智夜と十六夜 25
僕の家は、色々とトラブルがあったせいで親戚づきあいは殆どない。僕が”親戚”と聞いてイメージするのは三田さんと、十六夜のお姉さんの春恵さんだ。年上のせいかもしれないけれども十六夜よりもずっとしっかりしている人だ。十六夜とはとても仲がいい。
「十六夜、お菓子買ってきてくれたね?お茶淹れるからお皿にだして」
「わかった。お姉ちゃんの好きなお菓子ばっかり買ってきたから楽しみにしていてね」
「あのね、十六夜、智夜君がお客様なんだから、智夜君の好きなのを買うのが本当でしょ?」
「またまた、心にも無いこと言っちゃって。見てみる?」
十六夜が小さなテーブルに買い物袋の中身をバサバサッとあけた。
春恵さんはお菓子を見て微妙な顔をしている。柿の種とピーナッツ、チーズ入りの鱈、ポテトチップス。
「・・・確かに姉ちゃん好きだよ?でもさ、これ私がサワー飲むときに食べる、おつまみなんだけど」
「えー。好きで食べていたんじゃないの?」
「確かに、嫌いじゃ、ないんだけど。でも次はせめてお団子とか、大福とかシュークリームとかロールケーキとかそういうのにしてくれる?」
春恵さんは呆れたようにそう言った。
「ごめんね、智夜君。とりあえずある物で我慢してね」
そう言って春恵さんと十六夜はお茶を淹れて、お菓子を皿に出してくれた。
”婚約”についての詳しい事を確認しなくては。どうやって切りだそうか迷っていると、春恵さんが口を開いた。
「婚約の件なんだけれど、本当は社会人になってからにして欲しかったんだよね。十六夜はこんなだし」
「何よ、それ。私のせいなの?」
「私もどうしようかと考えたんだけれど、やっぱり、もし十六夜との婚約を真面目に考えるならやっぱり智夜君が社会人になってからにして欲しいんだ。まあ、でもお金が欲しいっていう気持ちはわかるんだけれどね。・・・でも、智夜君は遺産を相続したら、何かしたい事があるの?」
僕は迷ったけれど、正直に言う事にした。
「望月家の屋敷を買い戻せたら、と思っています」




