智夜と十六夜 4
「ねえ、十六夜って智夜君の事甘やかしすぎじゃない?」
智夜と私が婚約する予定って事と、智夜がそのうち莫大な財産を相続する、かもしれないっていう事はここら辺では有名な話だった。だから、みんな智夜の事は公認の私の彼って事になっている。
「智夜には私がそう頼んでいるんだから」
私は優ちゃんにそう言った。それから少しムッとした。智夜の事は結構話しているのに、まだあんまり話が通じない。
「でもね、そんな事を言っていると、お金持ちになってもこのまんまかもよ」
そう言って優ちゃんはお菓子の入った箱を振ってみせた。中には私の好きなイチゴ味のお菓子が入っていた。智夜からのお誕生日のプレゼントである。
「智夜に限ってそれあり得ないから」
お菓子のプレゼントは、保育園の時から。智夜が何かでもらったイチゴのポッキーを一箱とっておいてくれたのだ。すごく嬉しかったのを覚えている。
それから毎年リクエストしたので、家族の間では笑い話になった。小学校も高学年になると、智夜はやっぱりお菓子はマズイと思ったのか、毎年何がいいか聞いてくるんだけれど、私はイチゴのポッキーで押し通して、現在に至っている。
智夜もポッキーだけっていうのは抵抗があったらしく、イチゴ味のお菓子を詰め合わせてプレゼントしてくれるようになった。
中学の時は、智夜のくれたお菓子を友達と食べて、”智夜って優しいでしょ?”って自慢していたんだけど。高校にもなると、少し子供っぽいと思われたかなあ。
でも、智夜のくれたお菓子を智夜の自慢をしながら食べるのが誕生日の楽しみだったので、無理矢理、自慢しながら食べる。なんだかんだ言ってみんなお菓子は嫌いじゃなかったのでその場は”智夜って優しいね”っていう結論にしてもらった。