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智夜と十六夜 46
「言っちゃ悪いけど、あんな田舎の屋敷なのにね」
「う、うん。でも、立派なんだって。母さんが言っていた」
「そうなんだ。きっと手入れも大変なんでしょ?」
「よく知らないけど、多分」
「まあ、残念だけどさ。しょうがないんじゃない?もともと智夜が住みたいって訳じゃなかったんだし」
「そうだね・・・」
私は、智夜のお母さんとの会話を思い出した。
「そう言えば、智夜のお母さんとこの前会ってさ、相続の事で何か知らない?って聞かれたんだけど」
「え?」
智夜はちょっと驚いた顔をした。
「何て言っていた?」
「うーん、”智夜が何か相続の事に関して言っていませんでしたか”って」
「そうなんだ」
「それで、よくわからなかったから、もし望月の屋敷が買い戻せるようなら、買い戻したいみたいですよ、って言ったんだけれど。そう言えばもしかしてお母さん、あのアパートから引っ越したいんじゃない?」
「そうかも知れない。でも絶対に父が承知しないと思う」
「それは、それで気の毒だね」
引っ越したいんじゃなくって、広い立派な家に住みたいのかもと、私は思ったけれど智夜には言わなかった。屋敷が売りに出されていなければ、どうしようもないものね。




