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智夜と十六夜 5
放課後、高校の門をでると、声をかけられた。
「智夜くん?」
僕はその女の子の顔を知っていた。確か、十六夜の友達だ。
「そうだけど」
「ねえ、十六夜の彼、なんでしょ?」
僕は頷いた。
「ねえ、高校にもなって、お誕生日にお菓子はないんじゃない?・・・・・・十六夜はいい子だからさ、可愛そうで言いにきたの、それだけ!」
そう言って、その女の子は走っていってしまった。
十六夜が”お菓子がいいの”って言ったら、それはお菓子が欲しいって事だ。僕はそれはよくわかっていたけれど、やっぱり気分は落ち込んでしまった。
悪い事は続くものだ。家に帰ると、時間が早いというのに、父がもう帰宅していた。




