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智夜と十六夜 35
「三田さんから連絡があったわよ」
帰ると、母が僕にそう言った。相続が早まるっていう話をしてから、母は僕と三田さんの話を前より気にするようになった。
「水曜辺りにどうかって」
僕は頷いた。部活にも入っていないので特に不都合は無い。
僕の曾曾祖父の時代から、長い時間がたってしまって、譲るときの条件など忘れられても当たり前の気がする。三田さんは財産を上手に管理し、増やしたけれども、反対に一文無しになっていても不思議はなかったのだし。
三田さんは事業が駄目になる前は社長としての報酬をもらっていたし、その後、財産を管理するに当たっては、管理に対する報酬を勿論貰っている。
だから、僕に財産を譲ったからといってお金に困る訳では無い。でも、やっぱり自分の子供や孫に譲りたいのではないだろうか。
僕は母にその事をどう思うか聞いてみようか迷ったけれども、結局聞かなかった。母にこういう相談をしても困るだけだろうし、得る所は無いだろう。




