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第17話~クズでも世界を変えられる!①~

輝木光は志村再を倒すため、己の潜在能力を引き出し、地下のシェルターへ赴く。


友の仇討ちをかけた輝木光と、自身の夢をかけた志村再。

全てをかけた最終決戦が始まった。

志村再は一騎当十。

常人の10倍以上の力を持つ。


元は男子A級、猛田十騎の超能力だ。


「油断はしない! 戦いを楽しむつもりもない! 一撃でお前を始末する!」


超スピードで突きを放つ志村。


「はぁっ!」


その突きを、輝木光は横から受け流し躱し。


「はっ!」


そのまま至近距離の志村に蹴りを放つ。


「くっ!」


仰け反り、志村は回避。


「……なるほどな。その髪、瞳の色。ただのイメチェンって訳ではなさそうだ」


「私の一挙手一投足、命の一雫まで全て、志村再……お前を殺すために使い果たす」


したつもりだったが、僅かに及ばず右腕から血が吹き出す。


「……。速いな。猛田の自強化をもってしても、ほぼ互角のスピードか」


「自惚れるな。猛田本人なら、今の攻撃を回避できた。お前は超能力をコピーできるが、本人の技術まで奪うことはできない」


「そうだな。そうかもな」


言い終わる間もなく、志村の傷は完治する。

水野恵の超能力だ。


「……。返してもらう。その力。友の誇りを」


「残念ながら不可能だ。人は死んだらそれまでだ。その中で、人の死後も意味を与えられるオレの超能力は何よりも慈悲深い。そうは思わないか?」


「思わない。さっさと死ね」


「ひどい子だな」


「……。クソ、外した」


「!」


志村再は驚愕し振り返る。

輝木光は、目にも止まらぬ速度で志村再の背後へと移動していた。


いくら10倍の身体能力があろうとも、人が電気の速度に追いつくなど至難の業なのだ。


「ぐぉっ……なぜ、生きて……」


すれ違い様に攻撃を受けた志村再の、首筋から伝う血液はそれを証明する。


「……っ」


しかし、人間が『炎へ触れる』こともまた不可能なことで。


「……オレの『超能力殺し』を知っていたのか? だから、わざわざ殴打の直前に電気化を解除した」


カウンターのため、赤井萌の能力を使い炎化していた志村再を殴りつけた輝木光の右腕は、焼け爛れてしまった。


「誰かのためになんて愚か。それは同意だ。でも、最期まで誰かのために生きた、大バカ達がいたみたいでね。私はそのバカどもがたまらなく好きだったんだよ」


「厄介だな。大人しく自爆して死ねばよかったものを」


無論、志村再はすぐに完治する。


「水野恵が最後に送ったメッセージ。それが、オレの超能力に関する内容だった……か。最後に隙を与えたのがミスだったことは認めよう。物事が上手く運び、少しばかり浮かれていた」


「『人は死んだらそれまで』? 確かに昔は私もそう思っていた。だが、今は違うと私は言える。アイツらがいたから、私はこうしてお前に立ち向っている」


「戯言を。言っただろう、『オレのミス』だと。お前がオレに対抗する可能性を残したのは、他ならぬオレ自身だ。死んだ者の功績などではない。死ねば全て終わり。挽回の余地はない、負け犬だ」


「……」


「気に障ったか? だが、感情に流されてはいけないぜ。死んだとはいえこの超能力は強力だ。超能力殺しを持つオレは、物理的な手段でしか殺すことは出来ない。

しかし、炎に変化すれば物理攻撃は効かない。今みたいに灼かれるだけだ。ふふふ。分かるか? 輝木。お前の正解は『逃走』だったんだよ」


「……言ってろ」


輝木光と赤井萌は、固い絆で結ばれていた。

この1ヶ月間、彼女たちは苦楽を共にしてきた。

ゆえに、互いを熟知している。


「……」


「強がるな。もう気づいているんだろ? そうだ。このシェルターの散水器は既に撤去済みだ。

お前たちが今までどんな戦いをしてきたのか? どのように窮地に陥り、そして打破してきたのか。全てオレは把握している」


志村再は他人の超能力を奪う。

誇りを奪う。

そして、思い出さえも奪うのだ。


「分かったか? 輝木、お前はもう詰んでいるんだよ。オレにダメージを与える術が存在しないんだ。オレをこのシェルターから引きずり出すしかない。

でもどうやって? 触れることすら出来やしないのに」


「……」


少し焦る輝木光。

彼女は志村再が能力をコピーできることは知っていたが、超能力に関する記憶もコピーしていることは知らなかった。


触れずに電化製品を操作できる彼女は、攻撃と同時に散水し、そのまま赤井萌の能力を封じて志村再にトドメを刺す予定だった。

それも踏まえて『外した』だったのだ。


どこまで行こうときっと、輝木光は普通の女子大生の精神構造なのだろう。

コピーの対策に目が眩み、他の可能性を深く考えなかったのか。

はたまた、『勝てる』という結論へ縋りたいがゆえに、考えないようにしていたのかもしれない。


記憶のコピーに気づかずとも、カナリアの会と総理大臣が裏で繋がっているのだから、自分たちの弱点は知られている可能性だって多分にある。

それにすら考えが至らない、浅慮な女子大生なのだ。


この可能性に気づき、事前に対策を立てられたかも知れない唯一の人間が、A級では赤井萌だった。

しかし、もう彼女はこの世にいない。


「下手な抵抗はするなよ。オレは、人を苦しめたりするのはイヤなんだ。輝木、オレはお前に感謝こそすれど、別に恨んだり憎んだりしているワケでもないから、楽に死なせてやりたいんだよ」


