智夜と十六夜 17
三田さんからの僕への連絡は当然、家に電話で来る。連絡が来た後の家の中はとても険悪な状態だ。
でも、僕は三田さんと話すのが楽しみだったので、あまり気にならなかった。三田さんは僕の祖父より2才下で、もうかなりの高齢だけれども矍鑠としている。
僕の祖父にはいい感情を持っていないと思うけれど、僕の前では悪口を言ったことはない。親切にしてくれている。
「やあ、よく来てくれたね」
三田さんはそう言って椅子から立とうとした。僕はこの前の十六夜との会話を思い出した。
「あの、どうぞそのまま座っていて下さい」
言ってから返って失礼だったかもしれないと思ったけれども、三田さんはにっこり笑ってくれた。
「気を使わせてすまないね。ではそこの椅子を運んで来て君も座ってくれないかな」
「はい」
僕は言われた通りに椅子を運んで来て三田さんの向かいに座った。椅子の高さはちょうど良かった。もしかしたら親しい人とはいつもこうやって話しているのかもしれない。
「さてと、財産の譲渡の件だがこちらの都合で法律上の手続きを急ぎたいと思っているんだ」
「何かあったんですか?」
元々は、成人してからと言う話になっていた。一体どうしたのだろう。
「ふむ、実はこの前の健康診断で異常がみつかってね。大した事では無いのだが、念には念をいれて時間と手間のかかる事は早めに済ませてしまいたくなってね」
僕はショックだった。三田さんはいつも元気そうに見えたから。
「私も年だからね。この年になると体に異常が無い方が珍しい。気にしないでくれ」
三田さんはそう言って笑った。僕は何て言っていいのかわからなかった。三田さんの体は大丈夫なのだろうか。
「それで、譲渡の手続きを早めたい。藤野さんの都合も聞いておいてくれるかな」
近いうちにまた連絡するから、と三田さんは言った。




