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第3話~始動②~

仲間たちと集結しチームを組むことになった輝木光。


しかし、チームとして最初にやることは、仲間たちとの模擬戦だった。


気が進まない輝木光だが、しぶしぶ戦う。


さあ、仲間たちの実力はいかに……?


今回は1人目の仲間、赤井萌と激突!


「では、全員揃ったところで話を始めたいと思う。

今日君たちに集まってもらったのは第一に部隊員同士の顔合わせ、そして第二に君たちに自衛の手段を身につけてもらうためだ」


国井が全員に向けて話を始めた。


「例えば、輝木は昨日カナリアの会の暗殺者と交戦し重傷を負った。

発見が遅ければ死んでいた可能性もあったくらいだ」


隊員の3人がこちらを見て、私は少し照れくさくなる。


「無論、君たちの身を危険に晒すことはでき得る限り回避するが、今後も全く安全だとは保証できない。

だから、君たちには数ヶ月間特殊な訓練を受けてもらう」


私は昨晩の『もっと強くならなくちゃ』もすっかり忘れ、


(訓練……なんかキツそうだなぁ)


と、反射的に苦い顔をした。


「訓練って、具体的には何をするんですかー?」


水野さんが国井に尋ねた。

私も気になる。


「今からそれについて話す」


そう言って、国井はクリップで留められた紙を取り出した。


「この紙に書かれているのは警察のとある特殊部隊に作成を依頼していた、対超能力者用の訓練プログラムだ。

君たちは今後、このプログラムに従って生活してもらう」


「対超能力者用の訓練って、どんなことを……?」


「それについて、今日はスペシャルゲストを呼んである。おい、来てくれ」


私の質問に対し、国井は答えながら呼びかける。

その呼びかけに応じ、奥の扉から30代前半くらいの男が現れた。


「この男は坂佐場(さかさば)と言って、私の大学の後輩だ」


「こんにちは。超能力者の皆さん。坂佐場です」


国井に紹介された坂佐場という男が名乗る。

オフィスカジュアルな格好で髪は短く清潔感がある。


180以上はある大柄な体型だが、人当たりのよさそうな爽やかな笑顔のおかげか、威圧感はない。


「今、坂佐場は警察庁に勤めていてな。この訓練プログラム作成も彼の指揮で行ったんだ」


「け、警察庁……!」


坂佐場の職を知って、内木さんが姿勢を正した。

これは、後で聞いたのだが、内木さんは現職の警察官なのだ。

警察庁の人間に対しての反応としては当然だった。


「えっと、さっき質問してたのは水野恵さん……だったかな? うーん……。逆に僕から質問させてもらうね。何すると思うかな?」


坂佐場が聞き返してきた。


「え、えーっと……。銃の使い方……とかですかね?」


「……うん」


水野さんが答えると坂佐場は意味深に呟き、銃を取り出して私たちに向けた。


(……って、えぇ⁉︎ 銃⁉︎  何考えてるんだ! 取り上げないと!)


すぐに私は磁力を発生させ、坂佐場から銃を奪い取る。


「お見事。……とまあこのように、超能力者を相手取る際に、武器へ頼るのは難しいんだ。

特に銃とかの飛び道具は、ほとんどの超能力者が何かしらの方法で対策しているだろうね。

あ、ちなみに、その銃はニセモノだよ。安心してね」


坂佐場が爽やかな笑顔で言い放つ。


この説明のためだけに、私は超能力を使わさせられたようだ。


磁力を出すのは結構疲れるので、あまり無駄打ちはさせて欲しくない。

具体的には20メートルほどを全力疾走する程度に疲れる。


「つまり、最後に頼れるのは己の肉体。

よって、プログラムは走る、跳ぶと言った身体能力の強化、そして徒手空拳での護身術!

この2つが中心だよ。

これが今から行う訓練の具体的な内容……要するに水野さんの質問の答えってことになるね」


何も悪びれずに坂佐場は続ける。

きっと、超能力者でない坂佐場に気持ちは分からないだろう。


そして、今の運動で喉が渇いてしまった私は、

もはや坂佐場の話より、部屋の隅にある銀色のクーラーボックスへと興味が移っていた。


--------


(何でこんなことになったの……? 全く気が進まない……)


私がこうして愚痴ってる原因は30分ほど前にさかのぼる。


「あの……やっぱりやめましょうよこんなこと……。私たちは同じ部隊に所属することになった仲間じゃないですか。なんで戦う必要があるんですか!」


私は懇願する。


「戦いではない。訓練の一環だ」


しかし国井はキッパリと言い返す。


(最悪っ‼︎)


