとした。

 家に帰ると、母は不機嫌だったけれども、とりあえず夕食は食べさせてくれた。

「智夜、財産は本当にもらわないつもりなの?」

「そのつもりだよ」

「三田さんにはもう話をしたの?」

「まだ、これから」

「そう・・・。考え直す気はないの?」

「ないよ」

母は黙り込んだ。

「でも、ずっと貰うつもりだったんでしょう?何で気が変わったの?」

十六夜との婚約の件を持ち出すつもりはなかった。話がこじれては困る。

「望月の屋敷が買い戻せないなら、僕は元々財産は要らなかったんだ。自分で稼いだお金でなければ、僕は要らない」

自分で言うのも何だけれども、あまり本当の事のように聞こえない。でもこの線で押し通すより外無いだろう。


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