智夜と十六夜 20
「明日は、休みだ~」
姉ちゃんは帰ってくると凄く嬉しそうに言った。
「話があるんだけど、後で聞いてくれる?」
「いいよ、いいよ」
姉ちゃんはそう言ってお風呂に入った。私は昨日の残り物を適当に暖めて食卓に並べた。
姉ちゃんが風呂から上がるのを待って、一緒に夕飯を食べた。相談は落ち着いてから。しっかり聞いてもらわないとね。
食後のお茶を飲みながら、私は姉ちゃんに相談を聞いてもらった。
「智夜との婚約の件なんだけどね、三田さんが財産の譲渡の手続きをしたいんだって。それで、婚約の件をどうするか決めなきゃいけないんだ」
「でも財産の譲渡って智夜君が成人してからって話じゃなかった?」
「三田さんが体を悪くしたみたいなの。それで譲渡の手続きを始めたいんだって。時間がかかるから」
「ふーん、そうなんだ」
「それでね、智夜との事なんだけど」
私はそこで言葉を切った。姉ちゃんに賛成してもらいたいか反対してもらいたいか微妙な所だ。
「智夜との事なんだけどね、えーと、正式に婚約してもいいかなって思っているんだけど」
「そうなんだ・・・。そうだね、まあ、お金の事はとりあえずおいて置くとして、十六夜は智夜君と将来結婚するつもりなの?」
姉ちゃんが反対してくれれば、返って話しやすいんだけどな。
「姉ちゃんは智夜君はいい子だと思うよ。それに智夜君は十六夜の事を本当に好きだと思う」
姉ちゃんはお茶を飲んで一息ついた。
「でも、十六夜はどうなのかな? ・・・例えば、川原君の方が実は好みだったとか」