智夜と十六夜 18
「三田さんから連絡があったんだ。財産の譲渡を早めたいっていう話だった」
智夜はそう言って、暗い顔をした。
「早めたいってどうして?」
「うん。・・・この前の健康診断で異常が見つかって、それで法律上の手続きを早めるっていう話なんだ」
「そうなんだ」
私もちょっとショックだった。一度会っただけだけど三田さん、元気そうに見えたんだけどな。
私達はしばらく黙って歩いた。
「智夜、大丈夫?」
「うん、そうだね・・・」
智夜は大丈夫とは言わなかった。三田さんは智夜が好きで、心の底で頼りにしていた人だから。
智夜が信頼している大人はただでさえ少ないのに。周りの大人が智夜をもう少し公平に扱ってくれると智夜も信頼できる人が増えるのにね。
「それで、十六夜が僕との婚約の事をどうするつもりか確認したいんだ」
智夜は感情を押さえた声で言った。ごめんね、智夜。三田さんの事で辛いよね。
婚約の件は、前からちょっとづつ考えて答えは固まっている、と思う。でもやっぱり姉ちゃんと話してから答えたいな。
「うん、わかったよ。姉ちゃんとも話をしたいから明日返事をするって事でいい?」
智夜は少し驚いた顔をした。
「そんなに急がなくっても大丈夫だよ。それに明日は部活の日じゃなかったっけ?」
「部活は、サボります」
私はそう宣言して、ちょっと豪華な気分に浸った。サボっても誰も文句は言わないだろう。多分。