「身勝手な……」


「だから、逃げるなよ? 今から、親愛な炎で、お前を優しく殺すんだから」


「誰がっ……!」


赤井萌とまともに殴り合って勝てる超能力者は、恐らく存在しない。

それ程までに強大な超能力なのだ。

だからこそ、カナリアの会は彼女のことを常に最も警戒し、必ず対策となる人間を刺客として送り込んでいた。


対する赤井たち女子A級は、刺客のことなど知らなかった。

この一方的な情報アドバンテージを得て、カナリアの会はようやく互角の戦いに至っていた。

それでも、カナリアの会はA級とS級に敗れ、最後は壊滅したが。


しかし、この戦いは違う。

赤井萌の超能力の記憶は、それ即ち女子A級の戦いの記憶。

よって、志村再は輝木光の戦いも知っている。


一方的なアドバンテージで、やっとこさ互角の超能力。

では今回のように、両方に情報アドバンテージが与えられるならば、『敵わない』と結論付けるのも致し方ないことだ。


ゆえに、輝木光は逃げ続けていた。

志村再の放つ炎から。

それ以外に、成す術がないから。


2人が交戦しているこのシェルターは、街一つと言っても過言でない広さがある。

ゆえに、逃げ回るのみの目的であれば十二分に役割を全うできた。


「……チッ。チョコマカと……!」


先ほども書いた通り、『人が電気の速度に追いつくなど不可能』。

よって、志村再は輝木光を捉えられずにいた。


志村再は輝木光を見下しているわけではない。

愚かだなんだと罵りはしていたものの、カナリアの会を潰し、期待通りに伊武有人を殺害した彼女の力を評価している。


「無駄な抵抗をするな。苦しみたくないだろう?」


だから、違和感を覚え始めていた。

そんな彼女が、無意味に時間だけを稼ぐはずはないと理解していた。

なので短期決戦を狙いつつ、絶対にシェルターの外へは出さないと最低限の目標を定めていた。


記憶のコピーを知らない輝木光が、準備を怠り自陣へと入ってきた好機。

今すぐに仕留めるのが、最も容易いと心得ていた。


「『無駄な抵抗』はしていないっ」


本物の赤井萌であれば……10年以上に渡り炎と付き合い続けてきた赤井萌であれば、既に捉えられていたかも知れない。

しかし、志村再は炎と過ごしてたったの数時間。

超能力も、それに関する記憶もコピーしていたが、慣れや反射で行動することができない。

レシピと材料が用意されていても、素人がプロと同じ料理を作ることはできない……と言ったところか。


とにかく、この数十分においては、輝木光は命拾いした。



そして、その数十分が――



のちの歴史を大きく分かつこととなる。



「ッ!?」

『ポツリ』


ノスタルジーな商店街の地面に、斑点が生まれ。


「……あ、雨……だと……!?」


みるみるうちに濃い色が侵略していく。


「バカな!? どれだけ精巧に作られていようと、ここは屋内! 雨が降るなど、物理的にあり得ないこと……」


『ザザーッ……』


志村再の驚愕を他所に、雨足は強まり続ける。


「志村再。人を、誰かを、自分に利用出来るエサくらいにしか思ってないお前には分からないだろう……」


「空に切れ目が……。地上への扉が開いている……」


「お前は他人の超能力を使う。しかし、それだけだ。お前は1人なんだ」


切れ間に人影が現れる。


「サンキュー、御貫さん。これを待っていたんだ」


その正体は。



「男子A級リーダー、雨宮嵐史……。生きていたのか……!」



特殊部隊でも、最強の集団である男子A級のリーダー。

かつて、S級の御貫真に次ぐ戦力と呼ばれた男。


その超能力は、『天候の操作』!


屋内だろうと、彼の望むまま天候は瞬時に変化する!


「輝木ーっ! 連れてきたよ! キミの言う通りだったよ!」


最強のS級である御貫真も切れ間の影に加わり、輝木光に叫ぶ。

自らの超能力も忘れてしまうほどの歓喜に満ちているようだ。


「キミは凄いね! 男子A級たちの記憶をインプットしただけで、雨宮の生存と潜伏場所まで特定したんだもん! 自分じゃ無理だったよ! こう見えて、結構アホだし抜けてるし!」


「ヒカリちゃん……! さすがよ! さすが私の最高の仲間よ……!」


内木遊も影に加わる。


「志村再。私は1人じゃない。私を信じて、共に戦ってくれる仲間がいる。命を賭けて託してくれた仲間がいる!

だから、私は負けない! 私たちの友情は、必ずお前を倒す! 死んだ仲間たちを負け犬になんかさせない!

私がお前を倒して、アイツらの汚名を雪ぎ、生きた価値を証明する!」


これで志村再は炎化を使えない!

形勢逆転か?



赤井萌の能力をコピーしている志村再。

その対策のため、予め男子A級超能力者である雨宮嵐史を連れてきていた輝木光たちだった。

彼の能力で雨を降らせれば、赤井萌の能力は大きく封じられる。


形勢逆転か?


次回に続きます。


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今日は昼間に予定があるので、早めに投稿いたします。

よろしくお願いいたします。

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