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智夜と十六夜 43
僕は祖父の事を母に聞いてみる事にした。祖父は父を勘当しているので、孫の僕の事にも関心を向けない。祖母は、会える時には可愛がってくれたけれども。
祖父の顔を最後に見てからもう大分経つ。もしかしたら祖父は会っても僕の事がわからないかもしれない。
「母さん、もし仮に僕が財産を譲られて、望月の屋敷を買い戻したとしたら、おじいちゃんは喜ぶかな?」
「なに、何の話なの? 屋敷を買い戻すつもりなの?」
母は苛ただしそうに言った。
「もし、仮にという話だけれど」
「そう、それはおじいちゃんは喜ぶでしょうね」
「仮に屋敷に一人で住むことになっても?」
「そうね・・・」
母は少し考えたが、こう答えた。
「今でも一人なんだし、構わないんじゃないかしら。そうね、でも屋敷を買い戻すんなら、私達が住みたいわ」
「父さんが嫌がるよ」
「家出したって言ったって昔の話じゃない。何を今更。私は広い家に住みたいわ」
母はうんざりしたようにそう言った。