智夜と十六夜 22
姉ちゃんもたまにはもう少し遠慮してくれると嬉しいんだけどな。
「川原君ね・・・」
正直言うと、うわ、言いづらい。一番初めに好きになったのは川原君だと思う。転校しちゃった元同級生。
話しているだけで凄く楽しかった。意識していたから自分から話しかけるのは無理だったけど。話せるだけで今日はいい日だったなって思っていた。
転校してしまう最後の日、私は川原君と本当に偶然に帰りが一緒になった。滅茶苦茶嬉しかった。智夜も一緒だったけど、ごめん、川原君とは最後だったから智夜無視して話してしまってフォローもしなかった。
智夜がしびれを切らして帰ってしまっても私と川原君はしばらく話をしていた。
「今度、転校先に遊びに来てよ」
最後に川原君は明るくそう言ってバイバイって手を振った。
えーと、以下は黒歴史なんだけど、私は家族にも智夜にも内緒で川原君に会いに行ってしまった。あははは。
電車で2時間くらいだったかな。京ちゃんに頼んで私と遊んでいる事にしてもらった。
事前に連絡をしなかったのでびっくりしたと思うけど、川原君は嬉しそうにしてくれた。川原君は友達と一緒だったから少しだけ話してもう帰らなきゃって言って帰ってきてしまったんだけどね。
えーとね、その時、川原君がちょっと自慢げに友達に言っているの聞こえちゃったんだ。
「藤野さん、多分来るって言っただろ?」
それを聞いて私はちょっと思ってしまった。川原君は私の事それ程好きじゃなかったんだなって。そう思ったら気持ちがやっぱり少し冷めた、かな。
それですぐに智夜とって訳では勿論ない。でも、高校分かれて思ったんだ。智夜ってやっぱり思いやりがあって優しいって。三田さんに聞かれた事もあったし、私も自問自答を繰り返してちょっとづつ決心を固めていた。今は本当に婚約してもいいと思っている。
だから、私は姉ちゃんにこう答えた。
「川原君の事は忘れてくれる? それから姉ちゃん、明日智夜に会ってね?放課後連れてくるから」
「そうなの? じゃ、部屋片づけておくよ。智夜君が来るんなら、帰りに何かお菓子を買ってきてね」
「はーい」
何か悪い気がするから姉ちゃん好みのお菓子を買ってこよう。姉ちゃんは休みの日は何にもしないって決めているんだ。本当はね。