智夜と十六夜 11
十六夜の友達の木田さんは、時々校門の所で僕を待っているようになった。話は十六夜の事。僕も十六夜の事は知りたいんだけれど、やはりこれはいくら何でも不自然だ。
十六夜もこの事を知らない訳ではないと思う。でも、何も言わないって事は・・・友達同士という事なんだろう。木田さんには悪いけれど、はっきりと断る事にしよう。
僕は十六夜の事が好きでたまらないから、木田さんの気持ちも何となく想像がつく気がする。もし婚約者同士でなかったら、僕は十六夜に気持ちを打ち明けられなかったかもしれない。
「こんにちは、智夜君」
木田さんが声をかけてきた。嬉しそうな様子なので、気が引ける。でも、どうしようもない事だから。
「こんにちは」
僕はそう返事をして立ち止まった。
「途中まで一緒にいいかな?」と、木田さん。
「そうだね、途中まで」
僕と木田さんは一緒に歩いた。木田さんは、十六夜の事を色々話してくれる。
今日、休み時間にみんなで雑誌を読んだんだけれど、ナチュラルな感じの大きめのアクセが好きって言ってたよ、それでね、服の方はね、えーと、説明が難しいんだけれど、あのお店に居る髪の長い人見える?あんな感じの服がいいんだって。
分かれ道に来たので、僕は話を切りだした。
「木田さん、話があるんだ」
「・・・なに?」
「次は、一緒に帰れないんだ、悪いけど」
「・・・私の話、つまらなかった?」
「楽しいよ。でも、一緒には帰れないんだ」
「そう、なんだ」
木田さんは下を向いてしまった。僕は木田さんが言葉を選んでいるのがわかったので、そのまま待っていた。
「じゃあ、またそのうち、ね」
しばらくして木田さんはそう言うと、そのまま早足で行ってしまった。
僕は反応できなかった。”そのうちね”と言ったら嘘になってしまうから。