智夜と十六夜 10
「ねえ、十六夜」
「なーに、京ちゃん」
私は、窓の外を見ながら、ボーッとしていた。何となくお腹が空いてきたので頭の中は家にあるお菓子の事で占められていた。姉ちゃんが病院の売店で買ってきたアンパン。
タイミング悪くって食べられなかったとかで家にそのまま持って帰ってきてくれたのだ。”食べていいよ”って言っていたから、帰ったら遠慮なく食べる事にしよう。
「優香ちゃんの事なんだけど」
「うーん」
お姉ちゃんに釘をさされてから、智夜に優ちゃんの事を聞くのは泣く泣く諦めた。本当の事を言うと、智夜の反応が知りたくってたまらない。でも、やっぱりそういう事すると、女がすたるからね。
「一昨日、部活に来なかったでしょ?」
「そうだったね」
私と、京ちゃんと優ちゃんは同じバトミントン部だ。月、水、金が練習日。
「あのね、優ちゃんはまた智夜君の所に行ったらしいよ」
「・・・・・・」
「十六夜?」
「やっぱり私、怒っていい?怒っていいよね?」
一回で気が済まなかったって事はやっぱり優ちゃんは智夜の事が気になってしょうがないって事でしょ?
「うん、まあ、怒っても誰も怒らないと思うけど」
京ちゃんは歯切れ悪い感じで言った。
「・・・思うけど?」
「えーとね、えみちゃんが言うには、優ちゃんに”智夜君の事、好きなんでしょ?”って聞いても、すごい否定するんだって。優ちゃんがそういう状態なのに、智夜君に言うのは、ちょっと優ちゃんが可愛そうかなって・・・」
私はやたらとそこら辺の壁を蹴りたくなったけど、我慢した。今日は早めに部活に行って、ラケットにおもいっきりこの怒りをぶつけよう。