--------


30分前――。


「戦闘訓練?」


「そうだ。

君たちはちょうど今『お互いの超能力を知らない』状態だ。

だから、君たち同士で戦闘訓練を行い、見知らぬ超能力者と対峙した時どういう行動をするのかを見させてもらう。

無論、今後は部隊員同士の連携のため超能力を明かす必要がある……。

よって、初顔合わせである本日にしかできないことなのだ」


国井がつらつらと説明する。


(えー。昨日津場井と戦ったのに、今日も戦うなんてイヤっすよ……)


やることも意義も理解できたが、私は仲間と戦うのにいまいち気が進まない。


「1対1の形式で行う。

ただし、水野の超能力は全員が知っている上に、負傷者が出た際に迅速に治療する役目があるのでこの訓練から除外する」


(いいなー……。私も回復要員が良かったなぁ)


とか思いながら、部屋の隅に移動する水野さんを見送る。


「……では、まず赤井と輝木からだ。内木は2人の超能力が分からないよう、別室へ移動してくれ」


「は、はい」


内木さんが部屋から出て行った。


「国井先輩。僕もその戦闘訓練、見てていいですか?」


坂佐場が国井に尋ねる。


「あ、あぁ。別にいいが……。仕事に戻らなくて大丈夫か?」


「やった。じゃあ僕も観ていきます。みんな、頑張ってね。あ、仕事なら大丈夫ですよ。今日は午後休ですから」


「それならいいが……。よし、赤井、輝木。準備してくれ」


国井に準備を促されるが、やはりどうにも気合いが入らない。


「アナタは一応恩人ではありますが、ここはお互いに恨みっこなしですわ。訓練ですもの、真剣にやらなくてはなりませんわ」


赤井さんはすごくやる気だ。


「あ、あはは……よろしくお願いします……」


「何ですの? その気の抜けた返事は。

この訓練の必要性は先ほど国井さんにご説明いただいた通りですの。

一切手を抜く気はないので、そのつもりでお願いしますわ」


(やっぱりこの人怖い……)


「2人とも頑張れー!」


水野さんは応援してくれているが、今の私はその気楽さが羨ましくなってしまう……。


--------


――そして今に至る。


(こうなったらやるっきゃない。プロの暗殺者を退けた私の実力を見せてやる!)


私は無理やりではあるが、一旦腹を括ることにした。


……お互いの距離は10mくらい。


赤井さんの超能力は全くもって不明。


未知数の相手に対して不用意に近づくのは危険だろう。

このまま距離を保って攻撃するべきだ。


(さて、ここから攻撃するにはどうしたものか)


私は考える。


……ちょうど赤井さんの頭上に蛍光灯がある。


あれに強い電気を流して破裂させる。


(コンセントは……よし、すぐ横の壁か)


「アナタが言ったんですからね! 悪く思わないでくださいねっ‼︎」


そう言いながら、コンセントに電流を流す!


パァンと音を立て、狙い通り蛍光灯が破裂した。


その破片は赤井さんの頭上へ降り注ぐ!


(大丈夫! 多少のケガなら水野さんが治してくれる! これにてゲームセット!)


私は勝利を掴んだと思ったその時。


「……なるほど」


赤井さんの声が冷静に響いた。


(ゲームセットしていない! 効いてない!?)


私は慌てて赤井さんの方に目を凝らした。


(赤井さんの周辺に蛍光灯の破片がない……? つまり、そもそも当たってないのか……? ……な……何が起きた⁉︎)


「空中で破片が……全て……消えた……のか……!?」


私は完璧に混乱した。


何をされたのかさっぱり分からなかった。


(一体何が……? これは赤井さんの使う超能力によるものなのか……? くっ……)


とにかく、赤井さんの頭上のあの位置に、蛍光灯は1つしかなかった。


今の攻撃はもうできない。


こうなったら床や壁伝いに、赤井さんへ直接電気を流し、感電させ卒倒させるしかない。


近くの床に手を触れて……。


「熱っ!? 」


床のあまりの熱さに反射的に手を離す。


(なんだこれ! 床が真夏の車のシートベルトの金具みたいに熱い!  これじゃ触って電気を流すなんて無理だ!)


「今の挙動を見るに……アナタの超能力……電気を操る……とでも言ったところでしょうか。……だからあんなに手馴れてたんですのね」


「い、いや!? 違いますけど!? ぜ、全然違いますけどっ!?」


……まずい。


赤井さんに私の超能力がバレた。


「電気を流すには、直接物体に触れる必要があるみたいですわね。

ですが、すでにこの部屋にアナタが触れられるものはありませんわ。

全て100度以上に熱されていますもの」


……今ので赤井さんの超能力に大体の見当がついた。


おそらくは、熱を操る超能力だ……。


消えたように見えた蛍光灯の破片は、熱されて空中で蒸発したのだ。


……他に有効な飛び道具があったとしても、破片と同じように彼女には届かない。


しかし、こちらから近づくのは論外。

ガラスを蒸発させる温度なんて、まともに食らえば一瞬で焼肉になってしまう。


(これ、打開策なくないか? どうすれば……)


プロの暗殺者を退けた私をもってしても、有効な対抗手段が思いつかないと思い悩むが……、


(…………そうだ! 逆にこの圧倒的な高温を利用する!)


