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智夜と十六夜  作者: 千夏
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智夜と十六夜 2

 智夜は、自分の事が嫌いみたい。私は智夜の事結構好きなんだけど。でも、そう言っても、智夜はあまり本気にしない。

 智夜は考えすぎて、自分の意見がどっかにいってしまう。私はどっちかっていうと、自分の意見をまず言ってしまうんだけどね。それでトラブルになった事は、なくはない。まあ、でも周りもいい加減あきらめてくれるし。十六夜はああいう奴だからって。

 智夜の家は、お父さんが暗くって、家の中が暗くなってしまっていて気の毒だと思う。家計が苦しいのはそうなんだと思うんだけれど、あそこはお母さんが家にいるからね。家の中は大概とても綺麗に片づいている。うちの方が結構滅茶苦茶だと思うんだけど。

 私の家は、親が二人ともわりと早くに亡くなってしまって。頼れる親戚も居なかったので、その後は年が6つ上のお姉ちゃんが育ててくれた。今は看護婦さんになったお姉ちゃんと一緒に暮らしている。部屋の中はまあ、あんまり片づいていない。お姉ちゃんは仕事で大変だし、私も学校から帰ると結構くたびれているし。普通の日は適当な夕飯作っておしまい。温かくって食べられればOK。

 親がなくなる前に病院に長く入院していたから、貯金とか保険金とかはそっちの支払いでかなりなくなってしまった。残りは、お姉ちゃんの看護学校の費用とか、私の高校の授業料とか。私は近くの私立高校に行っている。気が引けたんだけど、公立が評判すごく悪くって行きたくなかったんだよね。あと、おバカな学校だったから、勉強全然しなくってよかったし。

 お姉ちゃんは、働くのが好きみたいで、文句を言いつつ、休まず元気に病院に行っている。給料日には気前よく、ケーキとか買ってきてくれる。大変そうだけど、大学に行くのも嫌なので私も看護婦さんになろうかと思っている。

 この前、お姉ちゃんにそう言ったら、「十六夜ならできるよ」って言ってくれた。

 智夜は莫大な財産を継ぐ予定で、智夜と結婚すれば働かなくてもいいんじゃないって言う人もいる。私も、それは思いっきりそう思った。

 でも、お姉ちゃんに言わせると、まだ手に入ってもいないお金をあてにする事程、バカバカしい事は無いそうだ。

「そんな事を考えるより、ちゃんと自分の将来設計をした方がいいよ。うち、親いないんだし」

お姉ちゃんにそう言われて、私もその意見がまっとうだと思った。智夜の家を見ていると、お姉ちゃんの意見の正しさがよくわかる。あの家は、将来智夜が相続する筈の財産のせいで歯車が狂ってしまっている感じ。


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