智夜と十六夜 13
僕は十六夜の好きだった人を知っている。でもその人は中学の時に遠くに転校してしまったので、十六夜の恋愛は中途半端なまま終わってしまった。
十六夜がその同級生の男の子の事を意識しているのに気がついたのは、僕だけでは無かったと思う。その人と話している時は、十六夜はとても嬉しそうだった。
十六夜に、その人の事を好きかどうか聞いた事がある。十六夜は”別に好きじゃないよ”って言った。何となく嬉しそうに。
その人の転校は急な話だった。十六夜はその話を聞いた後、落ち着きがなくなった。でも十六夜はその人の事を好きだと認めていなかったので特に何もしようとはしなかった。
だから、十六夜とその人の帰りが一緒になったのは本当に偶然だった。十六夜はとても嬉しそうだった。その人との分かれ道の所まで来ても、話が弾んでそのままずっと立ち話をしていた。
僕は適当な所で”先に帰るね”って言ってその場を離れた。十六夜は躊躇ったけれどもそのままその人と話を続けた。
十六夜の邪魔をするつもりは全く無かった。でも十六夜のいない帰り道はやっぱり淋しかった。十六夜が後から僕を追いかけてきてくれれば、どんなに嬉しかっただろう。