私の頭に1つの作戦が浮かんだ。



(よし、向こうがしかけてこないうちに攻める!)


私はすぐにそれを実行に移す。


作戦開始と共に、部屋でカチリと言う音がし、辺りは薄暗くなる。


まずは部屋の照明を切ったのだ。


「⁉︎ 照明を……?」


赤井さんは少し驚いた声を出す。


実はこの消灯には特に意味はない。

電気製品のスイッチの切り替えは触れずにできるので、ひとまず撹乱として行ったまでだ。


そして次の段階へ進む。


部屋にある金属製のもので唯一私が触れるもの……私が身につけているカバンやベルトの金具を赤井さんに向けて『投げる』。


ただ投げるだけだ。


しかし、それでも。


「なんのつもりですの……!?」


相手は防御せざるを得ない。


初めて対峙する超能力者が投げた物を自分に近づけるなんてリスクは、誰だって回避したいからだ。


「なんだか分かりませんが、防御ですわ。私に飛び道具は……」


予想通り金具は赤井さんに触れる前に消滅した。


(しかし、冷静に考えると金属を溶かすってヤバい高温だな……)


私は改めて戦くが、今は気にしない。


今はその高温を利用するのだから。


私の目的は奥のクーラーボックス、赤井さん、そして私。


これら全てを、悟られないうちに『一直線に並ばせる』ことだった。


クーラーボックスは金属製だった。


思い切り私の方に引き寄せ、背後から赤井さんにぶつける。


当然重いものを動かしたら自分も少し前に進む。

しかし、それは近くの柱に捕まることで防ぐ。


別に電気を通す目的でなければ、間に袖を挟んで触れれば良い。

これなら熱くはない。


(よし、いけ!)


そして、まもなくクーラーボックスが……赤井さんに着弾した!


「あ、飲み物を……っ! しまった! やられましたわ!」


ボックス内の飲料が一瞬にして蒸発し、体積が膨れ上がる!


そう、まるで爆発するかのように。


まともに食らえば大怪我。


勝負あり、今度こそ私の勝ち――



「……この姿を見せることになるとは思いませんでしたわ。

まあ、今後は味方なので、見せてしまっても問題ないとは思いますが」


「……はぁ?」


しかし、そうはいかなかった。


(なんで……?  ……あ、あぁぁぁ‼︎‼︎ なんだよあれ! 赤井さんの体が炎に包まれて……いや、違う)



赤井さんの『体が炎そのもの』になっているんだ!



(そんなのアリかよ! 明らかに超能力の範囲を逸脱してるだろ!)


私は絶望した。


「クーラーボックスの飲み物を蒸発させ爆発させる発想は、お見事と言えるでしょう。ですが、生憎私に物理的な攻撃は効きませんの」


(ふざけないでいただきたい。じゃあ何なら効くんだよ……!)


……脳裏に『降参』という2文字がよぎる…….。


(何を諦めかけてるんだ……! 手はあるはずだ……! 考えろ……! 考えろ…………)


…………そう自分を奮い立たせるが……。


……何も思い浮かばない……!


それどころか、だんだんと頭に靄がかかったように何も考えられなくなっていく……?



「アナタの周辺の酸素を不完全燃焼で奪いましたわ。もう、今のアナタはまともに考えることすらできないはずですの」


赤井さんの言葉が聞こえるとともに、意識が遠のいていく。


(酸素……を……? なんでもアリだなぁ……。ちくしょう……。私も、もっと強い能力だったらなぁ………………。……………。)



--------


目を覚ましたら医務室のようなところに私は寝かされていた。


もしかして、私は負けたのか……?


「あら、もう目を覚ましたのですね。

ちょうどいいですわ。

14時からアナタと内木さんでの模擬訓練がありますわ。

そろそろ時間なので、いってらっしゃいまし」


ベッドの横には赤井さんがいた。


(ここまで一方的にやられるなんて……。ちくしょう……!)


私は赤井さんの方を向いた。


「な、なんですのその顔は……。恨みっこなしといったでしょうに……」


顔に出ていたのか。


正直、かなりこの敗戦は私にとってショッキングだった。


今までは最終的になんとかしてきたし、今回もなんとかなると、どこか気軽に構えていた。


それが良くなかったようだ……。

模擬戦でなんと赤井萌に負けてしまった輝木光。


初めての敗戦にショックを受ける。


だが、沈んでばかりもいられない。


次回はもう1人の仲間、内木遊との模擬戦だ!

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