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魔のトライアングル的ベランダ

作者: 三千
掲載日:2024/12/13


家の鍵を落としてしまった。


この歳でまだ独身だが、将来を見据えて購入した一軒家。


夕方近く。小雨の中、立ち尽くす。


「はあぁ、ツイテない……」


絶望感いっぱいで自宅を見上げる。ふと、ベランダが見えた。


(そういえば……)


もしかして二階の窓が開いているかも知れない。俺は色めき立った。


ベランダまでは届かないが、そこそこまでかかるハシゴもある。


俺はハシゴをベランダへと立てかけ、登り始めた。


だが、もう少しでベランダの手すりに手が届く、というところで、ぐらりと体勢を崩してしまった。


「うわあっやべえ!」


俺は慌ててベランダの手すりに向かって飛んだ。


バタンと倒れるハシゴ。


宙吊りになる。だが、こう見えてまだアラサー。体力には自信がある。


「くっそお……うおお」


普段からのジム通いが功を奏したのか、ベランダへとよじ登ることができた。


「はあぁ良かった……」


しかし、こんな姿を通りすがりの人に見られでもしたら、今流行りの闇バイト、すわ空き巣かと間違えられてしまう。


しかも、小雨が続いていて、地味に濡れている。早く中へ入らなくては風邪をひく。


「危なかったけど、ハシゴがあって助かったなあ」


ベランダの窓の取っ手に手をかけ、横に滑らせようとすると、


開かない。


「マジか……」


一瞬時が止まった。


「マジかよ、もーー!!」


自分の不運に怒りが込み上げる。こんな仕打ちあんまりだ。


どうしよう。下に降りようとしてもハシゴが倒れてしまっていて降りられない。


窓を割って入ろうにも、なんの道具もない。カバンは下で、スマホもその中。


「俺、アホだ……」


泣けてくる。しかもお腹も空いてきた。思案しているうちに、時間だけは過ぎていく。


すると、裏の方でガチャンと音がした。


(なんだ?)


薄暗がりの中、ベランダから階下や部屋の中を覗き込んでいると。


さっと誰かが通った気がした。部屋の中に人影?

俺は万に一つと、窓をドンドンと叩いた。


「助けてください! ここ開けてください!」


人影がこちらに来て、窓の鍵を開けてくれた。カラカラと開けて中に入る。


「あ〜助かったあ。ありがとうございます。俺、鍵を落としちゃって。二階ならこの窓が開いてるかなって思ってよじ登ったんですけど……俺、今日って厄日ですかね?」


はははっと情けなく笑った。


その後。


俺はぐるぐるとヒモで縛られて、家にあった現金5万円とそんな高級でもない時計を奪われたのだった。


今度は家から出られないとは。

厄日だな、俺。








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― 新着の感想 ―
ラスト。 意外な結末に笑いました。 ショートショートのお手本のよう。 お見事でした。
最後のオチがいいなと思いました。 慌てている様子がそれまでに描かれていて、雨まで降っている。 冷静に考えれば、中に人などいないはずなのに、そこに光を見てしまう。 実は鍵を持っているのも中の人だったり…
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