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智夜と十六夜  作者: 千夏
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智夜と十六夜 16

私も三田さんの事は知っている。高校にあがった時に智夜と一緒に一度会った事がある。穏やかな感じの上品なお爺さんだったけど、やっぱりちょっと怖かったかな。

 大きな仕事机に座っていたけれど、私達が入っていくと、椅子から立って机を回ってこちらに歩いてきてくれた。杖をついていたので、後になって智夜と”そのまま座っていて下さい”って言えば良かったね、って話したのを覚えている。

「藤野十六夜さんだね、初めまして」と、三田さんは私の方を見て言った。

「初めまして」と、私は言ってぺこりと頭を下げた。

「そこに座って下さい」

執務机の前に応接セットがあったので私達はそこに座った。

「二人とも、高校に無事に入学したそうだね、おめでとう」

 私は何となく居心地が悪かった。智夜の方をちょっと見てみる。智夜は前に三田さんに会った事があるから、私ほど緊張していないみたい。

 三田さんは頷いて話を続けた。

「藤野さんにも一度お会いしておきたくてね。ご迷惑でなければよかったのだが」

「いいえ、迷惑だなんてとんでもない」、そう言って私は首を横に振った。

「さて、財産の譲渡の件だ。知っていると思うが、私は智夜君の曾曾祖父にあたる人から、智夜君へのの財産を預かっている。事業自体は大分前に売却してしまったが。・・・もし続いていれば是非智夜君に継いで欲しい所だったのだがね」

三田さんは残念そうにそう言った。

「事業を売却した分の財産は、智夜君に譲る予定だ。私が事業を引き継いだ時には、君達の婚約を財産譲渡の条件にして欲しいとの事だった。しかし、もうすっかり時代が違ってしまっているからね。形だけ婚約して、財産を継いでから婚約解消、という事になってしまっても私は仕方ないと思っている」

 三田さんはそう言った。私は意外だった。何となく結婚は前提だと言われるのかと思っていたから。ま、嫌なら断ればいんだよ、と親と姉ちゃんからは言われていたけれどね。

「藤野さんはどういう風に考えているのか、よければ聞かせてもらえないだろうか。勿論、あくまで現時点での意見でという事で構わない」 

「えーと、いえ、すみません、ちょっと急にそう言われても・・・」

私は下を向いてしまった。

「それはそうだ。無理を言ってすまなかったね」

 三田さんは穏やかにそう言った。特にがっかりされたという感じでもなかったけれど、私はこの件に関してあまり真剣に考えていなかった事がばれてしまったようで、恥ずかしかった。

 私はそれからちょっとづつ智夜との事を真剣に考え始めた。時々はお姉ちゃんや友達に相談しながら。

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