魔のトライアングル的ベランダ
家の鍵を落としてしまった。
この歳でまだ独身だが、将来を見据えて購入した一軒家。
夕方近く。小雨の中、立ち尽くす。
「はあぁ、ツイテない……」
絶望感いっぱいで自宅を見上げる。ふと、ベランダが見えた。
(そういえば……)
もしかして二階の窓が開いているかも知れない。俺は色めき立った。
ベランダまでは届かないが、そこそこまでかかるハシゴもある。
俺はハシゴをベランダへと立てかけ、登り始めた。
だが、もう少しでベランダの手すりに手が届く、というところで、ぐらりと体勢を崩してしまった。
「うわあっやべえ!」
俺は慌ててベランダの手すりに向かって飛んだ。
バタンと倒れるハシゴ。
宙吊りになる。だが、こう見えてまだアラサー。体力には自信がある。
「くっそお……うおお」
普段からのジム通いが功を奏したのか、ベランダへとよじ登ることができた。
「はあぁ良かった……」
しかし、こんな姿を通りすがりの人に見られでもしたら、今流行りの闇バイト、すわ空き巣かと間違えられてしまう。
しかも、小雨が続いていて、地味に濡れている。早く中へ入らなくては風邪をひく。
「危なかったけど、ハシゴがあって助かったなあ」
ベランダの窓の取っ手に手をかけ、横に滑らせようとすると、
開かない。
「マジか……」
一瞬時が止まった。
「マジかよ、もーー!!」
自分の不運に怒りが込み上げる。こんな仕打ちあんまりだ。
どうしよう。下に降りようとしてもハシゴが倒れてしまっていて降りられない。
窓を割って入ろうにも、なんの道具もない。カバンは下で、スマホもその中。
「俺、アホだ……」
泣けてくる。しかもお腹も空いてきた。思案しているうちに、時間だけは過ぎていく。
すると、裏の方でガチャンと音がした。
(なんだ?)
薄暗がりの中、ベランダから階下や部屋の中を覗き込んでいると。
さっと誰かが通った気がした。部屋の中に人影?
俺は万に一つと、窓をドンドンと叩いた。
「助けてください! ここ開けてください!」
人影がこちらに来て、窓の鍵を開けてくれた。カラカラと開けて中に入る。
「あ〜助かったあ。ありがとうございます。俺、鍵を落としちゃって。二階ならこの窓が開いてるかなって思ってよじ登ったんですけど……俺、今日って厄日ですかね?」
はははっと情けなく笑った。
その後。
俺はぐるぐるとヒモで縛られて、家にあった現金5万円とそんな高級でもない時計を奪われたのだった。
今度は家から出られないとは。
厄日だな、俺。




